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反撃~弱者の一閃

 ヒュリオが声を張り上げた瞬間、彼の背中の黒い翼が一気に巨大化し彼の身の丈の倍ほどの大きさになるとその際に彼の翼から散って離れた黒羽が赤と青が混じった魔力に包まれ石を持っているかのように空中に浮遊すると先端を『白煙』に合わせ、猛スピードで飛んでいく。

 『白煙』はいきなりの攻撃に内心動揺するものの、放たれた羽を躱し強化魔法によって保護された拳で叩いていくが、羽が一瞬彼の体を、かすった瞬間、


 ブシュっカチィンッ!!


 鋭い切れ味のの羽によって肌が切れ地が吹き上がった瞬間に、血しぶきが凍り付いてしまうと言う異常なことが起きたのであった。『白煙』は歯がみしつつ全力で煙を展開し、自分の体を隠す。ヨハンの起こす風のせいで彼らの方にまで煙を浸透させることはできないが、これによって姿が見えなくなるだけでなく観測さえされなればタイムラグなしの瞬間移動が可能になる。


(あの羽……!!しなやかさこそ普通の羽そのものだが、硬度や切れ味は名剣のそれ!!おまけに斬った相手を凍結させる!!やっかい極まるが、ヨハンの風もあと2分もしない内にやむ、そうなれば俺の……!!)

「やれやれ、子供がここまで頑張っているだ………おじさんが無理しないわけには、いかないねぇ!!

 来いノーム!!」


 ヨハンが叫ぶと彼の頭上に土塊に目のようなパーツが付いた精霊、ノームが出現し魔力できた一本の管を彼に接続、彼の右目を黄色く変色させる。魔力枯渇寸前状態のためかなりの負担があるはずであるがそれでもなおヨハンは絞り尽くすかのように叫ぶ。


「スピリット・アース・ドラグマイン!!!」


 ヨハンの後ろに出現した大量の礫岩は龍の形を取ると、大口を開き『白煙』が隠れている煙に向かって突撃する。煙によって瞬間移動ができる『白煙』に取ってはたいした脅威にはならない、と思われたが礫岩の龍が赤煙の大地に衝突した瞬間、炸裂。煙を切り裂き吹き飛ばし隠れていた『白煙』の姿を映し出す。彼は姿を現れたそのタイミングでハムナスとヒュリオの羽は『白煙』に襲いかかる。


「テメエの魔法は誰にも見られてなくちゃ瞬間移動できねぇんだろ?!見つけたぞコラァ!!」

「粋がるなよクソガキども!!ヨハンのバカはもうガス欠寸前!!ここを凌げば俺の勝ちだ!!

 スモーク・リンカーネーション・デス!!」


 『白煙』が叫ぶと彼の背中から白い煙でできた5m強の死神が出現し手に持っていた巨大な大鎌を振るってヒュリオの羽ごとハムナスを切り裂こうとしたが瞬間、ハムナスは近くの赤煙の地面に突き刺さっていた礫岩に右手で触った、次の瞬間

 彼の体が物理法則を無視して一気に右側へと飛んでいく。


「何ぃっ?!!」

(俺は土や砂、岩に触り罠魔法を付けることができる!!さらにスキルの遠触で目に見える全てに触ることができる!!

 これを対象を一方向に吹き飛ばす矢印罠と組み合わせたスキル複合魔法!!)


「その名もトラップ・ピンボールゥゥゥゥゥゥゥ!!!」


 ハムナスは若干声を裏返させながらも猛スピードで弾かれ飛んでいくその速度は、『白煙』も煙の死神も捉えることができない。所見では先読みでどうこうすることは難しいと悟った『白煙』は息を吐き目をつぶると息を吐いて姿勢を低くする。


(羽は全部落とした。追加も今のところない。後はハムナスさえ殺せば全て終わる。展開している全ての煙の動きを感じ取れ。打つべきは後の先……!!)


ユラッ………ボウォ!!!


