反撃~呪術師のコンプレックス
ミストの宣言とともに彼女の右手首に付いているアトリエ・バックドアが光りそれとともに5体ものスレンダーマンが出現する。さらにそれらはそれぞれ魔導具を右手に装備していた。
スレンダーマンの一体、峰部分に金属のカバーパーツが付いている分厚い黒い刃が特徴的な鉈のような、魔導具を持った個体は人形の化け物によって振り回される棍棒に向かって鉈による一撃をたたき込む。大きさも重さも全く違う武器通りの攻撃ではあったが、鉈は一切のひび、刃こぼれすら発生せず、棍棒を一方的に破壊する。
人形の怪物は腕から紫色の有刺鉄線を生やし崩れる棍棒を無理矢理つなげようとするがノコギリ状の刃が付いた鎖を高速回転させ切断力を上げている変則的両手剣型魔導具を装備したスレンダーマンが飛び出し伸びてきた有刺鉄線を切り裂く。切り裂かれた有刺鉄線は青い炎が発火し焼き消えてしまった。
人形の怪物が炎にもがく間にかつてミストが使っていた回転する魔力刃を備えた棍棒型魔導具、ステイクスピナーを装備した個体、鞄の取っ手が付いた表面に丸いくぼみが複数見られる鉄球型魔導具を装備した個体、合計2体のスレンダーマンが人形の怪物の両サイドに回り込んでおり、それぞれ強烈な打撃攻撃を加え怪物の体に強大なダメージを与える。
そして、修復に力を注いでいたせいで硬直していた怪物を跳躍し上を取っていたスレンダーマンは手に持っていた持ち手が付いた金属筒の先端を怪物へと向ける、その瞬間先端から銀色の液状の物質が勢いよく発射、それは複雑怪奇な軌道で動き鞭のようにしならせ人形の怪物に直撃、そのまま内側から怪物の体をバラバラに破壊するのであった。
この間約20秒以下、『紫呪』に指示の暇を与える暇すら無く最悪の木偶人形を魔術の鉄人形が破壊したのであった。
「そんな、バカ……な……?!!!」
「……スレンダーマンは元々量産して軍の兵力として卸す予定だった魔導具。1体だけの訳がないでしょ?……魔法連からの圧力で使用禁止の命令を受けて失敗作の烙印を押されたけど、
そんなの私には関係ない、使えるもんは効率的に使わせてもらう」
スレンダーマン。14歳当時のミストの格闘術、剣術、砲術を約90%トレースしたそれは「失敗」傑作達の中では唯一再現性、コスト、量産性、全ての成功作条件をクリアできた最高クラスの魔導具であるが、軍の戦力強化の危険性から禁忌魔術に指定された、悲劇の魔導具。
しかし悲劇と憐憫するにはその武力は圧倒的。術者である『紫呪』の乱心や隙を突いたとはいえたった5体で大型ドラゴンクラス以上である人形の怪物を難なく撃破してしまった。
(量産型……つまりこの5体を倒してもまた追加で出てくる可能性があるちゅうことか?!と言うかさっきも思ったがなんでこいつ魔導具庫を使える?!封印したんちゃうんか?!
どうする、残りの木偶も融合させてコイツらを倒す?!『白煙』様が戻るまで逃げに徹する?!一体何をどうするのが正解なんや?!!)
(悩んでんなぁ、あのお嬢。悪いけど考える時間は与えない)
「スレンダーマンズ!あの女を捕獲しろ!!むやみに痛めつけるな、殺すなよ!!」
ミストの指示を受けたスレンダーマンズはそれぞれ『紫呪』へと向かって走って行き、その姿を見た『紫呪』は歯がみしつつも後ろへと下がる。
どうやら彼女は逃げを選んだようであった。
「だが忘れたか?!お前はこの鎖でつながって……?!」
ミストはマナバスターから伸びた鎖を引っ張り煙の中に隠れた彼女を観測しようとするが瞬間、力が抜け何かが鎖の輪とともに煙から飛んできてしまう。飛んできたそれを見てミストは思わず驚愕してしまう。
その正体、それは『紫呪』の左腕だったのである。ミストは鎖を引っ張り、鉄輪に付いていた彼女の腕を確認する。それを見たさらに驚愕と困惑に目を開いてしまう。
(……これは、偽装魔法で肌を再現しているだけであの木偶共と同じ……?!またまた拘束できた左手が義手だったってことか、いやしかし……?!)
と若干混乱しながらもミストは周囲を冷静に警戒する。煙に隠れられた以上今のままでは相手からなんらかのアクションが無ければ捉えることはできない。
当然それは煙に隠れた『紫呪』にも分かっており、彼女は憤怒の形相でミストを睨みつつも攻撃を加えない。『白煙』の魔法がある限り『紫呪』は無敵。このままやり過ごすこととしたのであった。
(ウチの秘密が……あんな奴にバレるなんて……絶対に許さん、殺してやる。……と言いたいがこいつがウチよりも強いっちゅうのは、事実。『白煙』様を待ち確実に潰す!!)




