家庭教師
ブラックダイヤの輸出、従姉の嫁いだ国への支援、農村地帯の支配。
様々なアイデアをポンポン出す私に、せっかくの頭脳がもったいないとレオン様とリオネル様は家庭教師をつけようと提案してくれた。
しかし、黒髪黒目の不吉な私に積極的に関わろうとする家庭教師など存在しない。
誘いは断られ続ける。
「ちっ…髪の色だの目の色だの、いちいちうるせえ奴らだな。ブランシュの良さがわからない見る目のないクズどもが」
「まあまあ、兄さん。義姉さんの良さを知らない奴らに下手に任せるよりいいよ」
「それはそうだがな…」
「それより、今の義姉さんの知識を確かめましょう?簡単なテストを作っておいたんです」
リオネル様が取り出したのは手作りのテスト。
そこには明らかに五歳のお子様向けではないテスト内容がずらっと並ぶが、期待の裏返しなのだろう。
「出来ました!」
そう言って手を挙げると、レオン様とリオネル様が採点してくれる。
しかし二人の表情は曇っていく。
「おい…ブランシュ、お前隣国の名前も知らないのか」
「はい、わかりません」
「それなのにどうしてブラックダイヤの価値を知る?他国に高値で売れるとわかる?従姉の嫁いだ国への効果的な支援がなぜ分かる?農業地帯の支配のアイデアはどこから出た」
まあ、当然の疑問である。
嘘をつかない程度に誤魔化す必要がある。
なんせブランシュちゃん五歳は天才な天真爛漫少女なのだ。
前世の限界社畜OLの知識があるのだとバレるわけにはいかない。
「お前の師匠は何者だ」
そんなモノはいない。
いるとしたら文字の読み書きを教えてくれたメイドくらいだ。
「…ええっと、文字の読み書きは憐れんでくれたメイドから習いました」
「そうか(これは本当だな…)」
「あとは…姉様たちが家庭教師に習って勉強してるのを盗み聞きして、姉様たちの勉強の後に出るゴミを回収して読んで覚えて、あと姉様たちの読んだ本を片っ端から読みました!」
嘘は言っていない。
全部本当だ。
前世の現代日本での義務教育やネット小説の知識を伏せているだけ。
「…は?」
その瞬間、レオン様とリオネル様の殺気がすごいことになった。
もちろんそれは身内である私に向けたものではない。
私を蔑ろにして、家庭教師すらつけなかった王家に向けた殺気だった。
「…そんな思いまでして、勉強してたの」
「だから知識に偏りがあるんだな。それでも幼少期特有の柔軟な発想と、本の知識だけであそこまでアイデアをポンポンと出して…」
レオン様とリオネル様の目に闘志が宿る。
「家庭教師なんか要らねえ。俺たちが教える。この天才を腐らせない」
「義姉さんを出涸らし扱いした奴らに目に物見せてくれます」
ということで、私は二人に勉強を教わることとなった。
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