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テミス・デュエッロルール


 時間はわずかに撒き戻る。現場近くに到着したガイウス達であるがその時には既にアティが頂纏魔法の鎧を纏い、手に入れた宝矛で動く肉塊とかしているノーブゥルを斬り殺そうとしていた。 ガイウスはすぐに飛び出そうとするがレイゼとオルトラントによって肩を掴まれ止められてしまう。


(ガイウス、落ち着きなさい。状況は正直、想定された最悪を軽く更新しているわ。理由は分からないけど魔将が誇りと誉れの宝矛(キングハート)を使えるなんて……)

(ここは一度ミスト嬢達と合流した方がいい、幸い蟲からの情報ではこちら側からの死者は出ていない)

(だが………!!)


 とそんな問答をしている間にノーブゥルは発狂したような声を上げながら自身をスキルで飛行させ逃亡する。アティはそれを追うことはせず後ろに骸骨の意匠が多くみられる巨大な天秤を召喚する。天秤の左側に人魂が7つ乗り大きく傾いた後アティが4本の誇りと誉れの宝矛(キングハート)を大きく振るった次の瞬間、

 遙か遠く、ノーブゥルが逃げていったと思われる方向から無数の激しい斬撃音と怨嗟にまみれた絶叫の声が響き渡るのであった。

 いやでも分かってしまう、おそらく、ノーブゥルは、もう……。

 それを確信したとき、ガイウスは魔力を高め飛び出していた。


(ガイウス!!あの馬鹿!!)

(レイゼ、アイツがこんな状況で動かないわけがないだろう?予想はできていた。………仕方がない、我々でできる範囲でカバーしよう)

「………そういうわけです。正直頼むのは遺憾極まりないですが、 協力してもらいますよ、お二方」


 そう言ってオルトラントが振り向くとその先には、ローアとナタクがそれぞれ戦闘態勢を整えて立っていた。



 そして場面は戻る。ガイウスのバリアで保護された拳を誇りと誉れの宝矛(キングハート)で受け止めたアティはそのまま蚊でも払うように腕を振るい彼を吹き飛ばすと、そのままの動きで吹き飛んでいったガイウスを追撃、彼の体を誇りと誉れの宝矛(キングハート)で切り裂こうとするが、その瞬間、

 地面から魔方陣が展開されるとそこから巨大なはさみを持った巨大怪蟲デモリッションインセクトがものすごい勢いで出現、出現したときの衝撃波と巨体による重量突撃によりアティの体は上空へとカチ上げられる。

 アティはすぐさま空中で姿勢を整え反撃しようとするが、その時には既に自分の遙か下方にいたデモリッシャーインセクトは腕に付いた巨大なはさみを構えて、すさまじい力ではさみを閉じる。瞬間はさみの先の上部空間の大半にひび割れとともに砕ける音が発生し樹海全てに衝撃波をまき散らしていくのであった。

 デモリッシャーインセクトの数100立方メートル規模の大規模空間破壊魔法。食らえば最後空間ごと破壊するためガード不能の一撃必殺攻撃でありあたりさえすれば魔界出身の魔族や魔将にさえ致命的なダメージを与えることができる。

 ………はずであるのだが。


「うっとうしい………卑怯な虫けらめ……!!」


 全くのノーダメージであるアティは空気に強化魔法を付与して一時的な足場に変え、それを踏み抜いて下に向かって高速落下。デモリッシャーインセクトは口を大きく広げ魔方陣を展開し大量の魔法弾を放って迎撃するがどれもアティを傷つけることができなかった。

 そしてその間にアティは自身の射程距離にデモリッシャーインセクトを捉え四本の誇りと誉れの宝矛(キングハート)を振るう。硬い外殻により守られていたデモリッシャーインセクトであったが斬撃によって迎撃に使ったはさみはバラバラにされてしまう。

 さらにガイウスたちは確認することができなかったがノーブゥルの時と同様の切り口から再び斬撃が発生し、と言う現象を何度も繰り返し10秒と立たない内にデモリッシャーインセクトの体は無数の斬撃によってバラバラにされ死亡するのであった。


「………テミス・デュエッロルール。私の剣が届く範囲……射程範囲、半径約7mより外側からの攻撃は全て無効化される。

 神聖なる我が戦場では、遠距離攻撃などと言う卑怯卑劣なことはできない!!」


 アティは独り言のように自身の魔法について話しつつ、体を大きく翻し後ろから自分に向かってきていたレイゼに向かって宝矛を振るいその体を切り裂こうとする。しかしその瞬間、


 ジュキジュキジュキィン!!!グザッッッ!!!


「………?!!」


 地面からネジのような螺旋状の刃が付いた黒い魔力の棘が地面から突き出す。魔法によって妨害されない範囲から放たれた棘はアティの体を貫き、致命傷を負わせることはできなかったものの、彼女の動きを一瞬鈍らせる。

 その隙にレイゼはさらに指を鳴らして加速、音速に達した掌底突きをアティの顔面に食らわせ仰け反らせる。そして、

 いつの間にか高く跳躍しアティの頭上を取っていたローアは背中から出現している酸の蛇ヒュドラ達の口を大きく広げさせる。


「はい!!隙ありゾンビさん!!アシッド・ヒュドラ・スライミー!!!」


 ローアの詠唱とともにヒュドラ達は首を大きく伸ばしてアティの魔法の効果範囲外へと侵入し大きく広げた口から極めて粘性の高い大量の強酸を吐き出しアティの体を包み込ませる。またかなりの重量があるのかのけぞり体勢を崩していたアティは仰向けになるように倒れてしまう。

 するとこの時を待っていたとばかりに、木々の後ろで隠れていたナタクも地面に手を当てさらに魔力を込め、倒れたアティを串刺しにするようにさらに多量の魔力の棘を地面から剣山のごとく突き立ていく。


「………とどめはお願い、レイゼさん」

「ええ、任せなさい!!」


 レイゼはスカートの裏地に隠していた十字架をバトンのようにくるくると回しつつ、スタンドマイク型のテルノーグ家秘伝継承思器嘆願の声杖(ゴッドノウズ)へと変形させると、レイゼは末端の方を持ち大きく振りかぶる。


(液体の中は空気よりも音が伝わりやすい、出せる威力は現状最高威力!!!)

「ソニック………ハンマーァァッッッ!!!」


 ボッッッバァァァァァァンン!!!


 酸製の粘液に覆われているアティに向かって、ゴルフスイングのように思いっきり叩き振り抜く。その瞬間音による莫大な衝撃波も発生し、アティの体をバラバラにしつつ10数メートル先にバラバラに吹き飛ばしていく。

 どんな生物でもここまで破壊すれば生存不能と思われる攻撃、しかしレイゼ達は一切油断せず吹き飛ばされたアティの方へと向かっていく。


(アティ・ティスーユはゾンビの王、リッチーの魔将!!あの程度で死ぬならイレクトアがあそこまで消極的なるはずがない!!それにあの宝矛があるならば………!!)

「………まぁ、そりゃそうなるわよね」


 3人とも吹き飛ばしてから10秒と掛からず吹き飛ばしたアティの近くに行くことができた。しかしその時には吹き飛んでいた体の部位は強力な力で引っ張られるようにアティの体に終結し接合、既に彼女の体は完全に再生しておりヘルムの下から赤い眼光で彼女達三人をにらみつける。


「なかなかの連携だ。もしも誇りと誉れの宝矛(キングハート)がなければ、もう少し手間取っていたかも知れないが、

 今の一合で貴様らの度合いは知れた。お前達では私には勝てん」

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