勝敗
「そこまでだ!!」
その言葉がアリーナに響いた途端、ミナトとルシエルはすぐに手を下ろした。
「嘘だろ!?タイミングわりーよ!」
確かに良いところで終わってしまったとは思う。
ただ、このタイミングで終わったということは、審判が危険だと判断したのだろう。
「両者の激しいぶつかり合いの末、大将同士の決着というクライマックスへとたどり着きましたが...惜しくもここでストップがかかりました!!」
先生のその言葉と共に審判が中央へと集まり、話し合いをはじめる。
恐らく勝敗を決めているのだろうが、発動が一手早かった生徒会に軍杯が上がるのは目に見えていた。
「さぁ、いよいよ勝敗発表です...!」
響き渡る楽器の音ともに、審判が旗をあげる準備をする。
「見事勝利を掴んだのは...生徒会チームです!!」
盛大な歓声と拍手が巻き起こり、壮絶な試合を制した生徒会を、賞賛の嵐が包み込む。
「前半の相手の弱点を見抜いた的確な対応、そして間一髪の生徒会長の能力の発動...これが実戦だったと考えたら恐ろしいですね...実に素晴らしい試合でした!!」
再び大きな拍手が起こる。
試験の時とは違う、多様な能力で競い合う戦い...そんな超常的な様子に、俺の心は少しばかり弾んでいた。
ーーー
楽しかった余興の親善試合はあっという間に終わってしまい、担任の指示の下全員が大講堂へと足を運ぶ。
この後にはバラスト要人からの新入生への挨拶が待っているからだ。
カイズの指示の下、歩みを進める俺とハヤテ。
その後ろから、ボソッと語りかける声が聞こえた。
「なぁ、さっきの試合おかしいと思わないか?」
振り返ると、そこには少し大柄で、ウェーブのかかった長い髪の生徒が立っていた。
恐らく同じクラスだと思われるそいつは、俺たちに話を続ける。
「どう考えても勝ってたのはルシエルだった。バラスト養成学校の教師がそれを分からないとは思えない。」
そう話す生徒に、ハヤテはすかさず反論をする。
「見てなかったのか?先に発動してたのはミナト会長だった。たとえその後にユノの能力を発動しようにも、リケイドの攻撃はまだ1回残ってたし、それを喰らえばもう動けなかっただろ?」
その通り、ミナトによって能力を封じられたルシエルと、十字架を背負ったユノ、そして完全に動きを拘束されたハイドという1年チームの状況は完敗を表していた。
しかしハヤテの話に対し、その生徒は前提が間違っているのだと説明する。
「まず、ミナト会長の能力は発動後に相手の力を順番に封印していく仕様になってるんだ。だから、たとえ発動事態が早くとも能力を封じられるまでにはラグがあるんだ。」
そう説明をするこいつは、一体どこからそんな情報を得ているのだろうか?
「ルシエルの能力は不明だが、恐らくミアス家相伝の超破壊力を持つ能力だ...であれば、そのラグの間に発動しちまえば生徒会の負けは確定してたんだよ。」
こいつの情報が正しければ、確かにあの時点で勝利が確定したのは1年だっただろう。
でも一体、どうして...
「どうしてお前はそんなに詳しいんだ?バラストならまだしも、養成学校の生徒の情報なんてほとんどのやつが知らないだろ」
その通りだ。
どんな能力かを知ってるだけならまだしも、生徒会長の能力を詳しく知る彼は、何者なんだろう?
「いやぁ、ただ情報通なだけさ。好きなんだよ、戦闘が。」
そう答える彼は、特に怪しい様子を見せる訳でもなく、気さくに笑って見せた。
「そうか、俺はハヤテ。こいつはアマツな」
さすがはハヤテ、社交的だ。
「僕はディゴノ。よろしく」
自己紹介を終えると、ハヤテは話を戻そうとディゴノへ問いかける。
「なぁ、それじゃあどうして先生は生徒会の勝ちってことにしたんだ?」
その質問に、ディゴノは少し声のトーンを落として答える。
「たぶんだけどさ、生徒会が負けるなんてのは想定してなかったんだろうよ。実際生徒会長は歴代でも指折りの実力なんだ。」
なるほどな、確かに今回の試合はバラスト養成学校というものの威厳を見せる為の試合であって、最初から1年が勝つことは想定されていない。
実際あのまま続けて負けてしまったら示しがつかないだろうしな。
どうやら教員にとってもイレギュラーな試合だったようだ。
「お前ら、大講堂では静かにしろよ〜」
大講堂へ着くと、カイズは俺たちを席へと案内した。
さっきのアリーナのような大規模な講堂に、思わず息を飲む。
これから教壇に立つバラストの要人...つまり幹部ということなのだろうか。
もしかしたら、ソウキについて知っているかもしれない存在だ。
そう思いながら、俺はゆっくりと席に腰掛けた。




