農業的支配
「なあブランシュ。お前その歳でえげつねえこと考えやがるよな?」
「え?はい、そうですね」
ソファーでレオン様とリオネル様にあーんされながらフルーツの盛り合わせをおやつにつまんでいると、レオン様がそう言った。
なので隠さず是と答えた。
「また知恵を貸して欲しいんだ。新しく我が国の保護国になった国があるのは聞いた?」
「ああ、はい。それならプラム侯爵家のお嫁さんとして耳に入ってます」
私のその言葉に、レオン様とリオネル様は嬉しそうに笑う。
お嫁さんという響きが気に入ったらしい。
「嬉しいです、義姉さん。ちゃんと自覚してくれてるんですね」
「ああそうだ、お前は俺の自慢のお嫁さんだ」
「ふふ、私こそそう言われると嬉しいです!」
「で、本題だがな。あそこの農村地帯を新しく領地として下賜される運びになった」
「はい、聞きました。おめでとうございます」
これはめでたいことだ。
でも本題はその先なのだろう。
「だがいかんせん反抗的でな。支配するためには…農村地帯なら、農業をウチに依存させるのが一番手っ取り早く済むだろ?」
「ああ、その方法ですか…」
武力を使わずに支配できるなら、一番平和だ。
だが、私の脳裏に浮かぶアイデアは平和とは程遠い。
それでも、レオン様とリオネル様の役に立つなら…この鬼のような作戦を共有しよう。
「撒いたところに何年も雑草が生えなくなる強力な農薬を使わせるのが手っ取り早いです。あの、我が国では使用禁止の強すぎる農薬を。そして品種改良済みの、あの農薬を使っていても育つとても強い作物を生産させる。一応、出来た作物に害は無いはずですしね。そうすれば農村地帯の人々は、農業が格段に楽になったと思うでしょう。感謝すらされて、大分友好的になりますよ。そして気付いた時には、その作物以外は育たない土壌に変わります。その作物しか育たないなら、その作物のタネがなければ死活問題。農民たちはプラム侯爵家には逆らえなくなる」
言い合えて、私はにっこり笑ってフルーツの盛り合わせに手を伸ばす。
しかし。
部屋の中はあーんしてくれていた時の穏やかな空気とは打って変わって、異様なほどに静まり返る。
「………」
「………」
レオン様もリオネル様も、一言も発さない。
余裕すらない表情に、冷や汗。
硬直する二人。
「…にい、さん」
リオネル様がいっそ喉でも潰されたのかと思うほどかすれた声でレオン様を呼ぶ。
「おう…ブランシュ、お前五歳の皮を被った化け物じゃないよな」
「もう!私は可愛い五歳のお嫁さんですよ!」
ぷんぷんと怒ってみせるが、レオン様はまだ緊張した様子だ。
生唾を飲み込むレオン様。
怖がらせてしまったらしい。
「反抗する奴らを皆殺しにするよりえげつねえ…」
「こんな可愛らしい義姉さんのどこにそんな腹黒い考えが詰まってるんですか…」
「ブランシュ。改めて誓う。俺はお前を幸せにする。絶対に敵に回さない、悲しませない」
「だからいつまでも、プラム侯爵家の味方でいてくださいね」
「はい、もちろんです!」
ちょっと怖がらせてしまったが、お役には立てたらしい。
よかった。




