表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/167

反撃~圧倒の勇者達


 時間は僅かに巻き戻り、勇者15名が食事中。ある程度皆落ち着いてきたことを見計らい、ヨハンは切り出す。


「諸君。少し話は変わるが、自分がどういう魔法が使えるか、勇者紋のスキルを持っているのか少し話さないかね?」

「………なんで、そんなことを話さなければならない」

「まぁもっともだね、エドガー君。ただ君たちも分かっている通り魔将の問題が解決したとしてもそれで終わりじゃない。現在のこの樹海に徘徊する魔術改造兵をどうにかして神輿を所定の位置に持って行かなければ試験には合格することはできない」

「ああ~……!!そういやいろいろあって忘れてたな……!!」

「あの神輿を1チームで運ぶのは不可能、だったら生存率と合格率を上げるためにも私達はお互いに理解を深めなければいけない。どうかね?手の内をさらしたくないというのなら概要だけでも構わない」


 ヨハンの言葉に勇者候補たちはそれぞれ顔を見合わせつつ様子を見ていたが、目立ってチームの存続に対して反対意見を取ってくる者はいなかった。

 それを確認したヨハンは頷くとまずは自分から話を始める。


「それじゃあまずは言い出しっぺの私から話させてもらうね?

 私、ヨハンは魔法学園の専門書に載っている魔法なら大体なんでも使える。スキルは自分が言語であると認識できる音や文字を理解することができる『翻訳』だ。このスキルのおかげで精霊と契約し精霊魔法も使えるようになった」

「………相変わらずとんでもないね。基本的殆どの魔法使いの上位互換じゃん」

「ははは、流石に属性適性持ちには出力で劣るけどね?それじゃ次は………

 アージュ君、お願いしてもいいかね?」

「え、えええ………?!」


 ヨハンから話を振られたシスター服の小柄茶髪少女アージュは大きく慌てる。また周りを見ると他の面々も彼女に視線を向けており、それを認識した彼女は顔を真っ赤にしてしつつ口元で素早く詠唱し、自分の背後に土塊でできたゴーレムを召喚する。ゴーレムは胸部腹部を展開すると、アージュは逃げ込むようにその中へと入り込み展開していた部位は元に戻る。それから約10秒間息を大きく吸って吐く声がゴーレムの中から響いていたが。


【私は土属性の魔法を使います。主に土や岩による範囲攻撃を戦闘の主軸としています】

「え?!うそ?!このまま話を始めるの?!」

「……まだあがり症治ってないのね。というか、以前よりもひどくなってないかしら?」


【………そして、私が女神さまより与えられたスキルですが】



(……敵が、人形が少なくなったことで攻撃の密度が減った!!これなら……!!)

【スキル発動……「地導」……!!】


 白い煙に包まれながらゴーレムに包まれたアージュはしゃがみ込み、岩肌でできた両掌を地面に設置し体から暖かな光を発する。

 アージュ・ストラインのスキルは「地導」。静止、瞑目状態且つ地面に3点以上設置している状態の時、半径800mの範囲にいる地中、並びに地表にいる存在全てを探知することができる。魔力を消費せず超広範囲を索敵できるのは強みであるが、発動中は完全に無防備となってしまうためチームで動いている状態、もしくはアージュの様に常時防御系統の魔法を発動できる魔法使いでなければ十全に使いこなすことはできない。さっきまではエドガーを無数の敵から守らなければならないため使えなかったが、今なら使うことができた。

 またこの力は魔法ではなく女神が与えた異能、『白煙』の攪乱煙を貫通し戦場に置かれている魔将の石像の位置を割り出す。


【見つけたぞ………!!グランド・ドーム!!】


 アージュが叫ぶと共に魔将の周りの地面が盛り上がり半円球状のドームを形成、石像を包み込んでしまう。魔法の発動させたアージュは普段のあがり症な様子から一転よく通る声で全体に指示を出す。


【石像は私が保護しました!!どんな攻撃にも耐えて見せる!!

