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CYCLE  作者: カツ・コイチ
武闘会編
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44/59

第1回戦

どうやら、俺は初戦からディゴノの班と闘わなければいけないらしい。

動揺しているのはディゴノも同じなのか、焦ったような表情でこちらを伺っている。


「...まぁ、よろしくな」


「う、うん...」


覚悟はしていたけど、まさか初戦からとは...。

だが、だからといって手を抜くのはロキやミリスに失礼だ。

やるからには本気で臨みたい。


「それでは次に、2年生のトーナメント表です!」


そうして、全学年のトーナメント表が発表されたところで1年生の部が始まることとなった。

1回戦及び2回戦は別アリーナで同時に行われるようで、ここで行われるのは第3回戦かららしい。

開会式が終わると、早速俺たちは1回戦のアリーナへと移動することになった。


「どっちが勝っても恨みっこなしだぞ、ディゴノ」


「うん」


俺たちは軽く会話を交わした後、お互いの班のアリーナの入口へと足を運んだ。


「お、いたいた」


入口につくと、ロキとミリスはすでに着いているようだった。

さすがに本番では2人とも緊張している様子で、口数も少なくなっていた。


「今回は作戦の変更は行わない。落ち着いていけば勝てる相手だから、気を抜かないようにな」


ロキの言葉に、俺たちはゆっくりと頷く。

作戦のおさらいをしていると、上部のスピーカーから機械的な声のアナウンスが聞こえてきた。


「間もなく試合が始まります。選手の皆さんはフィールドの選択と入場を済ませてください」


本番ではフィールドをお互いに選択し、その2つからランダムで決定される。

つまり、俺たちがジャングルを選択したからと言って必ずしもジャングルになるとは限らないということだ。


「砂漠以外ならなんでもいいが...そう上手くいくか?」


「砂漠でもミリスの能力自体は使えないことは無いだろうし、その時はその時だろう」


そんなやり取りをしながら、俺たちはアリーナへと入場して行った。


「セーフ...なのか?」


ロキはそう言いながら、辺りを見回す。

そこには、小規模な街並みが広がっていた。


「どうやら、相手が選択したのは都市みたいだな」


俺がそう言うと、ミリスはホッと胸を撫で下ろした。


「少なくとも、お役に立てないということは無いようです...」


ミリスがこう言うのにも理由がある。

どうやら、この都市というフィールドは実在の都市に限りなく近づけており、水道や貯水タンクがあるそう。

つまり、ミリスの力も十分に発揮できるということだ。


「どんなフィールドだとしても、アマツがフラッグを守ってくれるから心配すんな!」


自慢げにそう言ってのけるロキに、俺は少し不安になっていた。


「なぁ、俺はそんな凄い奴じゃないぞ?なんでそんなに期待するんだよ」


俺がそう言うと、ロキは少し怒ったように口を開く。


「お前は凄いやつだろ?なんてったってこの俺を倒したんだ」


そう言うと、ロキは俺の肩に手を置き、俺の目をじっくりと見る。


「...だから、絶対誰にも負けるんじゃねぇぞ」


ロキには強い自信がある。

だからこそ、俺を高く評価してくれているんだ。

俺はゆっくりと頷き、ロキの言葉を受け入れた。

すると、どうやら相手側も入場が完了したようで、再びアナウンスが聞こえてきた。


「全チームの準備が完了いたしました。それでは、これよりバラスト・養成学校武闘会、1年生の部第1試合を開始します」


その言葉が終わると共に、大きなブザーの音が鳴る。

これが、開始の合図だ。


「フラッグは建物で守られてる!アマツは作戦通り防衛、ミリスは水場の確認に回ってくれ!」


ロキはそう言いながら窓を開け、物凄い勢いで建物の隙間を潜り抜けていく。

奴の機敏な動きは、この入り組んだビル街には適しているようだ。

ミリスはミリスで、冷静に辺りを警戒しながらロキの指示通りに行動している。

そして俺はというと、やはり少し暇だ。

ロキは迷いなく進んでいったが、本当はもっと慎重に行動するのが鉄則なんだろう。

ある程度時間が経ってもフラッグに攻め込まれる様子は無かった。


「おいおい、このまま時間切れとかは辞めてくれよ...?」


そんなことを考えていると、一瞬、僅かな気配が確かに感じられた。

俺は警戒しながら当たりを見回す。

しかし、誰もいる様子じゃない。

ただ気配だけがどこかにある。


「どこだ...一体どこに...!」


その時だった。

俺が振り返ろうとした瞬間、何かがものすごい勢いで頬に飛んできた。

倒れかけた体を起こし、その何かを探す。

しかしどこにもそれらしきものは見られない。

すると、またそれが、今度は俺の腹に向かって飛んでくる。


「くそ、なんなんだ...!」


俺が動揺していると、再びそれは俺の体に飛んでくる。

何度も、何度も、何度も。

俺は咄嗟に鉄球を取り出し、全身を包み込む。

すると、その攻撃はピタリと止んだ。


「とりあえず囲っては見たものの、一体どうしたものか...これじゃあ埒があかないな」


俺は見えない攻撃に対し、完全に心が疲弊しきっていた。

その時だった。

トンっという音が背後から、確かに聞こえた。

それはさっきの何かがぶつかってくる音とは違う。

それはまるで...


「足音だ!」


鉄球から体を出し、直ぐに鉄球の形を剣へと変える。

そして、俺はフラッグに向けて思いっきり剣を振った。


「...チッ」


すると、みるみる目の前に生徒が現れだした。


「さすが、ミアス家に勝った男は伊達じゃないね」


俺が顔を上げると、そこにはもじゃもじゃの髪の毛と、どこを見てるか分からない丸い目をした生徒が立っていた。


「...残念だったな。透明になれるのか?あんたは」


俺はそう言いながら剣を相手の首に向ける。

しかし相手は余裕の表情のまま口を開く。


「そうさ、俺は光を透過させられるんだ」


その生徒はそう言うと、試しに自身の左手透過させて見せた。


「...便利な能力だな。だが、見破られたらお終いだ」


俺はそう言いながらゆっくりそいつに近づく。

するとそいつは、再びゆっくりと口を開いた。


「見破られただって?俺は光を透過するだけの能力じゃねぇよ」


その瞬間だった。

目の前を強い光が包み込む。

どうやら、奴は透過だけでなく光の反射も能力として扱えるようだ。

俺は目をつぶりながら、手探りでフラッグを探す。


「...あった!」


俺はフラッグを見つけると、決して奪われないように強く握りこんだ。


「全部思うつぼじゃねぇか」


その声が聞こえた瞬間だった。

誰かの手が、そっと俺の背中に触れる。


「ごめん、アマツくん」

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