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CYCLE  作者: カツ・コイチ
武闘会編
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52/59

決勝戦⑤

「2対1だ...相手がルシエルだとしても俺たち2人なら勝てない相手じゃない」


「あぁ、でもあいつの能力には警戒してくれ...予備動作無しで攻撃してくるからな」


ルシエルが見せた地面の操作能力...事前に警戒しておけば有効打にはならない。

だが、常にそこに意識を割かなければならないのが厄介だ。


「君たちから来ないのかい?」


「...なら、お望み通り行ってやるよ!」


ロキは再び"帯電"を発動し、ルシエルに飛びかかる。

それに合わせ、俺もルシエルの懐に潜り込み、剣を取り出す。

軽々と攻撃を交わしていくルシエル。

それに加えて発動される地面操作は的確に俺たちの隙をつこうとしている。


「あはは、2対1でもこれかい?なんて情けないんだ」


決闘の時とは違う、最初から能力を発動した上での戦闘。

No.2のロキと連携してやっと追いつけるレベルだ。

ロキが蹴りを入れて、俺が後ろから剣を降る。

ルシエルはクルリと周り俺の腕を蹴り上げ、左手でロキの蹴りをガードする。

ロキが距離を取り放電、俺が腕に鉄を纏い懐に潜り込む。

ルシエルは剣で雷を弾き、俺の首を掴み軽々とほおり投げる。

ロキは悩む素振りを見せていた。


「速い、正確、なによりエネルギー操作が桁違い。力量差で押し負ける...!」


基礎能力を限界まで引き上げたようなルシエルの動きは、経験の乏しい俺とは雲泥の差だ。


「アマツ、お前はサポートに回ってくれ」


「...わかった。でも何か策があるのか?」


俺がそう聞くと、ロキは再び帯電を始める。

そして、今度は入試の時のように全身が青く発光していた。


「テンポ上げるぞ、着いてこい」


ロキはそう言うと、さっきまでとは比べ物にならないスピードでルシエルの元へ向かう。

ルシエルも反応が遅れ、焦ったように剣を取り出し、スレスレのところで防御をしていた。


「どうした!?反応が鈍いぞ!!」


ロキがそう言うと、ルシエルの顔が引き攣る。

ロキの猛攻に、後手後手なルシエル。

2人の激しい戦闘、俺には付け入る隙がなかった。

すると、ルシエルは少し距離をとり口を開く。


「...偽物が」


その言葉を聞いた途端、ロキの体が固まる。

それを見たルシエルは、不敵な笑みを浮かべ、話を続ける。


「やはり皆に知られるのは怖いのかい?君の才能が"作られた物"である事がさ」


「お前...どこまで!!」


ロキの呼吸が乱れる。

その表情からは、焦りと動揺が垣間見える。


「くそ...!!」


するとロキは、左腕を引っ掻き血を滲ませていく。

それに伴い、その体はバチバチと黒い稲妻を纏い始めた。


「使うのか!?神威を!後付けの神痕を...!!」


明らかに異様な光景に、俺は立ちすくんでしまっていた。


「僕に勝てば晴れて晩年No.2から昇格だな。ほら、来てみろよ。"ALSA企画の落ちこぼれ"!!」


「その口を閉じやがれ!!」


ロキは物凄い勢いでルシエルへと突撃する。

その速さは目に追えるでは無かった。

なぜなら、優に超音速を超えていたからだ。


「稲妻!!」


ロキの全身が強く発光し、辺りを眩い光が覆う。

俺の目に写ったその攻撃と思しきものは、ルシエルでさえも太刀打ちが出来るレベルではない。

このままでは、ただの試合ではなく殺し合いになってしまう。

そう思った時だった。


「次連・山嵐」


物凄い轟音と共に、光が止む。

すると、そこには、ルシエルを庇うように刀を構えるハヤテの姿があった。


「危ねぇ...っていうか初めて出来たぜ!」


どうやら、ハヤテは失格になった後、奇跡的な回復を遂げて試合に復帰していたらしい。

俺たちは戦闘に集中していてアナウンスを聞き取れなかったのだが...


「新しい型かい?ミヤビなら一日で習得できただろうに」


「...お礼くらい言ったらどうだ?」


2人は呑気にそんなやり取りをしているが、こっちからしたら切羽詰まった状況だ。

ルシエルに加え、新技を会得したハヤテの登場。

さらには、ロキの状態が不安定になっている。

よく見ると、さっきの攻撃でかなり疲弊している様子であった。


「偽物の力では体力の消費が大きいだろう?」


ルシエルはそう言いながら、ニコッと微笑む。

するとその瞬間、一気にロキの方へ詰め寄り、腹部に強烈な拳を打ち込んだ。


「ぐっ...くはっ!」


俺の方へ吹っ飛び、倒れ込むロキ。


「...改めて2対1だがどうする?降参しても構わないよ」


挑発をするルシエル。

しかし、俺にはどうすることも出来ない。

頼みの綱のロキは今の追い打ちでほとんど戦闘不能だ。


「ロキ、ロキ!立ってくれ!」


返事がない。

ほとんど気絶しているようだ。


「おいおい、その偽物に助けを求めるつもりかい?」


もはや、ルシエルの煽りなど取るに足らない事だ。

それよりも、この状況を打開する方法を考えるので精一杯という状況。


「アマツ、お前とも戦いたかったが...こんな形ではごめんだぜ。」


ハヤテはそう言い、ゆっくりと刀をしまう。

悔しい。


「降参しないなら、もう一度さっきのパンチを食らってみるかい?」


ルシエルは拳を握り込む。

それに対し、俺はあの時の事を思い出して体が震えていた。

悔しい。


「第11班、絶望的状況です!!」


アナウンスが響き渡る。

そう、絶望的状況だ。

2対1、相手はNo.1のルシエルと名家のハヤテ。

悔しい。

俺に勝ち目は無い。

潔く諦めるべきだ。

悔しい。

悔しい、悔しい、悔しい。


「お前はさ、お前が思ってるより"怪物"だぜ?」


突如思い出される記憶。

ハントからの言葉だった。


「腰抜けにも程があるな...一体君は何のためにここへ来たんだい?」


...何のためにだって?

そうだ、俺は何のためにここへ来たんだ?

そんなの決まってる。

ソウキにもう一度会うためだ。

ソウキともう二度と離れない為だ。

固く誓ったんだ。

もう誰にも、何にも邪魔されたく無い。

俺達を引き剥がすことなんてさせない。


「もういいよ、僕から行くから」


ルシエルがこっちへ向かって来るのが見える。

俺は少しボーッとしたまま、剣を手に取る。


「運命は繰り返す。それを止めるんだ」


あの声だ。

小屋で聞こえた声が、頭に響き渡る。


「一度だけ、僕たちの力を貸してあげる。この借りは、きっと返してもらう」


その時だった。

右手...76度、大きく剣を振りかぶる。

しかしそれはフェイク、避けられる前提、左ストレートがメインだ。

頭に全てが入ってくる。

辺りが全て見える。

なにもかもが理解出来る。


「1歩下がり、左下から右上」


体が無意識に動く。

気付いた時には、俺はルシエルの腕を切断していた。

その剣は、あの時と同じ黒色だった。


「ル、ルシエル...致命傷により脱落!!」

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