すっとぼけ
「珍しいこともあるもんだな」
俺がそう言うと、ロキがニヤニヤとしながら話し出した。
「俺、絶対あの班と戦いてぇわ...」
ロキはそう言うが、俺からしてみれば二重の意味で勘弁して欲しい。
「そう言えば、名前聞いてなかったな。」
ロキが振り向いてそう言うと、女の子は改まって自己紹介を始めた。
「えっと、初めまして!B組のミリス・リグメシアと申します。能力は...」
そう言いかけたところで、ロキが割って入る。
「...凍結と吹雪」
そう言った後、ロキはすぐに話を続けた。
「リグメシアは西の方では名家として知られている。氷の女王・ラヴラフレシアが代表的な偉人だな」
そう言い終えると、ロキはハッとした顔で弁明をした。
「昔、色んな名家を調べたりしてたんだよ!そのお陰であんたの名前をな...」
ロキがそう言うと、ミリスは驚いた顔でロキを見つめる。
「すごい!こっちに来てから、誰も私の名前を聞いても驚かなかったのに...」
俺にはよく分からないが、どうやら2人はすっかり打ち解けたようだ。
「まぁでも、俺も全然詳しくねぇよ。なんせこいつの事を知らなかったしな」
そう言ってロキは俺の肩にポンっと手を置いた。
「アマツさん...でしたよね。決闘の様子は拝見してました。おふたりが御一緒であれば、優勝も狙えそうですね!」
なんだか、アマツさんと呼ばれるとむず痒い。
まさか同級生からさん付けて呼ばれるとは...
「アマツでいいよ。えっと...ミリスだっけ?」
俺がそう言うと、ミリスは驚いたような顔をした後、顔を手で被ってボソッと呟いた。
「お、男の人から名前で呼ばれるなんて...」
...名前で呼ぶのは失礼だったのか?
リグメシアと呼んだ方がいいのだろうか。
そんなことを考えていると、ロキは呆れたような顔でこちらを見つめていた。
「あのな、西の方では...まぁいいや。」
一体どうしたと言うのだろう?
どうやら、俺は何かまずい事をしてしまったようだ。
そんなやり取りをしていると、学長が前に出てきて、生徒達へ静まるように促した。
「さて、班決めも終わったようじゃな。それでは改めて、武闘会について説明する!」
武闘会は1班3人のトーナメント形式で行われる。
内容はシンプルで、障害物のあるフィールドでお互いのフラッグを先に手に入れた方の勝利というもの。
フィールドには3つのステージがあり、砂浜・ジャングル・都市の中から選ぶらしい。
「なるほど、フラッグか...」
横を見ると、なにやらロキは既に作戦を考えている様子。
頼もしいやつだ。
話が終わり教室に戻ると、かなりやつれた様子のハヤテがいた。
「俺ずっとあいつから殺気を感じるんだよ...勘弁してくれ...」
そう愚痴を吐くハヤテを、ディゴノは優しくたしなめる。
どうやら、ルシエルと同じ班になってしまったのが相当応えているらしい。
可哀想に...
「アマツ、班はどうだった?」
すると突然アポロが現れ、そう聞いてきた。
「ロキと...B組のミリスって娘と一緒だったよ」
俺がそう答えるとアポロは、俺のメンバーに驚いている様子だった。
「実力者揃いで、ぜひ手合わせ願いたいメンツだな...特にロキ・ハイドはかなりの強者だ!」
どうやらこいつもロキ同様、戦闘狂らしい。
いっその事こいつら2人でライバル同士になればいいのに。
「それにしても、まさかアマツがリグメシアの事を好きだなんてな!!」
...なんだって??
急にとんでもない事を口に出すアポロ。
俺達は目を丸くしていた。
「お、おい!アマツが...ちょっとまてどういうことだ?」
困惑するハヤテと同様、俺とディゴノも突拍子もない事を言い出すアポロに戸惑っていた。
「ミリスってユリウス国から来た、ミリス・リグメシアの事だろ?」
アポロのその言葉を聞いたハヤテとディゴノは、急に納得したような顔をしだす。
事態を飲み込めない俺に、ディゴノは少し申し訳なさそうな顔で説明をする。
「アマツの事だから知らなかっただけなんだろうけど、その...西側の国では女性の名前を呼ぶのは求婚の証なんだ...」
求婚の証?どういうことだ?
「ディゴノ、さすがにアマツもそんな事は知ってると思うぜ。俺にはわかる、こいつはとぼけたフリして実は狙ってるっていう1番凶悪なタイプだ」
ハヤテまで意味の分からないことを言い出した。
いやまぁ、ふざけたことを抜かしてるのは理解できたが。
「ちょっと待て。つまり俺はミリスに求婚を...」
ディゴノは怪訝そうな顔でゆっくりと頷く。
どうしよう、午後には武闘会の練習授業があるというのに...




