魔将復活
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「………どこからがうちらの計画か、やと……?!」
「ああ、より具体的に言ってやろうか?あの馬鹿王子の企てた計画の中に、あれの存在はあったのか?」
ミストは親指を立てて後ろにある魔将の石像を指さす。アージュが作った魔将の石像を覆っていた土のドーム状のバリアは既に破壊され露出していた。
『紫呪』は拒絶の意を示すようにミストをにらみつけるが、彼女の後ろでイレクトアが口笛を吹きつつ『白煙』のそばに剣を持って行こうとしている姿を見ると、葛藤した後、諦めるようにゆっくり息を吐く。
「………ウチはあくまで『針長』……幹部候補兼小隊長でしかあらへん。作戦の全容はわからん。………でも、『白煙』様のご様子を見る限り、その石像はイレギュラーと考えて間違いはないはずや」
だろうな、とミストはわかりきった答えに対し、自分のみに聞こえる程度の声量で独り言を言う。
ミストはヨハンから『白煙』のスペックを聞いたが、もし奇襲に成功した彼が本来のスペックをフル活用できた場合、おそらくおそらく自分たちは為す術なく負けていた、とミストが断じる程度にはすさまじい腕の魔法使いであった。
そんな彼にとって魔法攻撃によって即座に封印が解除されてしまう状態だった石像ありでの戦闘はハンデを超えたハンデ戦であったことは間違いがなかった。
「………つまりノーブゥル王子がおいたのではないとするなら、あの石像をおいたのは今回の試験を企画した国家組織、とりわけあの石像を保管していた騎士団が最有力容疑者ということかね?」
「……べっつに騎士団を擁護するわけじゃないんだけどさぁ。あの件では騎士団はかなりのダメージを負ったの。聖騎士長候補の凄腕騎士が何人も殺されたり再起不能になったしながらやっと封印できたわけ。 騎士団にとっちゃ二度と会いたくもない恐怖の象徴。それをわざわざ試験のギミックになんかするかな?
私としては軍が怪しいかな、あのブタの怪物や魔導具の模造品のこともそろそろ話さないといけないしね♡」
イレクトアは好奇の視線をミストへと向けるが彼女は特に何も言わず、むしろ近くにいたルイスが露骨に表情をしかめながら反論する。
「………軍は他の組織とは違ってこの人魔戦争の最前線に立っています。……少なくとも私が現場で戦ってきた軍人方は皆戦える勇者達を待っていました。それは当然上も分かっています。
こんな戦うための人員を減らすような愚行を軍はしません。少し考えれば分かると思いますが?」
「冗談なのに~噛みついてきちゃってかわいいねぇ♪」
「……だが軍全体はともかくとして魔術省が関わってるのは間違いないんじゃないか?脱出用魔導具の模造品はまだしも、改造された魔獣を作れるのは魔術省くらいだろ?」
エドガーからの発言にルイスは反論できないのか言葉を詰まらせ発言することはできない。がその時、シンシアは大きく拍手を鳴らして全員の注目を取りつつ議論の中に入る。
「ストップストップ!!みんな一回落ち着こうよ!!今やることはこの状態を作った犯人を捜すことじゃないでしょ?!
