イレギュラー
「疲れただろ。今日はもう宿に戻れ。」
ハントは俺について聞こうとしない。
というか、もう知っているのだろう。
俺の過去も、俺の気持ちも。
それがすごく、居心地が良いと感じている。
ーーー
次の日、俺はザクロに呼ばれ、武器屋に来ていた。
「有り得ねぇよ。」
開口一番、ザクロは真剣な表情でそう言った。
「ハントから話を聞いたが、チップで吸収できるエネルギーの量はたかが知れてる。城を作れるかもなってのは冗談で、本来あの規模の力は生み出せねぇ」
どうやら試験の時の俺の力は、ザクロの作った武器では到底実現できないものらしい。
「でも、今また同じことができるとは思えないんだ」
俺はザクロに当時の心境を伝えた。
もちろん、過去のことは隠したが。
「お前は存在自体がイレギュラーだから、なんとも言えないのは確かだ。だが、実際に有り得ないことが起きた。その事実がある以上この件は蔑ろにはできねぇ。」
ザクロは、事態をかなり深刻に受け止めているようだ。
そして、地球人である俺という存在は、この世界の理を覆す何かをもっている可能性についても言及した。
「イレギュラーは承知の上だろ。試験で力を発揮できた、今はそれで十分だ。」
ハントがそうなだめると、ザクロは少し納得のいかない表情を残しながら了承した。
「まぁ、また何かあったら俺に伝えてくれ。」
ザクロはそう言い残すと、カフェを開く準備に取り掛かった。
俺とハントもそれに合わせて店を出た。
「今回みたいなイレギュラーはこれからいくらでも起こりうる。でも、お前はソウキに会うことだけを意識してればいいさ」
ハントは俺にそう言い聞かせる。
俺は、何も知らない。
この世界のことも、ソウキのことも、ハントのことも、俺のことも。
そう実感しながら、歩みを進めていく。
この足は一体、どこへ向かっていくのだろうか。




