決勝戦①
その瞬間、大地は轟音と共にうねうねと形を変え、まるで暴れ回る触手のようにユノ達を襲い始めた。
簡易的な結界はいとも簡単に破られ、そこにはただひたすらに地面に打ちのめされ続ける4班達の姿があった。
地面の構造を丸ごと作り替えるほどの莫大な力...その前には、例えNo.3のユノでさえも太刀打ちが出来なかったのだった。
「他の奴らと一緒にするな...だったかな?それならほら、抗ってみなよ」
ルシエルは嘲笑うようにニヤニヤと気味の悪い笑顔を浮かべる。
しかし、もうその挑発に受け答えが出来るほどの余裕はユノには無かった。
「呆気なかったな」
すると、4班の陣地からフラッグを持った男が現れる。
20班のB組生徒、サルバだった。
彼の持つ磁力の能力は、暴れ回る地面と自身とを完全に隔絶することができる。
そのため、フラッグの回収を担当している。
「20班、見事フラッグの奪還に成功...!勝利をつかみ取りました!!」
最早歓声なんてものは湧かない。
聞こえるのは、観客からの不安の声のみであった。
ーーー
「つまんねぇとは言ったけどよ、これはぶっ飛びすぎだろ...」
ロキは結果を見届けると直ぐにテレビを消し、感嘆の声を漏らした。
「正直、最初の攻撃を撃たれたら負けは確実なものになると思います...」
ミリスは驚きと、若干の恐怖に包まれた表情で、消えたテレビの画面を見続けている。
不可避かつ、必殺...敗北を体現するかのようなその超規模な能力に対し、俺たちは言葉を失いかけていた。
そして、数秒の沈黙が訪れる。
そこには、勝ちたいという理想と、今見えた現実に対する葛藤が垣間見えた。
「...1つだけ」
静寂を破ったのは、ミリスの声だった。
「1つだけ、通用するかもしれない作戦があります...!」
 ̄
まだ夏も手前だというのに、思わず服を脱ぎ捨てたくなるような強い日差しに囲まれている。
俺たちは作戦の整理の後、アナウンスと共にメインアリーナの中へと歩みを進めていた。
「期待してるぞ!!」
「やれんのか!?」
「勝ってくれよ!!」
力強い声援に包まれながら、ゆっくりとスタート位置に着く。
20班のやり方には賛否が大きく別れているようで、俺たちを応援する声が多々あった。
ロキは待ちに待った好敵手に不安と期待を募らせているようだったが、実は俺自身も少しロキと同じ気持ちになっていた。
「いいですか?作戦通りに行きますよ!!」
「「了解」」
幸いにも、フィールドは俺たちの望んでいたジャングルが適用された。
最高の相手に、最高の環境が揃い、俺達の盛り上がりもピークに達していた。
呼吸を整えながら、スタートの合図を待つ。
「決勝戦...開始です!!」
開始と共に、俺たち3人は凄まじい勢いで前へと進む。
タイムリミットはルシエルの溜めが完了するまで...1秒足りとも無駄には出来ない。
俺たち3人は、早急に20班の陣地へと足を運ぶ。
それを読んでいたかのように、ハヤテとサルバが行く手を阻む。
「せっかくの1体1だ...楽しもうぜ、アマツ」
ハヤテはそう言うと、強く刀を握る。
ロキはサルバと対峙すると、バチバチといつも以上に強い音を立てながら全身に雷を纏っていた。
一方ミリスは、"作戦"のために水辺へと走っていた。
「...アマツ、お前は強え奴だ。ルシエルだって倒しちまったしな」
ハヤテはニカっと笑みを浮かべ、話を続ける。
「そんなお前に...友達として、置いてかれる訳には行かねえんだ」
地面を強く踏み込み、ハヤテは俺を目掛けて刃を向ける。
それに応えるように、俺は剣を握り、ハヤテに向かって走り出す。
友として、全力で戦う...そんな2人の刃は、カンッという音ともに、ぶつかり合う。
...はずだった。
「悪いな、ハヤテ」
俺は重心を横にズラし、軽くハヤテの刀を交わす。
それと同時に、剣を槍へと変化させ、前方に向かって思いっきり投げ飛ばした。
「なっ!?」
ハヤテは振り返ると、その光景に目を丸くしていた。
なぜなら、そこには大きくそびえ立つ氷山があったのだから。
「さすがだなミリス...!アマツもナイスだ!」
ロキはそう言うと、サルバには目もくれず氷山へ向かい、一直線に走り出す。
バチバチと大きな音が鳴り、それはロキが氷山に近づくにつれ段々と大きくなって行く。
閃光の如く迸るロキ...ハヤテとサルバは、最早それを止める事は不可能であった。
「名付けて...氷山ぶっ壊しキックだぜ!」
そう言いながらロキは高く飛び上がり、氷山に突き刺さった槍を押し込むかのように飛び蹴りを食らわせる。
「放電100%だ...!!」
バチっという僅かな音が鳴る。
次の瞬間、思わず目を瞑りたくなるような強い光と共に、氷山が四方に爆散する。
鼓膜が敗破れるかと思うほどの轟音。
全てが鉄で出来た槍は、ロキの電気を通し、超高電圧の電荷が先端に行く。
槍の先端に蓄積された電気は行き場を失い、氷山に通り道をこじ開ける。
そうすることで内部に超高電圧・超高温のプラズマが流れ、水蒸気爆発により氷山が爆散する...
なんとも3人の力が上手く噛み合った作戦なんだろうか。
「ミリス!準備は完璧だ!!」
そう、ここからが作戦の趣旨だ。
準備が完了すると、ミリスは直ぐにその場へ駆けつけた。
それと同時に、手のひらを口の前にだし、ゆっくりと息を吐く。
そう、ミリスの能力のひとつである"吹雪"だ。
「吹雪は空気中の水分を凍らせる技...氷山の爆散により散らされた水分はその一帯へ行き渡り、空気中の水分量を増加させます」
通常の吹雪をより強化することで完成する最強のデバフ...これがミリスの考えた作戦だ。
「...ちっ!」
即座に吹雪の効果に気付いたルシエルは組んでいた両手を解き、手で口を被った。
「ひとまず、即敗北ってのはなさそうだな」
俺がそう言うと、ロキはニヤッと笑ってみせる。
にしても、ミリスの奇想天外な作戦には驚きが隠せないな。
「さて、ルシエル。俺と戦うか?それともアマツにリベンジか?」
ロキはルシエルに向かって問いかける。
「そうだね、それじゃあ...」
ルシエルは俺たちを睨みつけながら、ゆっくりと俺を指を指す。
「さぁ、やろうか」