「!!!そこだぁ!!スモーク・デス・キリングサイズ!!!」


 後ろの煙の一瞬の揺らぎを感じ取った『白煙』は振り向き死神に煙の大鎌を振るわせ、ノコギリ状の刃のような無数の衝撃波を乱射させる。矢印トラップによって飛んできたハムナスは迫り来る死に一瞬おびえたような表情をするがそれを飲み込み左手で掴んでいた何かを前に出す。

 それは死神の斬撃で落とされなかったヒュリオの羽であり、ハムナスが持った瞬間再び魔力を纏い、ハムナスを斬撃波の隙間へと速度を落とさず誘導していく。

 そしてついにハムナスを『白煙』の懐へと導く。


「おおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

「なめるっっっっなぁぁぁ!!!」


 ハムナスは力を失った羽を捨て両手で曲刀を持ち、右袈裟に大きく叩きつける様に、『白煙』は右逆手持ちで煙の剣を生み出すとそれをすくい上げるように、それぞれ力強く振るう。それぞれの武器は一瞬の力比べをするが、次の瞬間。


バキィン!!ぼぉっん!!


 ハムナスの曲刀はへし折れ、『白煙』の煙剣は消えてしまう。両者得物がなくなった状況ではあるが、『白煙』の武器は煙魔法で作られたいくらでも生成可能の武器それに対してハムナスの武器は実体がある。この状況になれば圧倒的に『白煙』が有利である。それを当然『白煙』は理解していた。

 だからこそ、その理解が最後の命取りとなった。彼は再び煙で武器を作ろうとしたその時、見てしまう。

 ハムナスが、全く損傷のない曲刀を薙ごうとしている姿を。


(………なぜ、刀が直っている。こいつが使える魔法は土限定の罠魔法と必要最低限度の無属性魔法だけのはず!!修復魔法なんて使えるわけ………!!いや、待て……まさか!!)

「その、武器はぁ!!」

「おおおおおおあああああぁぁぁぁッッッ!!!」


 『白煙』の叫びを無視しハムナスは自身の曲刀、型の継承思器を振るい一閃、『白煙』の腹部から血飛沫を吹き上がらせるのであった。



 ハムナスの生まれ故郷サクバは永遠とも思える砂漠地帯ぐらいしかない不毛の土地。本来統一国的には自分達の領地にする価値などない地域ではあるが、それでも統一国は彼の地を狙い続けている。 その原因はダンジョンである。

 ダンジョンとは建造物や遺跡に魔力がたまり魔族魔獣が生まれ住み着いている危険地帯のことである。ダンジョンから生まれた魔物達の体内には不純物が固まってできた宝玉や魔的価値の高い物質が生成されてたり、死んだ冒険者や魔法使いの遺品がダンジョンの魔力に当てられ継承思器として遺されていくことも多い。それを目当てにダンジョンにはいる人間は想像以上に多いのである。

 統一国の領地にもダンジョンは複数あるが、サクバはその数が段違いであり、ハムナスも冒険者として既に20を超える大規模ダンジョンを踏破し、その際にあれを手に入れた。


『ハムナス!ほれ今日の分配な!』

『これは……曲刀か?でも鞘もねぇけど……』

『こいつに鞘なんていらねぇよ!いいかよく聞けこの刀だけどな……!

 剣術が苦手なお前にもぴったりの武器だぜ!』



ブッシャァァァァァァッッッーーー!!!


(修復魔法が宿った……継承思器……!!グレードはかなり低いがそのせいかハムナスの魔力になじんで全く気づけなかった!!

 だがぁ!!!)


「斬られたのは腹の薄皮一枚!!最後の最後でポカしたなぁクソガキィ!!!」


 ハムナスに腹部を斬られたことで血しぶきを出した『白煙』であるがあの一瞬でほとんど反射的に飛び退けたおかげで内臓にまでダメージを負うことはなかった。『白煙』は傷口を魔力で補強し右手に煙の短剣を生み出しハムナスを突き刺そうとする。既に渾身の力で曲刀を振るい隙だらけのハムナスにこの攻撃を避けることはできない。焦燥に包まれた彼の表情がそれを証明している。

 だがその攻撃の一瞬、『白煙』の意識はハムナスのみに集中された。


「………!!!今だ……!!!」

「よぉーし!!まかせて!! フローズン・フェザービット!!」


 ヨハンの合図とともにヒュリオは叫び巨大な黒翼をはためかせ赤と青が混じった魔力を纏った羽を煙に向かって飛ばす。略式詠唱込みで放たれた黒羽は先ほどとは比較にならない速度で飛んでいき複雑な軌道を描いた後ハムナス達が戦っている煙の中へと突入、そして。

