それからの日々
プラム侯爵家に嫁いで以降、私は幼さを最大限に利用して無邪気にレオン様とリオネル様に懐いた。
「レオン様、執務お疲れ様です!私が淹れたハーブティーです、よろしければどうぞ!」
「あ?…またそんな下働きみたいな真似して。そこに置いておけ、飲んでやる。その代わり無理に働こうとするんじゃねえ」
レオン様は不器用に、でも優しく私に接してくれる。
「リオネル様、この書類の整理なんですけど…お手伝いしてもいいですか?」
「これはプラム侯爵家の機密に関わるものなので、こちらの書類の方をお願いしていいですか?」
リオネル様は気遣いを見せつつも、私のお手伝いしたい欲(社畜精神)を尊重してくれる。
最初は「この出涸らし姫をどうすれば利用できるか」と打算が見え隠れしていたレオン様とリオネル様だったが、段々と私に絆されてくれた。
彼らはただの冷酷な貴族ではない。
兄弟で支え合って生きる「身内」を大切にするタイプの人たちだ。
一度懐に飛び込んで仕舞えば、あとは溺愛生活が待つだけである。
「ブランシュ、今日は何が食べたい?」
「レオン様やリオネル様と同じものがいいです!」
「そうかよ。なら肉だな。でも野菜も残さず食べろよ?」
「はーい!」
「ふふ、義姉さんは可愛らしいですね」
溺愛生活は思ったより早くきた。
一流のシェフのディナー、可愛らしいドレスや靴、あのクソ実家の王家では本気で冷遇されてきた私では夢のまた夢だった生活。
私は私で、打算ではなく本気でレオン様やリオネル様に懐き始めていた。
溺愛生活も始まり、レオン様やリオネル様に愛される日々に慣れてきた頃私は思った。
もっと役に立ちたいと。
プライベートな時間、レオン様やリオネル様に挟まれてソファーで二人の真似をするように小説を大人しく読んでいた私だが、ふと独り言が漏れる。
考え事が口をついて出てしまったのだ。
「うーん、プラム侯爵家のお役に立ちたいなぁ」
「…あ?」
「あ、そういえばプラム侯爵家の領地では黒い鉱石が採れるんだっけ。リオネル様がぼやいてたな…捨てるのがもったいないからとりあえず鉱山に放置されてるって。黒い鉱石…もしかしてブラックダイヤ?だとしたら、黒を不吉とするシエル皇国では売れなくても他国では高値で売りつけられる…このアイデアなら、プラム侯爵家のお役に立てるかな」
「え…ね、義姉さん!そのお話詳しく!」
「え、独り言出ちゃいました?えっと、黒い鉱石はシエル皇国では価値がなくても…黒を不吉としない他国ではむしろ希少価値のある鉱石とされる可能性があって」
私の言葉にレオン様とリオネル様が目をギラギラさせる。
「ええっと、たしか大陸の東側の国ならむしろ高値で売れると思います。王家で姉様たちが家庭教師からそんな話を教わっていたはずなので…」
たしか、そのはずだ。
あちらに黒への差別はないから、言動に気をつけろと忠告されていた姉様たちを思い出す。
「なのでそちらに輸出すれば莫大な利益になる…かも?」
最後は自信なさげに首を傾げてみる。
ブラックダイヤではないクズ石だった時の保険だ。
「…兄さん、すぐに鉱山へ人員を送ります。密かに「黒いゴミ」を回収し鑑定します。ブラックダイヤ、というものであれば大陸の東側へ高く売りつけるルートを確立してきます」
「おう、頼んだぞリオネル。ブランシュ、そんなことよく知ってたな」
「姉様たちの家庭教師との会話をよく盗み聞きしてたので!」
自信満々に言い放つ私に、レオン様とリオネル様は優しく頭を撫でてくれた。




