1-C
教室へ向かう途中、ロキの言葉を思い出した俺はハヤテに問いかける。
「なぁ、あいつシソウって苗字に反応してたけど、どうしてだ?」
するとハヤテは、少し寂しそうな表情をしたあと
「兄貴の事を連想したんだろ。俺はいっつもこうなんだ。」
そう答え、すぐに話題を変えてきた。
「ところでさ、アマツの出身地ってどんな所なんだ?」
その質問に、俺はすこし動揺しながらも答える。
「こことあんまり変わんないよ。ただ、俺にとっては少し居心地が悪かっただけで。」
「家出ってことだな。俺と一緒!」
全然一緒じゃないが、そういう事にしておこう。
そんな話をしてる間に、1-Cと表記された教室へたどり着いた。
かなり広い教室で、講堂のような構造になっていた。
中にはすでに何人か生徒がおり、一人で本を読んでいる生徒や、友人と談笑してる生徒など、地球の学校と対して変わらなかった。
「出席番号順だと席離れちゃうし、チャイム鳴るまでアマツのとのに居よーっと」
そう言って、ハヤテは自分の席に荷物を置き、俺の席にやってくる。
何気ない話をしているうちに段々とクラスメイトが集まっていき、気付けばチャイムが鳴っていた。
「またな!」
ハヤテが席に戻ったあと、教室の扉がゆっくりと開かれた。
「うわ、なんか懐かしいな」
そこに現れたのは、濃い髭にサングラスの中年の男で、キチッとセットされた髪はワックスの反射で少し光っていた。
「えー、Cクラスを担当するヤマブキ・カイズです。結構長く勤めてはいるが、1年生を担当するのは久しぶりなので悪しからず。」
そう言いながらサングラスをクイッと持ち上げながら生徒の顔を一人一人凝視していく。
その見定めるような視線に、みんなが強ばっていた。
「おもしれぇクラス。こりゃ当たりだな」
カイズはそう呟くと、再び話を始める。
「みんなが知っての通り、この学校は特殊な学校です、結果を重視し、実践的な指導を行ってます、単位制で座学と実技、実習で進級・卒業が決まります...」
そう口早に説明し終えると、真剣な顔つきになり、ゆっくりと口を開いた。
「ここに入学したからと言って甘く考えてはいけない。お前たちが頑張るべきなのはこれからだ。だが、ここに来るのは簡単じゃない。」
ガイズはニヤリと、ハントのような笑顔を見せながら話す。
「お前たちの努力は俺には計り知れない。まずはおめでとうと言っておこう」
その言葉を聞き、俺はハッとする。
何千人もの受験者、ロキのように遠方からはるばるやってきた人や、ハヤテのように深い事情を持つ人。
名前も顔も分からない沢山の人がこの学校への入学に向けて努力していたのだろう。
そして、その中の"誰か"を蹴落として俺は入学している。
運良く手に入れた特別な力を使って。
だからこそ、この世界に土足で踏み入り、理に反していく自分という存在に俺は向き合っていかなければならない。
「さっそくオリエンテーション期間の内容を説明するぞ〜」
そう言って大きなホワイトボードに文字を書いていくカイズの右手には、たくさんの豆と傷、力強さが残っていた。




