マリオネットの悲劇①
「15年前...ちょうどお前たちが生まれた歳に、ある大きな事件が起きたんだ。いや、事件なんかじゃない...あれは正しく"災害"だった」
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15年前、世界を震撼させる悲劇が起こった。
その悲劇を説明するには、そこからさらに15年を遡る必要がある。
つまりには30年前のことだった...
座学・実技ともに最高成績で卒業した歴代最高の生徒会長、リル・マリオネットはその日、バラスト養成学校の卒業式を終わらせ、恩師への挨拶回りをしていた。
「先生、僕卒業しましたよ」
座学の教育主任であり、副学校長でもあるユーマーク・フォルデムは、愛弟子であったマリオネットの挨拶に快く返事をした。
「君が居なくなるなんて寂しいよ。私がまだバラストに務めていたら、君と一緒に入れたのにね」
寂しい表情を浮かべる先にフォルデム、マリオネットは笑顔で話す。
「お気持ちはとても嬉しいです。先生は僕の、最高の師匠です。
その言葉に、フォルでむはすこし照れくさい顔をした。
「ですが...」
マリオネットは少し真剣な表情で、フォルデムに話す。
「師匠である貴方にしか言えないのですが、実は僕...バラストには入らないんです」
その言葉を聞き、フォルデムは驚きの表情を浮かべる。
「君のような優秀な生徒が、バラストへ入らないって!?君の出世は確約されたようなものじゃないか...!!」
それに対しマリオネットは、周りにひとが居ないことを確認し、あることをフォルデムに頼んだ。
「来年入学してくる生徒に...管の能力を持つ生徒がいるはずなんです。どうしてもその子と話がしたくて、よければ連絡先を聞いておいてくれませんか?」
突拍子もない話に、フォルデムは驚きつつも、了承した。
「愛弟子の頼みだ、断りはしないが...一体なぜ?バラストに入らないことにも関係しているのか?」
マリオネットはまたゆっくりと微笑んだ。
「いえ、彼とは昔友人だったので、また話したいだけなんです。そういうちょっとした気がかりを取り払ってからバラストに入ろうと思ってるんですよ」
その言葉に、フォルデムは安堵の表情を浮かべた。
「それなら良かった。すぐに連絡先を教えよう、バラストでも精一杯励むんだぞ。」
そうしてマリオネットはその場を離れ、3年間の思い出が詰まったバラスト養成学校を後にした。
しかし、その後マリオネットがバラストへ姿を現すことはなかった。
そこから14年後...今から16年前のある日、事件が起こる。
自らをリルマリオネットだと名乗る男から、バラストへの脅迫状が届いたのだ。
「永遠の涙を私に寄越すんだ。さもなくばこの世界に地獄を生み出してやろう...完全なる肉体を手に入れた後、今度こそこの世界の絶対的な王として君臨するのだ」
バラストの要人は誰もが目を丸くした。
14年前、史上最高の優等生...そして行方をくらました、あの男が再び現れたのだ。
しかし最も驚いていたのはバラスト養成学校副学校長...ユーマーク・フォルデムだった。
「なぜあやつが永遠の涙を...!?何かがおかしい、こんな事をする生徒では無かったはずだ!」
永遠の涙、それは数年おきに、永続的に水滴の滴る石であり、この世界で唯一の永久機関としてバラストで丁重に保管されている品だ。
そしてさらに、その石こそが永遠の命への鍵であると言われている。
これに対しバラストは、本部周囲の警戒を進めると共に、リル・マリオネットを犯罪者として指名手配した。
しかし、数ヶ月間、リル・マリオネットが見つかることも、現れることも無かった。
その事件から1年後、バラストには、正門を潜る養成学校の卒業生が立っていた。
華やかな装飾と、おろしたての制服を着た卒業生...その表情は、ついにバラストの一員として勤務することが出来る喜びに満ちていた。
バラストの隊員が拍手で卒業生を出迎える。
「もう我慢の限界だぞ、バラストよ」
その声が聞こえた瞬間だった。
幹部の首が一瞬にして消え去り、血が噴水のように吹き出、卒業生のおろしたての制服を赤く染めた。
「アサド班長!!」
誰よりも早く反応したのは首席卒業生のカザミ・マコトだった。
リル・マリオネットを認知した瞬間、その首に刃を向ける。
そしてその刃は、自分自身の首を飛ばしていた。
「あぁ、なんとも...なんとも情けない。」
その光景を理解した時から、もはや誰も動くことが出来なかった。
たとえリル・マリオネットがバラストへ土足で踏み入ろうとも、目の前で幹部と首席卒業生を血祭りに上げたその男に、誰もが...バラストの一員ですら臆し、硬直していた。
全てを見届けた次席、カザミ・イルは恐怖と悲しみから、もはや正気を失っていた。
マリオネットが中に入ると、幹部や総督がすぐに駆けつけた。
調査部では様々な実力者へと応援要請を送り、バラストは完全な迎撃体制を取っていた。
「なぜ...なぜこんなことを!!」
少し遅れて駆けつけたユーマーク・フォルデムは、変わり果てた愛弟子へと問う。
「先生、私は...私は最初から、完全な存在になりたかったんです。」




