初回授業
次の日、俺はハントから渡された教材を持って学校へと向かった。
他愛もない話をハヤテやディゴノと話していると、カイズが教室に入ってきた。
「えー、今日から通常授業が始まる。入試やオリエンテーションで緩んだ気持ちを、しっかりと正して授業に望むように。」
そう、今日からは通常授業が始まり、バラストについての知識の蓄えや戦闘訓練を行う。
この学校は普通の教育機関とは違い、授業数が極めて少ない。
午前中も少し遅い時間に登校し、少し座学を受けた後に昼食を取り、午後に戦闘訓練をする。
まぁ、授業内容が特殊な事を除けば少し変わった学校といった感じだ。
ホームルームを終えると、カイズは授業の準備を始めた。
「正直さ、モツの事とかバラストの事とか、中学では教わらなかったから新鮮だよな。」
ハヤテが言うには、中学までは所謂数学や国語といった、地球と変わらない内容の授業をするらしい。
実際、街並みも地球と大差は無かったし、地球+特殊な概念といった世界なのは確かだ。
チャイムがなると、ハヤテとディゴノは足早に席につき、俺もバッグから教材を取り出した。
「じゃあ、最初の授業をはじめる。今回の内容は魂と...ちょっとした史実についてだ。」
そう言いながら、カイズは教科書を開くように促した。
俺は言われた通りにハントから渡された教科書を開いた。
すると、教科書には細かい文字で単語の説明や内容の補足などが細かく記されていた。
恐らくハントがこの世界についてよく知らない俺へ書いておいてくれたんだろう、優しいやつだ。
「まず魂というものは、あの世...つまりは此岸の事だな。その世界の住人の中に存在する貯蔵庫のことだ。」
カイズの話す内容は、概ねハントから聞いたものが大半だった。
魂とは善悪のエネルギーを溜め込む貯蔵庫であり、それがこの世界での主要なエネルギーの1つとなっている。
そして、ほぼ全員が持っている「モツ」で吸収・変換ができる。
前提知識の様なものだろう、他の生徒も知っている様子だったし、カイズもおさらいといった話し方だった。
「そしてここからは、より深くモツについて話しいこう。まずモツには、善悪の適性というものがあり、人によって善悪どちらのエネルギーを利用出来るかが決まっているんだ。」
これはハントから聞かなかった話だ。
カイズが言うには、モツには能力とは別に人それぞれの適性があり、善のエネルギーと悪のエネルギー、どちらを利用出来るかが生まれつき決まっているそうだ。
そして能力もそれに依存し、悪のエネルギーを使う能力は人へと影響し、善のエネルギーを使う能力は自分へと影響するらしい。
そして稀に、その両方の性質を併せ持つ能力者もいるとのことだ。
要するに自分へのバフが善のエネルギー、それ以外が悪のエネルギーなんだろう。
「両方の性質を併せ持つというのは、自分にも作用するし、相手へも作用する...ちょっと便利な能力だな。親善試合に出たA組のすばしっこいやつがこれに当たる。」
ロキの事だ。
あいつの底なしの自信も、そこから来てるのだろうか。
ハヤテの方をちらっと見ると、「うげっ」という顔でこっちを見ていた。
相変わらずだ。
「善悪のエネルギーに相性などは無いが、一つだけ気をつけておくことがある。それは傑出魂についてだ。」
ハントから既に聞いた部分を除外してまとめると、善のエネルギーの傑出魂は基本的に無害なので、バラストで保護した後に速やかにエネルギーを流出・返還するらしい。
ハントの言っていた「善の傑出魂の利用」についてはやはり触れられなかった。
「まぁ傑出魂についてはまた別の授業で詳しく扱うから、そのつもりで。さて...」
一通り話終え、少しまだ時間が残ってるなという頃合いで、カイズは授業モードから一変して、少し怖い顔つきで新たな話題を出した。
「ここに入学したんだ...お前たちには隠された歴史を知る権利がある。」
そう言うと、カイズは教科書を閉じるように促した。
「少し残酷だが、重要な話だ。真剣に聞いてくれ」
カイズは深呼吸をし、全員の顔を見渡す。
「では話そう、15年前の大災害..."マリオネットの悲劇"について...!」




