出涸らし王女は不吉な黒
前世は天涯孤独の身の上で限界社畜OLだった私。
趣味はネット小説を読み漁ること。
そんな私は過労死した、デスマーチの結果である。
しかしそんな前世の記憶を持って転生したのはナーロッパの大国の王家。
王家の末姫となったのだ。
…そこまでは、良かったのだが。
「あーあ、前世と同じ特徴の身体が恨めしい」
前世と同じ黒髪黒目に生まれた私。
今世の名前はブランシュ・ベルト・シエル。
私が生まれたシエル皇国では黒は不吉な色とされる。
よって黒髪黒目のブランシュちゃんは不吉なこと極まりないのだ!
優秀な兄たちや美しい姉たちと比較され、やら不吉だやれ出涸らしだと囁かれる日々。
冷遇されるのも、ある意味仕方がなかった。
そして五歳になった今日、転機が訪れた。
厄介払いのように、五歳という幼さで国内の有力な貴族に嫁に出されることになったのだ。
(やったー!このクソ実家から離れられるならなんでもいい!厄介払いしてくれてありがとう!)
私は初めて実家の王家に感謝した。
旦那様は十五歳上、その補佐官兼弟…義弟となる人は十一歳上らしいがこのナーロッパでは年の差婚など珍しくもないので気にしない。
とにかくこのクソ実家から離れられる喜びを胸に、私は迎えの馬車に乗った。
人生初の馬車は、ちょっと酔ってしまったが。
「おい、こいつが王家から押し付けられた出涸らし姫か?」
開口一番にそう言ったのは私の旦那様となる、レオン・フォン・プラム侯爵。
「兄さん、失礼ですよ。義姉さん、これからよろしくお願いしますね」
そう言ってくれたのは義弟となるリオネル・フォン・プラム。
歳が十一歳上のお兄さんに義姉さんと呼ばれるのはなんとなく気まずいが、第一印象は少しでも良い方がいい。
私は王家でろくに勉強も見てもらえなかったのでマナーも何もわからないが、元気に挨拶することにした。
「はい!ブランシュ・ベルト・シエル…いえ、ブランシュ・ベルト・プラムです!よろしくお願いします!」
前世の限界社畜OL時代に培った「営業スマイル」のスキルを駆使して、精一杯印象を良くする。
すると不機嫌そうだった旦那様や義弟の顔色が変わる。
「…あ?」
「ふふ、可愛らしいですね」
私の営業スマイルと元気な挨拶は、少しだけ二人の「王家から押し付けられた出涸らし姫」への不満を緩和できたらしい。
心の中でガッツポーズしながら、私はニコニコとレオン様に抱きついてみせた。
そんな私にため息を吐きつつも抱き上げてくれるレオン様と、私の子供特有の柔らかな頬をなんとなくつついてみるリオネル様。
ブランシュちゃん五歳の嫁入りは、悪くはなさそうなスタートです!




