小屋
最初にここにきた時はあんなもの見かけなかったはず...
親和の森にこんな小屋があったのか?
見たところかなり寂れた様子で、壁にはたくさんの植物が絡みついていた。
しかし扉の節々を見てみると、どうやら小屋自体はここ十数年で建てられた物のように見える。
「合同練習に集中しないとな」
そう思い、慌てて踵を返す。
「良いのかい?真実を知らなくて」
その瞬間、後ろから声が聞こえた気がした。
バッと勢いよく振り返ると、そこには...
「誰もいない...?」
おかしい。
たしかに声がしたはずなんだが...
そこには、木々がざわめく音だけが残っていた。
幻聴?
いや、そんなはずは無い。
...まぁいい、気のせいだと思おう。
「運命は繰り返す。負のサイクルは終わらない」
まただ。
たしかに聞こえる。
今度ははっきり、小屋の方からだ。
「君が...君と僕が終わらせないと」
やっぱり、確実に声がする。
小屋の方から、俺に向かって。
合同練習に戻らないといけない...
でも、気になってしまったのだから仕方がない。
俺は恐る恐る、小屋へと足を踏み出す。
1歩、また1歩と近づいて行く。
なぜだろう、心臓がギュッと締め付けられるような、そんな気がする。
気付けば、俺は既にドアの前へと立っていた。
「本当に開けていいのか...?」
この小屋は明らかに不自然だ。
本当は開けずに合同練習に戻るべきだ。
でも......ガチャ。
「...誰もいない?」
ゆっくりと扉を開き、小さな隙間から中を除く。
しかし、そこにはびっしりと本棚が並べてあるのみだった。
そしてその表紙はなにやら不可解な言語で書かれており、解読ができない。
ふと足元を見ると、なにやら読める言葉が見つかった。
俺はその言葉に驚愕した。
「日本語で...書かれてる?」
この世界に来てからはこの世界の言葉がすんなりと頭に入ってきていたので、俺は言葉には困らなかった。
だからこそ意識が薄れていたが、この世界の言葉は日本語とは違う、独自のものだ。
では一体なぜ日本語の本が...?
俺はおもむろに本を取り上げ、ページを捲る。
「循環する...力と力?」
どういうことだ?
あの声からも循環という言葉が聞こえてきたのを思い出す。
俺は恐る恐る、再びページを捲っていく。
酷い虫食いでとても読めたものじゃないが、ところどころは読める箇所があるようだ。
「結合...与えられた...鍵は其方に...現世と...仲介人?」
だめだ。
一部だけ呼んだところでさっぱりだ。
俺はパラパラと流し読みをしていく。
やはりどこも同じように虫食いにやられ、読めそうな部分はない。
一体この小屋はなんなんだ...?
すると、最後のページだけ読める文章が残っていた。
俺は目をこらし、その文を見つめる。
「循環を永続させる、永遠の涙と現世の住人。その一つをここに閉じ込める。」
永遠の涙...先生が話していた、リル・マリオネットが探し求めていた石だ。
そして、現世の住人...その一つをここに閉じ込める?
ここっていうのはこの小屋のことか?
だが、この小屋には本棚しかないはずだ...
そう思い、軋むドアを恐る恐る開けていく。
本を閉じ、ゆっくりと顔を上げると、そこには...
「...は?」
信じられなかった。
なぜ?いや、誰だ?
そこには、謎の液体に満たされたカプセルに入れられた...1人の少年が居た。
目をつぶっている。
意識は無いのか?
なぜこんな所に?
バラストの内部だろ?
多くの疑問が頭を巡る。
しかしやはり、こいつは誰なんだ...
その疑問が頭から離れない。
果たして俺は本当に、この小屋に入ってしまって良かったのだろうか...?
同様と焦りで、体が動かない。
その時だった。
「何をしている?少年。」