 この煙を吹き飛ばしてください!!】

「はっ、やっとか」

「オッケオッケ♪任しといてよ♡」

「さぁ行こうかのぉ!!」


 アージュに呼応するように3人の勇士が動く。

 ミストは聞こえないレベルの小声で素早く詠唱を行うと、彼女が持っていた剣、ヴォーパルの紫色の魔力莫大な量になっていく。

 イレクトアはしゃがみ自分の剣を地面に突き刺すと、柄からきしむ音が響くほど力と魔力を込めていく。

 ツェンは自分の目の前に大きな応龍のの形状をした魔力を生み出すとその龍に自らとぐろを巻かせ球状に変化させたうえでビー玉サイズにまで圧縮。さらにそれを自分の右手で握りしめさらに圧縮させる。

 3人の準備は約数秒で完了し、それは放たれた。


「拡張斬撃、ヴォーパル・デリート!!」

「エンチャントアタック、グラウンド・デストロイ!!」

「仙龍王拳・王ノ鳴響!!」


 詠唱により効果範囲が拡張され実体のない煙にまで対象にすることができるようになったヴォーパルから繰り出したミストの斬撃。地面に過剰な強化魔法を流し、それによって生じた破壊エネルギーを地面に伝播させ炸裂させるイレクトアの魔法。そしてツェンによって放り投げられた魔力のビー玉が上方で拡散し龍の咆哮のような衝撃波が同時に繰り出された瞬間。

 煙は消し飛び衝撃波によって『紫呪』以外の『針』たちや残りの人形は上空へと吹き飛ばされてしまう。そこまでの威力、本来はミスト達ですら危ないはずであるが、全員この規模の衝撃が発生することを読んでいたのか動けない者達を庇いつつ全員耐えていた。また上空へと飛ばされた『針』達や人形はテンゲンの背中から生えた金色の魔力の手によって捕まれ拘束されてしまった。

 これによって拮抗状態から形成は完全に逆転、『白煙』が残したサポート用の煙もなくなった『紫呪』一人に対して勇者たちはそれぞれ武器を構えたり手を前に出す。


「終わりだ呪術師。あの場で煙に逃げ込んだんだ、あの人形合体以上の大技はアンタにはないんでしょ?投降してルイス達に掛けた呪詛を解け。そうすれば命までは取らない」

「………舐め腐りよって……!!………でも、潔よう認めたるわ。『隠し鞘』様や『白煙』様、あのガキ二人がおらんとお前らとは勝負にならん……!!でもなぁ忘れとらんか?

 呪術師に、勝ち負けなんぞ耳カスほどの価値もないわボケェ!!!」


ジュゥゥゥアアアアアッッッ!!


 『紫呪』の体に紫色のヒガンバナの模様が浮き出ると共に地面に同じく彼岸花の模様が描かれた巨大な魔方陣が生成。その上にいたミスト達にも、ヒガンバナの呪印が体に生じ、激痛によって彼女達の表情を歪ませる。


「自滅覚悟の大規模呪詛魔法……!!防御態勢を取っていたはずのシンシアちゃんにまで効果が及ぶとは……!!」

「ハハハハ!!ウチを殺して呪詛の効果は消えん!!勝負はアンタ達勝ちやが、試合はウチの勝ちや!!」

「させるかよ、スレンダーマンズ……!!」


 全身にヒガンバナの呪いを付与されたミストは痛みに耐えつつも右手を前に突き出しスレンダーマンたちに指示、それぞれ五方向から『紫呪』に向かって走っていく。魔導具であるスレンダーマンは対生物に特化した呪いに一切の影響ないが、そんなことは『紫呪』にだってわかっている。

 『紫呪』は前腕がなくなった左腕を掲げるとテンゲンによって捕獲されていた人形達がバラバラに崩壊し彼女の物とへ集まると再構築され、『紫呪』の半身ほどの大きさの巨大な腕に変形、

 黒みがかった紫色の魔力のをまき散らしながら大薙ぎに振るいスレンダーマン達を吹っ飛ばす。


「安心せいや!!どうせこの魔法を使った以上ウチも死ぬ!!お前らの主が死んでからゆっくりと往生したるから待っとれや!!」

(今の攻撃で鉄人形共にマーキングを付けた!!これで不意打ちは効かん!!加えて奴らは呪いで動ける状態やない!!

