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三つの拳と二つの刃 その2

「……作戦会議か、最期の会合は終わったか?

 ならば行くぞ!!!」


 アティは地面を踏み抜くほどの勢いで蹴り抜きガイウス達へと接近一瞬にして誇りと誉れの宝矛(キング・ハーツ)4本の射程圏内に彼らを捕らえる。しかしその動きを読んでいたのかガイウスはあえて前に出て神盾魔法であるアイギスを発動、シールドバッシュの要領で前に突き出し、アティの攻撃の初撃を潰す。


「……これはアイギス……!!……なるほど、あの愚か者の兄というのはハッタリではないようだな……!!」

「……うちの弟のことをよぉ余所モンが愚か愚か言ってんじゃねぇよ!!!実際愚かだがよぉ!!!」


 ガイウスがアティの攻撃を止めている間にレイゼ達は目配せで合図した後、行動する。

 アティはそもそもが人類とはちがう次元にいる魔将、それも初代勇者の継承思器によりそのスペックは自分達とは比較することもできない。主導権を奪われれば確実に負ける。

 ならば答えは一つしかない。


((初動を潰し、素早さで叩き潰す!!))


 レイゼは素早く指を鳴らし高速移動を発動するとアティの背後に回り込むと彼女の無防備な背中に嘆願の声杖(ゴッド・ノウズ)を大きく振るい叩きつける。叩きつけられたことでアティは4本腕の内下の手二つで握っていた誇りと誉れの宝矛(キング・ハーツ)を逆手持ちに持ち直し後ろに向かって突き立てようとする。しかしそれと同時に左右それぞれのサイドに移動していたオルトラント、ローア勢いよく飛び出し、


「ハァッッ!!!」

「キャハ♥アシッド・クリセント!!」


ザッ、ザシュ!!!!!ブシャァァァァ!!!


 オルトラントは甲虫を思わせる硬い甲殻に包まれた鋭い爪を持つ右手で、ローアは右手の甲から出現した三日月状の強酸の刃によってレイゼを突き刺そうとする腕二本を切断する。切断面からは魔族特有の紫色の血が噴き出しそれによりアティが怯むと同時にガイウスはアイギスを大きく持ち上げ、彼女の腕を大きくカチ上げる。

 宝矛を弾き飛ばすことはできなかったが、これでアティの胴体はガラ空きになった。これによりガイウスは自身の後ろにいたナタクとスイッチして前に出す。


「ソーン・デスパイル………!!」


 ナタクはアティの胴体に掌底突きを繰り出す。それは早さだけで腰も入っていない、本来ならばアティにダメージを与えられず、逆に鎧の固さによって彼の細腕を砕いてしまうだろう。しかしナタクを包む黒い魔力はその事実をナタクの危機と判断、彼の腕から巨大な黒い一本の螺子のような棘を出現させ、アティの体を貫き彼女の体を腰より上から爆散させる。

 人間ならばオーバーキルレベルのダメージ。しかし残ったアティの足はその場で倒れず、意志を持っているかのように動き出しナタクに蹴りを加える。ナタクの棘は自動的に蹴りを迎撃するが蹴りは防御を上から潰すように繰り出されナタクを大きく吹っ飛ばす。幸い後ろにいたガイウスがナタクをキャッチするが、それと同時にアティの下半身は追撃のためナタク達の方へと走る。否

 もうすでに吹き飛ばされた体の部位たちが血と共に戻ってきており、アティの体は完全に再生していた。


「………再生時間が、早すぎる……!!ぐぅ……!!」

「その攻撃は奇襲性こそが最大の武器、正面からくるなら何の問題もない!!!」


 ナタクは自身の体に纏っている魔力、地面に浸透させた魔力から無数の黒い棘を突き出しアティを迎撃するが、アティは四本の誇りと誉れの宝矛(キング・ハーツ)を振るい棘をバラバラにしながら接近していく。僅か数秒で射程距離まで到達したアティは上の腕を大きく振りかぶり下の腕を大きく左右に広げ、それらをそのままナタクに向かって攻撃を繰り出す。

 左右上からの攻撃、かわすことは不可能。しかし防御しきれるかも怪しい攻撃であったが、


「ナタク!!ガードは左右に集中しろぉ!!!」

「!!!」


 後ろからの声に反応したナタクは両手を左右に突き出し黒い魔力の棘を大量に発生させ左右から来た宝矛を何とか受け止める。上からの攻撃にはがら空き状態であったが、後ろにいたガイウスが宝矛をアイギスで受け止めるのであった。


(アイギスはともかくそこの小僧の棘はかろうじて止めれただけ!!このまま邪魔される前に一気に……!!)

