シソウ家の血
開始の合図ともに、ハヤテは勢いよく腰から刀を抜きルシエルへ斬りかかった。
それに合わせ、ルシエルも剣を抜き刀を受け止める。
「俺は落ちこぼれじゃねぇ!!」
そう叫び、ルシエルへ何度も攻撃をしかけるハヤテ。
ルシエルはそれを軽々と受け流しながら余裕の表情を浮かべる。
「君の得意に合わせてやっているというのに、このザマですか...心底呆れますよ。」
ハヤテが剣豪の一族と呼ばれていることにも驚きだが、それに剣で対抗するルシエルの強さには驚愕だ。
「俺はまだ本気じゃねぇんだよ...!!」
そう言うとハヤテは腰から刀をもう一本抜き、二刀流の構えで攻撃の手を早めた。
これにはルシエルも、さっきまでの余裕が少し減ってきているように見えた。
「神よ、道を示せ...風車!!」
そう詠唱を唱えると、ハヤテの体は一気に軽くなったように飛び上がり、回転と共にルシエルの首へと斬りかかった。
身軽さから来る勢いと回転の力により威力をました刀は見事なもので、ルシエルへ強い衝撃を与えた。
「さっさと前言撤回したら許してやるよ!」
そう言いながら再び斬りかかるハヤテ。
それに対しルシエルは、フッと少し吹き出した後、すごい勢いで笑い始めた。
「君、おかしいよ。シソウ家の人間だからどれだけ強いのかと思ったら、最低等級の技で威張り出すだなんて...」
片手で腹を抱えながら攻撃を軽く受け流すルシエル。
さっきまでとは明らかに動きが違っていた。
「父親から血を受け継いで得た力がそれかい?もしかして、弱い母親の血を色濃く受けついでるんじゃないかい?」
ハヤテの手が止まった。
しかし、ルシエルはまだ続ける。
「優秀な父親の血は全部兄に取られて、汚らわしい母親の血だけ受け継いだ結果が君みたいな落ちこぼれだなんて...面汚しにも程があるよ」
その言葉に、俺の中の何かが沸き立っている感覚がした。
「...ふざけんなよ」
ハヤテはそう言うと、涙をポロポロとこぼしながら刀を強く握った。
「母さんを悪く言うんじゃねぇ!!」
そう叫んで斬りかかるハヤテの懐に素早く潜り込んだルシエルは、ハヤテの腹に強烈な拳を打ち込んだ。
「あ〜、よっわ」
そう呟きながら、倒れ込むハヤテを見下ろすルシエル。
「ほら、兄貴ィ〜助けて〜って叫んでみろよ」
腹を抱え込み、過呼吸になるハヤテ。
観客はみんな黙り込んでいた。
「そ、そこまで!勝負あり!」
ハヤテの横を颯爽と通り過ぎるルシエル。
ディゴノは走ってハヤテに駆け寄り、何か言葉をかけていた。
「いいのか?」
生徒会長は俺の肩に手を置いた。
「決闘は同意の上であれば誰でも出来るんだ。それはたとえ...お前でもな」
その言葉を聞いた時には、俺はもう走り出していた、ルシエルの元へと。
「おい」
俺の言葉に、ルシエルは振り向く。
「落ちこぼれのお友達が負け惜しみを言いに来たのかい?」
憎たらしい笑みを浮かべるルシエルに、俺は決闘を申し込む。
「ハヤテに対する侮辱への謝罪を賭けて...俺と決闘しろよ」
ルシエルはその言葉に少し驚いた表情をした後、快く決闘を受け入れた。
「墓は仲良くお隣同士に立ててあげるからね」
余裕の表情で答えたルシエル。
しかし俺の中では、入試の時のような何かが沸き立つ感覚がしていた。
ハヤテは良い奴だ。
俺なんかに話しかけてくれて、優しくしてくれた。
そんなハヤテを侮辱したルシエルを...俺は許せない。
「後悔させてやるよ」