 ………最善とは言えんが、『白煙』様……後はお任せしm)


 勝利を確信した『紫呪』であったが、それを裂くようにミストの心が通った声が響く。


「………四肢以外は傷付けんなよ、野郎ども」


ザン、ザン、ザン、ザアァン!!!

ブァッッッ!!!


 その瞬間、倒れていたはずのカウンとエドガーからの予想だにしない方向からの強襲、そして斬撃によって『紫呪』の義手は破壊され彼女はその場に倒れるのであった。


(なんっっっ………で?!何でこいつら動ける?!もうとっくに衰弱しきって死んでもおかしくないはずなのに!!)

「最初はいきなり来たからさすがに面を食らったがのう……!!」

「痛みなど……順応さえしてしまえばどうということはない!!」

「こんの………ど腐れ共がぁッッッ!!!」


 義肢を破壊された『紫呪』は最後のあがきとでも言わんばかりに口を大きく開け、自分の舌を思いっきり嚙み切ろうとするが、口が開いた隙にエドガーが彼女の口の中に手甲に包まれた手を差し込み自殺を阻止。さらにカウンも加わって暴れる彼女を拘束する。

 そして、その隙に痛みによって表情をゆがめながらミストはゆっくりと近づいていく。その手にはアトリエ・バックドアから呼び出したと思われる一枚の呪符があった。


「………認めてくれた礼だ、じゃじゃ馬女。こっちも潔く認めてやる。………お前の心を折って呪術を解かせるのは……無理だ。

 だから敬意を払って………私の禁じ手を使わせてもらう」


 そう言ってミストは呪符を『紫呪』の額に張り付ける。すると激しく抵抗し暴れていた『紫呪』であったが突如怖くなるほど静かになり、動きを止めてしまう。彼女の瞳にも意志は見られなかった。

 洗脳魔法。相手の精神に干渉し相手を好きなように動かす統一国においてもあまり好まれていない外法扱いを受ける魔法。何より1年前ミストもキリアであった頃にこれを食らい、強姦されかけた過去があるためその時の思い出込みで可能であれば使いたくない代物であった。

 ミストは苛立ちの表情を浮かべつつゆっくりと息を吐くと口を開き命令する。


「……お前に命令する。今すぐ私達の呪詛を解け。後、可能であればお前の仲間達に動きを抑制する程度の呪詛を掛けろ」

「………了解、しました。彼岸ノ誘イ……解。……丑刻呪法・魔日車」


 『紫呪』が短詠唱を行うとミスト達の体に浮かんでいた彼岸花の呪印が消失し激しい痛みも引き始め全員その場で座り込んで粗目の深呼吸をする。また「袖下の刃」の『針』と『紫呪』の体には向日葵を思わせる呪印が出現すると彼女達は苦悶の声を上げる。どうやら現在彼ら彼女らは動くのが難しい状態のようである。


「………テンゲン。そいつらの拘束はもう外してもいい。もう動けないし動けたとしてもそのざまなら十分返り討ちにできる」

「あれぇ?ミストちゃん殺さないわけ?流石にそれはちょっと甘すぎない?」

「……別に甘さじゃねぇよ。こいつ等には質問して確かめたいことがある。それに……」


 ミストはイレクトアからの質問を流しつつ、赤い煙でできた巨大な球体上の結界に目を向ける。ヴォーパルを持った状態で何度も瞬きを行い結界をヴォーパルの致命線を出そうとすることができない。

 これが表す事実は目の前にある。それはこの結界が少なくとも現状で破壊不能であるということ。そして自分達はこの結界の中で発生していると思われる戦いに一切の干渉ができないということ。


「………そいつのせいで全員少なくないダメージを受けた。………仮に、この連中のボスがハムナス達を殺して出てきたら、十二分に巻き返される。

 そのための備えは、持っておいて損はない」


 ミストの発言に他の面々も神妙な顔をしながら赤煙の結界に視線を集中させ、そして心の中で祈る。


 『白煙』に連れていかれたヨハン、ハムナス、ヒュリオの無事と勝利を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