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CYCLE  作者: カツ・コイチ
単位認定試験編(トランプ編①)
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父親

父親?

隊長がユノの父親だって?

耳を疑うその内容を理解する間もなく、イルが口を開いた。


「...いい加減にしろ。時間が押してるんだ」


イルは振り返り、歩みを進める。

戸惑う俺たちを見て、ミナトはその場を取り繕う。


「と、とりあえずは試験に集中しよう。これが原因で単位が取れないなんて、たまったもんじゃないからな」


ミナトはそう言い、俺たちの背中を押す。

ユノは相変わらず不貞腐れたような様子だったが、大人しく着いてきていた。

道中、ミナトは俺にユノ達の事情について話した。


「...父さんは婿入りしてから長い間、本部とは別の部署にいたんだ。そのせいで父親らしい事が出来ず、ユノは不満を募らせてた」


ミナトはユノを横目に、話を続ける。


「俺も思うところはあったけどさ、バラストは忙しいし、仕方ないだろ?」


優しく笑いかけるミナト。

話を聞くと、その笑顔には長男としての苦悩が垣間見えた気がした。


「父さんはバラストに誇りを持ってる...だからこそ、時に俺たちに強い当たり方をしちゃうんだよ」


ただの親子喧嘩ではない...バラストの幹部と、その息子という複雑な関係は、その家族関係に歪みを生み出していた。

しかし、"強い当たり方"と言われても俺はしっくり来ない。

イルは怒鳴りはするものの、手は上げないし、怒る理由だって筋が通ってる。

俺からしてみれば、羨ましいと思ってしまうほどだ

った。

そんなやり取りをしていると、やがてイルの足が止まった。


「ここだ」


イルは俺たちを戦闘訓練の施設のような所へ案内した。

広さは体育館より少し広いくらい...しかし、床や壁はかなり硬い素材で作られていた。


「ここはバラストの訓練施設だ。安全を考慮した結果、試験はここで行うことにした」


イルはそう言うと、運ばれてきた檻に手をかける。


「合図と共にこの檻を開ける。言っておくが、中にいる傑出魂は甘く見てはいけない...覚悟してかかるように」


すると、アポロはイルに問いかける。


「なぁ、そいつはどれくらい強いんだ?」


アポロの質問に対し、イルは小さな紙を取り出した。

それはどうやらバラストの書類のようで、中の傑出魂についての事が書かれてた。


「4行目...ここに赤文字で5と書いてあるだろう?」


赤く目立つように書かれた5という数字...一体これがなんだと言うのだ?


「えっと、その数字は...?」


ミリスの問いに、イルは黙ったまま檻を開く。

辺りを蒸気が漂い、中から形容し難い独特な存在感を放つ"ソレ"が姿を表す。

その異質な雰囲気に、俺たちは息を飲む。

やがて、イルは口を開いた。


「..."規格5"ということだ」


その瞬間だった。


「馬鹿が!!俺にチャンスを渡すなんてな!?」


その言葉と共に、中に居た"ソレ"は物凄い勢いで飛び出してきた。


「こいつは規格5の中でも上位...若い芽を試すには十分だろう」


その男は一直線に駆け出し、目の前にいた俺をどかそうと蹴りを打ち込む。

俺は反射的に防御の姿勢を取ったが、それをものともせず、ガードの上から強烈な威力の蹴りを当ててきた。


「うっ...!!」


腕が折れたかと思うほどの衝撃。

あまりにも早いテンポに、タジタジになるアポロとミリス。

いち早く行動を起こしたのはユノだった。


「さっさと終わらせて帰ってやるよ...!」


ユノは素早く刀を抜き、その男に飛びかかる。

しかし、男はユノを一切見ず、ただ一直線に走り続ける。


「お、おいアイツまさか...!!」


そう、奴は無我夢中で走っていたのではない。

ただ一直線に、出口の方へと足を運んでいたのだった。

これは実戦...逃げようとする傑出魂を捕らえるための戦いなんだ。

俺たちが男の思惑に気付いた時には、すでに奴は出口の扉に手をかけていた。


「...俺の勝ち」


ガチャッという音。

そして、ザクッという音。

一瞬だった。

奴がドアを開けた瞬間、瞬きをした後にはすでに奴の首に剣が刺さっていたのだ。


「何が期待の新星だ...判断力、対応力共に0点。やり直しだ」


その剣の主は、イルであった。

イルはそう言うと、男の首根っこを掴み檻の方へと投げつける。


「本番ではどんな初見殺しにも対応しなければいけない...お前たちは1度"死んだ"。その事実を忘れずにもう一度挑め」


全員が黙り込む。

あまりにも、呆気なかった。

その男の強さ、バラストの幹部・イルの強さ、そして俺達の弱さ。

それらが一瞬にして公になったのだ。

規格5に認定され、有頂天になっていた俺...しかしその規格はあの時、あの瞬間の上振れのみに当てはまる。

己を買いかぶるな...謙虚に、真剣に。

いまは目の前の目標に集中するんだ。

気づけば、ミリスやアポロも同じ目をしていた。

イルに魅せられたんだ。

2度目は失敗できない。

俺は鉄球を剣に変え、強く握る。


「良い目だ...今度こそ俺を失望させるなよ?」

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