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CYCLE  作者: カツ・コイチ
入学試験編
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27/34

マリオネットの悲劇②

そう言いながら、指揮を取るように棒を振る。

リル・マリオネットの能力は、無慈悲にも対抗し得る力の無いバラストの隊員を、容赦なく葬っていた。


「辞めろ...!!」


上級幹部や教員は、すぐにマリオネットを止めようと走る。

しかしどれだけ攻撃をしようとも、マリオネットは軽々とそれを受け流していた。

ある隊長が膝を着き、ポツリと一言漏らす。


「辞めてくれ...私の仲間がみんな...もう辞めてくれ」


その言葉に、皆が体を強ばらせる。

辺りを見回せば、白く清潔に保たれた壁は真っ赤に染まり、疲弊しながらも真剣に勤務していた隊員の体は冷たくなっていた。


「やめて欲しければ永遠の涙を渡せ。簡単な話であろう?」


隊長はついに崩れ落ち、絶望していた。

この悪夢から覚めるには永遠の涙を渡せばいいが、そうすれば今度はその悪夢がずっと続くと分かっていたからだ。

微動だにしない隊長の首を、マリオネットは速やかに落としていた。


「そこまでだ...!!」


マリオネットが振り返ると、そこには中年と、老人が2人立っていた。


「ミアス家だ」


場がザワつく。

異常事態に、不可侵協定を結んだはずのミアス家が駆けつけていたのだった。


「数百年間不可侵の玉座を維持し続けた最強の一族...その当主と前当主がバラストに味方してくれるのか!?」


起死回生の兆しに、皆が歓喜していた。


「リル・マリオネットといったか?言っておくが、これ以上の好き勝手は我々ミアス家が許さんぞ!!」


当主がそう言うと、前当主の心臓に風穴が空いた。


「モツを狙ったはず...さすがはミアス家だな」


一瞬だったのだ、ミアス家への期待が崩れるのは。

しかし、取り戻した士気が失われると思われた瞬間、前当主はすぐにマリオネットへ攻撃を仕掛けた。


「心臓の1つくらい、くれてやるわ!」


その言葉に当主や総督、学長が再び激昂し、マリオネットとの激しい戦闘が始まった。


戦いは長期戦になった。

3日3晩実力者達の相手をし、マリオネットは疲労が溜まっていた。


「鬱陶しいやつらめ...もう十分であろう」


そう言うとマリオネットは小さな小瓶を取り出し、それを丸ごと飲み込む。


「永遠の涙さえ手に入れば、多少のブランクなど屁でもない...」


みるみると体に黒い紋様が現れ、疲弊した体を癒していく。

誰もが呆気に取られていた。

近づかない、近づけなかった。

その異様な光景に、全身が危険信号を発していた。


「愚図どもが、もう飽きたぞ」


明らかにおかしい様子に、ミアス家当主はすぐに阻止しようと走る。


「神よ、慈悲の涙を」


詠唱とともに、当主の全身を黒いモヤが包む。

それはゆっくりと当主の体をしめあげていた。


「離せ!離せ!」


1秒、また1秒と当主の声だけが響き渡る。


「離せ...離してくれ」


全身の骨がバキバキと音をたて、当主の体が麺のように伸ばされていく。

その目には涙が浮かんでいた。

誰もが絶句した。

助けに入れなかった後悔など微塵も無い、もはや助けに入らなかったことに安堵さえしていた。

そしてそれは、バラストの敗北を意味している。


「さて、永遠の涙を取りに行こうか」


足がすくんで動けない。

動いては行けないと全身が叫んでいる。

堂々とそびえ立っていたバラストの本部は半壊し、辺りの街は倒壊した建物で満たされていた。


「...どうやったんだ」


フォルデムが口を開いた。


「なぜとは聞かん。どうやってそんな力を...!」


その言葉に、マリオネットは少し考え込んだあと、ゆっくりと話し始めた。


「此岸から...生きた人間を連れてきたんですよ。」


その場の全員が目を見開いた。

禁忌やご法度ではない、誰もそんなことを考えなかったんだ。


「生きた人間は、この世界にいるだけで悪なんです。だから、無限のエネルギーを所有することができる」


フォルデムは強い後悔に満ちた表情で口を開く。


「管の...能力か...」


マリオネットはフォルデムに歩み寄り、優しく微笑んだ。


「それと、あなたの研究のおかげです。システムへの深い理解が、この悲願を達成に導きました」


フォルデムはついに膝から崩れ落ち、子供のように泣き叫んだのだった。


ーーー


「これが15年前に起きた...マリオネットの悲劇だ。この歴史は、意図して隠されてきた」


辺りを見回す必要はなかった。

生徒は皆、その残酷な歴史に絶句していた。

そひて、ある生徒が1人、ゆっくりと手を挙げた。


「では...マリオネットは今、どうなっているんですか?」


そうだ。

その話が本当なら、リル・マリオネットは今も尚生きている...それどころか、永遠の命を手に入れているかもしれない。


「...死んだよ」


カイズは少し笑ってそう言ったあと、話を続けた。


「リル・マリオネットはその後、永遠の涙を奪う前に殺された...ミアス家によってな」


ミアス家によって殺された...しかし、ミアス家は手も足も出せない状態だったはずだ。


「先生、でもミアス家の当主も、前当主も...」


その言葉に、カイズはゆっくりと瞬きをし、答えた。


「リル・マリオネットを殺したのは当主でも前当主でもねぇ。」


全員が固唾を飲んでカイズの話を聞いていた。


「リル・マリオネットを殺したのは、ミアス家の一人息子...」


「生後間もない新生児、"ミアス・リンキハイゼン"だった」

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