単位認定試験に向けて
「おいおい、まじで回収隊と接触できるのか!?」
俺はハントと夕飯を取りながら、今日の出来事について伝えた。
「すごいな...目標に確実に近づいてる上に、ちゃっかり武闘会も優勝してるしな」
ハントは食事に手をつけ、目玉焼きを頬張る。
俺はゆっくりと飲み物を飲み込み、話を続ける。
「なぁハント、武闘会での事なんだが...」
俺は決勝戦で起きた、声や力のことについて話した。
するとハントは、少し考えた後、俺にある質問を投げかけた。
「...この世界は好きか?」
俺は突拍子もない質問に、少し戸惑う。
この世界は前よりは居心地がいい...でももしここにソウキが居ないなら、俺はここに居る理由なんて無い。
好きかどうかと言われると少し難しい。
考えがまとまらない俺は、ハントにありのままを伝える。
するとハントは、再び何かを考える。
「もしこの世界が好きになったら、色々調べてみればいいさ。そうしたらいつかその声についても分かるだろ」
...それはつまり、ハントには見当もつかないという事なのだろうか。
しかし、どうしてわざわざそんな遠回しなことを...?
「あのな、アマツ。その時が来たらきっと全部分かるから。それはもっと先かもしれないし、もうすぐかもしれない。でもな、これだけは覚えておけ」
ハントは食事の手を止め、ゆっくり口を開く。
「お前はきっと...きっと本当に必要なものが得られるから」
その言葉の意味は、正直よくわからない。
ソウキの事なのか、それとも別のことなのか...
俺はなんとなく頷き、再び食事に手をつける。
その日は何だかよく眠れなかった気がした。
ーーー
「アマツくん、おはようございます!」
それから数週間が経ち、いつもの通学路を歩く。
俺が少し早くに宿を出発すると、途中でミリスに会った。
「いよいよ今日ですね...緊張して全く寝れた気がしませんよ...」
そう、今日は単位認定試験の日だ。
それも、特別講習の...
「なぁ、ミリスの実家...?って、どんな感じなんだ?」
俺は緊張を紛らわそうと、なんでもない質問を投げかける。
「え?私の実家ですか...」
すると、ミリスは自身の家について話してくれた。
「一応名家ではあるんですが、ただ裕福なだけで特別強いわけではないんですよね...」
リグメシア家は古くからの財閥一家で、シソウ家のような強さを主軸とした名家ではないらしい。
というのも、たまたま前の代で天才が生まれてしまった為に勘違いされる事が多く、ミリスもミリスで苦悩を抱えているそうだ。
そこはハヤテとも似てるような...
「親戚のせいで実際とは違うイメージを持たれるのは辛いよな」
俺の家も、あの母親が一晩中遊び回って色んなところで迷惑をかけていたから、その気持ちは分からないことも無い。
学校でもそれが原因で俺自身が偏見を持たれることが多かったんだ。
「まさか、理解してもらえるなんて...!それじゃあ、アマツくんの家についても聞きたいです!」
ミリスは微笑みながらそう尋ねる。
その無邪気な質問に、俺は言葉が詰まる。
「ま、まぁ名家とかでは無いんだが...ちょっと親が変わっててな。それでちょっと迷惑することがあったんだよ」
俺がそう言うと、ミリスは不思議そうな顔をした。
そして、続けて質問を投げかける。
「では、親御さんのことは苦手だったんですか?」
苦手か...苦手なんて物じゃない。
大嫌いで、恨んで、今でも思い出すだけで気分が悪くなる。
あの日常にソウキが居なかったらと思うと、動悸や発汗が出るほどだ。
俺はミリスの質問を答えるのに躊躇いながら、足を進める。
「まぁでも...なんだかんだ好きだったよ」
本音を無理やり腹の奥にしまい込み、嘘をつく。
こんな言葉、言いたくなんて無かったんだ。
あんな親なんて、大嫌いだ。
そんなやり取りをしていると、やがて学校へと着いた。
「じゃあ私、教室に行きますね!後で合流しましょう!」
ミリスはそう言って、足早に教師へと向かっていった。
俺もそれに合わせ、自身の教室へ歩みを進める。
まさか、こんな所で昔のことを思い出す事になるなんて、ついてないな。
「前もって話していたように、今日は単位認定試験だ。各自、指定の教室へ移動するように」
ホームルームが終わると、俺たちはカイズの指示の下教室を移動した。
「なぁアマツ、特別講習ってなんだと思う?」
アポロに聞かれ、俺は少し考える。
「普通の試験では模擬戦闘らしいが...もしかしたら、隊長と戦闘するとかかもな」
俺がそう言うと、アポロはニヤニヤと笑い出す。
「...最高じゃねぇか」
最悪だろ。
そう思ったが、やはりアポロは根っからの戦闘狂らしい。
勘弁して欲しいものだ。
「お、全員揃ったみたいだな」
教室へ着くと、そこにはミリスとユノ...そしてカイズが立っていた。
「な、なんで先生が?」
俺の質問に、カイズは答える。
「そりゃあだって、どんな危険があるか分からないからな...」
先生が着きそう程の危険な講習...本当に大丈夫なのか?