射出(ファイア)!!」


 ガードを叩き潰そうとアティが力を込めた瞬間、再び腰部後面から衝撃と鈍痛が発生する。

 レイゼ・テルノーグのスキル「追撃」。二つを上限として打撃を与えた部位に自身の任意のタイミングで再び打撃を発生させることができる。弱点は追撃のための刻印はつけてから3分程度で自動消滅してしまう事。それに加え同じ種類の打撃を発生させることができるとしても、その威力は3分の1程度にまで減衰してしまう事。膂力に秀でていないレイゼが使ってもあまりうまみはないように見えるが、レイゼは自身の高速機動によって破壊力を上げられること、物体に浸透する音魔法、嘆願の声杖(ゴッド・ノウズ)による威力の底上げなどができるため彼女自身気にはしていなかった。

 だが今回に限っては違っていた。意識外からの打撃を食らわせたにもかかわらずアティは怯まず力を加え続けていた。


「………もう種は分かり切っている。来ると分かっていれば、煩わしさ以外何の問題もないわぁ!!」

『それでは、もっと煩わしくしてあげましょう……!!』

「?!!」


 ガイウス、ナタクを叩き潰すためアティがさらなる力を加えた瞬間、後ろから強烈且つ危険なな魔力反応を感じる。しかしアティはここまでの彼らの戦いを見て注意をそらして仕切りなおすつもりであると理解していた。加えてどんな攻撃であっても自分に対して致命打を与えることはできはしない。

 故に一瞬、本当に一瞬意識が後ろ側に向いたのみで視線等での確認は行わなかった。

 しかしかの召喚士にとってはその程度の隙で十分であった。


シュンッシュンッッ!!!


「?!!なっっ………消え、蟲ィ!!!」


 一瞬にも満たない時間で、自分の攻撃を止めていたガイウスとナタクの姿が、水色の魔力を纏った赤い血管のような模様が光り、腹部が自身の体の二倍程度の球状になっている蜂のような手のひらサイズの怪蟲の姿に変わっていた。

 いきなり自分を止め知多存在がなくなって思わず前方に倒れてしまうアティが赤黒い怪蟲に触った瞬間、


 ボォォォォッッッンッッッ!!ブシャァアアァァァァッッッッ!!!


「ギャァァァッッ………?!!!」


 赤黒い怪蟲は大爆発を発生、爆熱爆風でアティの体を破壊する。さらに爆裂の瞬間怪蟲を纏っていた魔力が強酸へと姿を変え彼女の体に付着、傷口にまで浸透し彼女に激痛を与えていく。

 アティが激痛に耐えながらも態勢を整えようとしたそのタイミングで後ろで彼女にささやき、彼女を盾に爆発をやり過ごした謎の存在、水色の魔力を纏った異形の寄生怪蟲ロケットパラサイトは彼女の右首部分、酸によって現在進行形で溶けている部分に口元の針を突き刺し極小多量の卵を注入する。

 何かを入れられたアティはロケットパラサイトを外そうとするが既に卵の注入に成功していたため、ロケットパラサイトは球状腹部の推進剤をすべて放出、その爆発的な推進力のままアティの体を破壊しつつ潜航。

 左腰部から貫通し、アティの体を右袈裟切りの如く断絶させたのであった。さらに追い打ちとでも言わんばかりに大量の寄生怪蟲の幼虫が傷口の断面を中心にアティの体を喰い破って出現、彼女の再生していく体を食べ放題の食事の如く食い荒らしていく。

 激痛に悶えながらもアティは誇りと誉れの宝矛(キング・ハーツ)によって幼虫を除去し再生、何とか立ち上がり、怒りの視線を向けたままガイウス達を迎撃しようとするが、


 その時には既にガイウス達の姿はどこにもいなくなっていた。どうやらあの酸爆発の隙に逃げたようであるがここまで自分に対してやったにもかかわらず、敵前逃亡を行ったガイウス達にアティはため込んでいた怒りを爆発させる


「あのガキ共…………!!私を舐め腐るのもいい加減にしろよ……!!!戦士の風上にも置けぬ卑怯者どもめ……!!

 もう許さん!!遊びは終わりだ!!!テミス・リンカーネイション・リブラァ!!!」

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