ひらけごま
「ここが魂の通り道だ」
そう言われ、辺りを見回す。
トンネルのようだが、どこまでも広がっている。
白いとも言えない、無色の空間。
現世では見ることの出来ない彼岸への道に、呆気にとられていた。
「これは、体が浮いている...のか?」
通り道などと言いながら、地面などはない。
無限に広がる空間に、なんとなく"流れ"があり、そこに身を任せるような不思議な感覚だ。
「そっちの言葉で言うなら、"三途の川"だな」
男は得意げにそう言うが、この神秘的な空間は所謂三途の川とは似ても似つかなかった。
「そろそろシステムに接触する。恐らく肉体に強烈な負荷が掛かる。なんせ地球人の肉体には付与されるエネルギーへの耐性が付いていないからな。」
男は振り返り、意地悪な笑みを見せる。
「耐えて見せろ。親友に会いたいんだろ?」
「あぁ、ソウキに会えるならなにも怖くない」
そうだ。
どうせもう引き返せないし、引き返す理由もない。
どんな壁が来たって、絶対に超えてみせる。
「来るぞ。」
その言葉を聞いた直後だった。
「ぐあぁぁあ!!」
体の内側から破裂しそうな、強烈な痛みが全身に波のように広がっていく。
胃の中で何度も風船が膨らんでは割れるのを繰り返している感覚。
しかしそれと同時に、俺の中の何に何かが増え続けてるような気もした。
「確かに、奴にも対抗しうる...!」
男が何かを呟いたが、痛みで何も頭に入ってこない。
「そろそろゲートだ!」
その言葉を聞き顔を上げると、目の前にこれでもかという程に明るい白色の壁が現れた。
そして、その壁からは俺の何かを拒んでいるのが確かに感じ取れた。
すると男は真剣な顔つきになり、物凄い剣幕で壁を睨みつける。
「3年分溜めたんだ、空いてくれよ...!」
そう言うと、男は右手を前に出し、それを支えるように左手で手首を掴んだ。
その瞬間、目の前の壁にペンが1本入るかどうかくらいの小さな穴が空いた。
「...行ける。」
男は右手を時計回りに回す。
すると、小かった穴が段々と広がり始める。
「いいか、ドアくらいでかい穴を作れるほど易しくはねぇ。魚みてぇに勢いよく頭から突っ込め!」
「さ、魚ってサンマとかか!?」
「種類なんてどうでもいいんだよ!!」
そんなやりとりも束の間、ゲートの穴は目前だった。
俺は必死に穴に向かって体を動かそうとする。
しかし、痛みに慣れてきたとは言え体は自由に動かない。
「やっぱりダメだ、このままじゃ...」
「「会いに行くんだろ!?」」
男の言葉に、我にかえる。
そうだ、俺はソウキに会いにいかなきゃ行けない。
その為なら、どんな痛みだって耐えられる...!
ゲート目前、倒れるように前傾姿勢を取る。
「負けてたまるか...!あの世だとか魂だとかはどうでもいい!さっさとソウキに会わせろ...!!」
全身に力が入る。
体を垂直にし、俺は穴に向かって飛び込む。
その時、僅かに男の声が聞こえた。
「ついに生まれる、怪物が...!」
全身が穴に入った瞬間、目が眩む程の強い光に包まれる。
眩い光の中、俺の中で何かが恒久的に増え続けていくのを感じる。
ドクドクと心臓が脈打つ。
体が世界を拒んでいるのか、世界が俺を拒んでいるのか。
光が落ち着き、目を開ける。
「これが...あの世...?」
そこにはすました男の顔と、地球のようで、何かが明らかに違う世界が広がっていたのだった。
生死渡航編はこれで終わりです。
ここからはいよいよ、あの世に存在するという組織、バラストとソウキの行方について踏み込んでいきます。
(正直ここまでは前置きで、作品の"らしさ"が出てくるのはここからです)




