あの世で君に会うために
「あぁ、話させてもらうよ。」
そう言うと男はポケットから奇妙な形の鍵を取り出した。
「じゃーん。これなーんだ?」
男は軽快な口調で話す。
「...変な鍵」
「そうそう、変な鍵。」
「それがなんだって言うんだよ。」
急にぶさけた事を言い出す男に苛立ちながら、問いかける。
「これがこの世とあの世を繋ぐ鍵になるんだ。」
男はよく見えるように俺の目の前に鍵を差し出してきた。
「そりゃ便利な道具だな、でもなんでお前がそんなの持ってるんだよ。」
もはや俺は男の話を疑ってはいなかった。
それよりも、この男が何者なのかが知りたい気持ちが強まっていた。
「その辺はあんまり話せないんだよなぁ...」
男はからかうような表情でそう言い、話を続けた。
「この鍵を使えばシステムと接続し、魂の通り道に入れる。言ってしまえば生きたまま死人になれるってことだ。」
少しややこしい話だが、あの世へ行く準備は既に完了しているようだ。
「だが、普通に通ればシステムに異物だと判断された後、あの世への"ゲート"に弾かれる」
「何か策があるんだろ?」
「もちろんだ」
俺はほとんどこの男を信じきっていた。
そして、ソウキに再会できる喜びと、不本意にも未知の世界への冒険に期待を寄せていた。
「俺の能力は"管"。あらゆるものに管を作る。さっきの木とかもこの能力の影響だ。」
男は自信に満ちた顔で話しを続ける。
「たとえゲートに弾かれようと、俺がそのゲートに管を作っちまえば問題なく通れる。」
ゲートに管を作る、男は簡単そうに述べるが、そんな理に反するような事が可能なのだろうか。
「そんなことできんのかよ。」
「言っただろ、俺を信じてくれさえすればいい。」
そうだ、どうせ俺はもうこの男しか頼みの綱が無い。
藁にもすがる思いで着いていくしかないんだ。
「わかった、信じるよ。」
「さんきゅ。じゃあ、話は終わりな。」
男は俺の腕をグッと掴みながら、宙で鍵を右に回した
「え、ちょっとまてよ!」
その言葉を遮るように、物凄い風が巻き起こる。
男が腕を掴んでなければ、俺の体は飛ばされていただろう。
「くっ...」
風が収まり、顔をあげるとそこには奇怪な見た目をした扉が仰々しく現れていた。
謎の文字のような紋様がびっしり刻まれ、カラフルと表現して良いのか分からない無数の色の装飾を纏っていた。
ずっとみていると、心を奪われそうな、そんな恐ろしさまで感じた。
「これが、あの世への入口...?」
「怖いか?」
確かに少し怖いし、不安だ。
でも、ソウキと二度と会えない方が怖い。
「両親とか友達とか、大切な人への挨拶は...」
「必要ない。ソウキだけが俺の大切な人だ。」
男は少し間を開け、フッと笑うと勢いよく扉を開き、俺を連れ込む。
眩い光の中、ただ男の背中だけが見えている。
ソウキに会える、今度こそちゃんと向き合いたい。
「まっていてくれ、ソウキ。あの世で君に会いに行く...!」




