ゴムと氷
その声が後ろから聞こえた瞬間だった。
気づいた時には目の前のユノの腕に強烈な蹴りが加えられていた。
「俺じゃ戦力にならないと考えた。アマツがフラッグの方へ向かってくれ!!」
状況が上手く飲み込めなかったが、とりあえずはロキの言う通りに従ってみる。
「させるか...!」
アポロが再び口に拳を近づけたが、俺は鉄球をバットに変え、アポロの肘に向かってフルスイングを決めた。
「いってぇぇぇええ!!」
「ごめん!」
悶えるアポロを横目に、俺はフラッグの方へと走る。
「アマツくん!!」
すると、奥の方からミリスの声が聞こえた。
よく見ると、どうやら交戦中のようだ。
「ゴムです!辺りにゴムを撒かれて、近づけないんです!!」
ミリスの足元をみると、そこら中に白い液体が散布されていた。
どうやらあれがゴムで、間違えて踏んでしまうとくっついて足止めを食らうために迂闊に近づくことができないようだ。
「ロキがお手上げなのもこれが原因か...」
しかも、向こうも俺たちと同様、ゴムで城壁を作っている様子だった。
「あのゴムは彼の意思で固めることが出来るようで、1度でも踏んでしまえば固められて身動きが取れなくなるんです!!」
なるほど、かなり厄介な能力だ。
俺の鉄球で空をとべたりすればいいんだが...そんな上手い話は無い。
ロキよりはマシかもしれないが、俺が来たところでどうにも...
「1つだけ方法はあります。」
ミリスはゆっくりと口を開いた。
「ゴムは低音により固くなります。なので、私の氷を上手く応用すればゴムを固めて足場に出来るかもしれません。」
なるほど、その手があったか。
確かに、ゴムはベトベトしてくっつく上、相手の意思で固められるから厄介なだけ。
こっちで固めてしまえば問題は無い。
「でも、それが出来たら既にやってるんだろ?」
俺がそう聞くと、ミリスはゆっくりと頷いた。
「氷を生成してぶつけるには制度が足りず、吹雪では温度が足りないんです。」
くそ、地味にミスマッチじゃないか。
じゃあ、本当に打つ手はないのか?
...いや待てよ。
「俺の鉄球なら制度がいいぞ?」
「...!」
そう、俺の鉄球の制度なら正確にゴムを狙うことが出来る。
であれば、ミリスの生成した氷を俺の鉄球でゴムへと運べばいいじゃないか。
「それで行きましょう...!」
するとミリスは直ぐに氷の精製を始めた。
それに合わせて、俺も鉄球の形を変えていく。
「お願いします!」
ミリスはどんどん氷を精製し、俺に渡していく。
それに合わせ、俺も鉄球で氷を運んでいった。
見た目は地味な工場作業みたいだったが、勝てれば問題ないのだ。
「これくらいなら問題なく進めるだろ」
ある程度足場を固めたところで、俺たちはついにフラッグの方へと歩みを進めた。
「これが問題ですね...」
俺たちは足場を辿り、フラッグを囲む巨大なゴムの城壁の前に立っていた。
「これじゃ固めるもくそもないな。壊すしかないか?」
俺がそう聞くと、ミリスはなにやら考えている様子だった。
「壊すと言っても、なにか罠があるかもしれませんよ。私たちは中の人の能力をゴムとしか知らないんです。それに、相手にはあのユノさんもいるので...」
たしかに、あのユノの事だ。
なにか対策をしてそうではある。
でも、これ以上ゴムで罠を作れるか??
「なぁ、やっぱり罠なんて...」
考え込むミリスに向かって、俺がそう言った時だった。
ボワッという音ともに、ゴムの城壁が段々と溶け始めたのだった。
「どういうことだ??まさか...炎!?」
一体どうして炎が...?
ここにはゴムのやつしかいないはずじゃ...
「残念だったアマツ!!」
その声とともに、なんと城壁の裏からアポロが顔を出してきてのだ。
「お前たちが勘ぐってる間にお邪魔させてもらったぜ。」
そうか、アポロの炎で城壁を溶かしたのか!!
「アマツさん、下がって!!」
その声が聞こえた時にはもう遅かった。
既に足元にはゴムが絡みついてしまっていた。
「くそ!とれない!!」
俺達がもがいていると、ゴムの城壁から1人の男が顔を出した。
「僕の城へようこそ」
すると、そこには長髪の、白衣を着た男が立っていた。
「僕のゴムはこのように固めたり...」
そう言いながら男は指をくいっと動かした。
するとみるみる足元のゴムが固まっていった。
「逆に、トランポリンみたいに跳ねさせたり出来るんですよ」
トランポリンみたいに跳ねさせる?
ゴムの弾性のことだろうか。
「見ててください、ほら!」
男はそう言いながら両手をグワッと上げた。
すると、さっきまで硬かったゴムがどんどん柔らかくなり、やがて俺たちの体を跳ねさせた。
「ど、どうなってる!?」
「ちょ、これ、身動き取れないですよ!」
あたりに散布されていたゴムもすべてが弾性を強く持ち出し、俺たちはそこら中をはね回っていた。
「トランポリンは楽しいですか?でも、そろそろおしまいですよ...」
見ると、男の両手から白いゴムの液体がみるみる流れ出し、あたりをさらにゴムで埋めていった。
「まずい!!」
そう思った時には、既に体は大きく宙へとほおり出されていた。
数秒の間、空中を浮遊し、やがて俺は強く地面へ激突した。
「うぅ...」
痛みを堪えながら辺りを見回すと、どうやらかなりフラッグから離れてしまったようで、完全に見知らぬ森の中と言った感じだった。
「くそ、これじゃもとの場所も分かんねぇぞ...」
辺りを見回したが、どうやらミリスともはぐれてしまった様子。
フラッグやミリスの位置を探ろうと探索していると、奥の方に小さな小屋のような物を見つけた。
「...なんだあれは?」