 意識が逸れてしまっていた『白煙』の体やその周辺に突き刺さり凍結させていく。体のほとんど凍結されてしまい『白煙』は化身魔法を維持できず煙の死神は霧散してしまった。


「がっ………?!!」

「ハァハァ……!!た、助かったぁ……!!」

「にいちゃん!!だいじょうぶ?!」

「なんとかなぁ!!ただこの試験で死にかけてばっかなんだけど俺?!」

「死闘の後でそれだけ騒げるなら大丈夫そうだねぇ。 ………と言うわけで我々の勝ちだ。この結界を解除してもらうぞ、ウィリアム」


 白い煙が晴れハムナスのそばにやってきたヨハンは鋭い目線を凍らされ動けなくなっている『白煙』へと向ける。『白煙』は数少ない動かすことができる部位である眼球を動かしヨハンを睨む。


「そんな冷凍状態で睨まれても怖くはないねぇ。さっ私も限界だし早く結界を解いてくれ」

「そんなことさせなくたって、こいつを殺せばこの結界は解けるだろ?!」

「これはただの結界魔法じゃない、創世魔法だ。発動者が内部にいれば存続し続けるもう一つの世界。多分こいつを殺してもこの魔法は解除されない。

 ウィリアムに解除してもらえないと私たちは一生閉じ込められたままだ」


 というわけで早く頼む、とハムナスは軽く言うが聞いていたハムナスは顔面を蒼白にさせる。つまり『白煙』は自分達をこの世界に閉じ込めた時点でほぼ勝ちであったと言うことだったのだと理解してしまった。

 しかもこの状況下で『白煙』が自分達を出すことなどあり得ない。これでは今までの自分達の奮戦は意味がなかったではないか、と思ってしまう。

「………俺達の、扱いは……?」

「法律における重要捕虜と同等の扱いをさせてもらう。また了承後以降からは無意味にアンタ達に危害を加えないと約束する。………それに今後のことを考えたら我々と居るのはアンタ達にとって不利はないと思うがね?」

「………はぁ、

 ………わかった。降参だ」


 『白煙』は観念したようにゆっくりと息を吐いた瞬間、赤い煙でできていた世界は途端に霧散し始め瞬きをしない内に彼らは元のの樹海へと戻ってくるのであった。 元の場所では既に『紫呪』を含めた『針』達の制圧は終わったようであり、彼らは全員麻痺の呪いで動けなくなった上で鎖のような物でぐるぐる巻きにされ、戦力になっていた木偶人形達はどれもバラバラにされていた。

 体を休めていたミスト達も『白煙』の球状赤煙がなくなりヨハン達が出てきたことに気がつく。


「!!みんな!!ヨハン様達が出てきたよ!!」

「宮廷魔法使い殿……!!ご無事で何より……!!」

「……ええ、しばらくは戦えませんがねぇ……」

「ヒュリオ君!!大丈夫か、怪我はないか?!」

「だ、だいじょうぶ……くるしいよばっちゃん……!!」

「あ、ハムナス君じゃん元気~♪」

「目立った外傷はなし。アンタって思ったけど悪運は強いよね」

「お前等さぁ!!チームメイトをもう少し心配しろよもぉ!!」


 帰ってきたヨハン達にミスト達が対応している中、凍結状態で拘束された『白煙』の姿を見て洗脳状態から回復した『紫呪』は拘束されながらも騒ぎ出す。

 大魔法使いである『白煙』が負けたことすら彼女にとっては驚愕であるというのにまるで生死が分からないような凍結状態になっている姿をもいてしまえば、彼に恩がある『紫呪』は平静を保つことなどできない。


「『白煙』様?!『白煙』様は、ご無事なんか?!」

「……死んではいないよ。どうやらやっと気絶したみたいだね?………相変わらずガッツのあるおっさんだよ。

 ……見ての通りだが、君達のボスは捕まえた。君達も無駄な抵抗はしないでこちらに協力してほしいね?」

「協力やと………!!」

「君達にはいくつか確認したいことがある。まず一番大きな所から聞こうかね?」

「そうだね多分同じことだけど私も一応聞いておこう」


「「一体どこからが、ノーブゥル王子/あのバカ王子の計画だったのかね/だ?」」

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