今はとにかくノーブゥル王子を追っていったガイウスさん達の加勢に行かないと!!」
「………確かにそうだな。……おい、呪術師。お前より強い人員はあと何人いる?」
「……!!……幹部である『短剣』が2名、そして「袖下の刃」の隊長である『隠し鞘』、合計3人や。
………途中から連絡は途絶えたが、『短剣』の二人『水酸』様と『黒棘』様はオルトラントとレイゼと交戦、ガイウスは王子と戦っとるはずや。『隠し鞘』様は分からん」
もう黙っても無駄と考えつつも睨みながら白状し続ける『紫呪』の話を聞きつつミストは指向する。 その後も敵の能力を『紫呪』から聞き出しつつミストは思案する。
『紫呪』の実力は少なくともミストがかつて参加していた前線部隊で考えれば低く見積もって上の下はある。それより上となると今言われた3人はほぼ間違いなく大魔法使いクラスの人員であることは間違いない。
(………ガイウスにはタイマンを強制する決闘スキルがある数による紛れは少ないはず……となれば、先にあのレイゼとオルトラントだな)
ミストは流すような視線でヨハンを見ると、彼もその視線から大体のことを察知したのかよく通る声で全員に指示を出す。
「それではそろそろ行きも整え終えただろうから、そろそろ我々も動こう。
まずハムナス君、ツェン老師、アージュ君、テンゲン殿はここに残ってウィリアム達の見張りと万が一の場合の石像護衛を頼みます。
スレンダーマンズ含めた残りの面々でガイウス君達を助けに行く。最終準備後すぐに向かおう構わないね?」
『はい/おう/了解ッッ!!』
全員が答えた後、彼ら彼女らは自分の武器の留め具や金具を改めて締め直したり、体を伸ばすなどそれぞれ暗殺者達率いるノーブゥルとの最後の戦いに向けた最終準備を行う。ミストは簡易修復魔法が記されている呪符をスレンダーマンズに使用し調整を行っていたところ、彼女のそばにシンシアが近づいてくる。
「………なんだか、すごいことに巻き込まれたよね」
「随分今更だね。まぁ言いたくなる気持ちはわかるけどさ。………正直ハムナス達と一緒にシンシアはここに残ってほしかったけど。分かってるだけで残りの暗殺者共は多量の魔力持ち。ヨハンが本調子とは程遠い以上、広範囲高出力持ちはアンタとルイスしかいない。
頼むよ」
「もっちろん!!私にできることなら何でも頑張る!!任せてよ!!」
はいはい、任せた。とミストはシンシアの笑顔のサムズアップに答えるように親指を立てて見せようとしたその時だった。
シンシアのすぐ後ろにて黄色い閃光が走る。ミストがそれに反応し何かをしようとしたその時には、
すでに終わっていた。
ガァァァァァンーーーーー!!
黄色い閃光、否一直線上に並んだ魔法矢2本は魔将の石像に当たり爆発、そのまま石像を吹き飛ばしその躯体を太い樹木へと叩きつける。
あまりにもいきなり過ぎるその光景に、大半の人間は現実逃避をするかのように固まってしまうがすぐさま動く者達もいた。
その面々、ミスト、イレクトア、ツェン、エドガー、テンゲンは飛び出し石像へと接近する。
(奴は2年以上封印された!!ということはまだ意識ははっきりとはしていないはず!!今ならまだ間に合う、まだ殺せる!!!)
『ハァァァァァァァァァッッッッ!!!!!』
全員自身がその場で出せる近接最大火力を石像に叩きつけるが、多量の爆音と土ぼこりが漂う中、彼女達は気づいてしまう。
手ごたえが、ない。躱された。そして今自分達の後ろには、凶悪な何かがいる。
「………練り上げらえた、いい攻撃だ。覚えがある者もいるが……まぁいい。すまないが、お前達を殺すのは後だ。
殺すのは戦場を穢す、卑怯者を殺してからだ」
『………!!!』
土ぼこりで姿が見えないがハスキーな女性の声の持ち主はそれだけを言うと、凄まじい力を発し地面を蹴り上げて移動、木々をなぎ倒しつつ一直線に何か、彼女が言うところの卑怯者目掛けて向かって行くのであった。
土ぼこりが晴れた後もミスト達はしばらく動けなかったがミストとイレクトアがお互いそれぞれ剣の柄部分で自分の額を叩いて出血、それが気つけとなったのか彼女達は立ち上がる。他の面々もその音によって正気を取り戻したのか続いて立ち上がる。
イレクトアは腰の鞘に剣をしまうと体をしゃがませ、脚部を中心に強化魔法を発動。一足先に飛び出していった。
ミストは立ち上がった足でそのまま『紫呪』や気を失っている『白煙』達の所へと行くと、アトリエ・バックドアから簡易の回復、修復魔術の札を複数枚取り出すと彼女達の前に放り投げそれと共に指を鳴らして彼女達の鎖を消滅させる。
「………な、何のつもりや?!」
「見た通り、お前らはもう自由だ。どこでも好きなところに行け。敵対しないなら見逃してやる。………どうせもうお前らにかけてやれるリソースはもうない。………お前らだって分かってるだろ、状況は最悪中の最悪だ。
魔将が、目覚めた………!!」
しかしミストはこの時はまだ気が付いていなかった。この時はまだどん底ではなかった。
真の最悪は、もうそこまで来ていた。




