反撃~『失敗』傑作 スレンダーマン
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白き煙に包まれる魔将の石像地。『紫呪』が使役する木偶人形を融合させ生み出した怪物五重混呪兵が束ねられた5本の刀をミストに向かって叩きつける。五重混呪兵の攻撃方向の先にはシンシア煙を晴らし全方位防御を行っているシンシアと呪詛の痛みによって動けなくなっているルイスの姿がある。故に回避は不可能、ミスト自身が受け止めるしかないと言うこの状況、その状況でなおミストの余裕は崩されなかった。
「…………いいだろう、少しお前の技術の先を見せてやる。
……来い、「失敗」傑作、スレンダーマン」
ミストが右腕を前に出し右手首に撒かれている魔導具、アトリエ・バックドアが光ると3m弱の青色の何かが召喚され、五重混呪兵の腕を受け止める。
ミストによって召喚された物体、それは形状そのものは人型の魔導具、ではあったが頭部は菱形状のバイザーによって覆われた一つ目があるのみ、体は必要最低限度まで削ったがごとく華奢で胴体部にある各パーツからの生み出されている魔力を各部位に行き渡らせるための管も丸見えとなっていた、また各四肢パーツの関節は人間の物よりも関節が一個ほど多く球状になっており、手の指パーツは非常に鋭く長かった。
総じて細長く、強度の低そうな姿であるが、それでなお5台の呪詛木偶が合体した怪物の攻撃を悠々と受け止めいる姿に『紫呪』は驚愕する。
「な、なんでそんなひょろひょろ人形が、五重混呪兵の攻撃を受け止められるんや?!いやそれ以前になんでお前は呪われてへん?!コイツの触れればその時点で彼岸ノ誘イが発動するはず!!」
「やっぱそういうタイプか。……こいつは「失敗」傑作スレンダーマン。軍の兵力増強のために私が作った自立人形型魔導具。こいつは起動させた私がその時点で味方と認識している存在反応以外の敵正反応を確認した場合、それを迎撃するようにしている。それ以外は私とのつながりは一切ない。
コイツはただ、その命令に従って動いてるだけ。どうやったら私を呪えるんだ?」
「………?!」
『紫呪』の呪術は呪う条件を満たした存在を物理的魔力的なつながりを通じて呪う。仮にアージュが遠隔操作しているゴーレムを使おうがオルトラントが怪蟲を使おうが、その魔力を通じて彼らを呪う。しかしこのスレンダーマンは違う。ミストからの一瞬の命令受諾後は大気の魔力を原動力に、エネルギーに破損するかミストがキーワードによる停止命令を受けない限り自立して動き続ける。そこに一切のミストとのつながりはない
そして呪術は、動くだけの無機物であるスレンダーマンを呪い殺すことはできない。
(………油断しとった……コイツとウチは……!!相性最悪!!)
「お前の敗因はただ2つ、呪術師のくせに前線に出てきたこと。そして、
呪術師の天敵を敵に回したことだ」
『*******』
スレンダーマンは力を加え五重混呪兵を後ろに突き飛ばすと、爪に魔力を集中させ合計10本の魔力刃を生み出し振るい、五重混呪兵の体を一瞬にしてばらばらにする。五重混呪兵は砕けた瞬間体から大量の紫の瘴気が生じスレンダーマンへと襲い掛かるが少しの間纏わりつくもすぐに霧散してしまう。
「耐性がない人間じゃ2,30回は死ぬ高等呪術だろうが、こいつには効かないよ。意志も魂も当然痛覚だってないんだからな」
「…………何勝ち誇っとんねん勝負はここからやぁ!!!」
『紫呪』が再び大きく金槌で空間を叩き鳴らすと、煙の中にいた白装束で偽装していた傀儡の半数以上が彼女の元へと向かっていく。
流石にそのあまりの数に彼女のそばにいた『針』の一人が進言する。
「『紫呪』様、流石にあの女一人に戦力を集中させるのは……!!」
「何をいっとんのや!!わからんか!!あの魔導具人形は相性最悪!!でも逆に言えばあれさえ破壊できればもうコイツらにウチらに勝つ方法は残ってへん!!
どれだけリスクを負ってもなおこいつを潰すんが最優先や!!!」
『紫呪』が息巻いているウチに木偶人形達は呪力によって混ざり合いもはや人型の形を維持していない這いつくばる巨大な人形の化け物の姿へと変貌する。人形の化け物は異形の巨腕で自身の体半分ほどの大きさを持つ、無数の刀が突き出た棍棒を取り出し、振りかぶる。
対してスレンダーマンは気にせずに長大な腕をクロスさせるように組み、大きく振るう。それとともに爪部分から薄く鋭く長い魔力刃が放出され人形の化け物の体を切り裂いていくが、壊れた内から人形の内部から紫色の有刺鉄線が飛び出し体を無理矢理つなぎ、
何も問題がないとでも言わんばかりにスレンダーマンに向かって棍棒を叩きつけ、一撃で破壊、爆散させる。
ミストはマナバスターに装備された小盾から魔力の盾を生成し、衝撃波から体を守る。
「………スレンダーマンを破壊する膂力……とんでもないな」
「どうや!!これがウチの、アベノ家直伝の傀儡術の力ぁ!!魔術などウチの敵や無いわダボがぁ!!!」
「………アベノ家……。お前、ヒガシマから亡命してきたって言う貴族の家の人間か?」
ミストの言葉を聞いた『紫呪』は目に見えて動揺し目を見開く。その間にミストは右手に持っていたヴォーパルを地面に突き刺しフリーにし、右手を後ろに回して後ろにいるシンシア達に何かしらの合図を送る。 それは目の前の呪術師を打ち倒すために必要な作戦の指示、そのためバレさせないためかミストは話を続ける。
「5年くらい前か?ヒガシマの権力争いに負けたアベノとかいう間抜け貴族が、ヒガシマの機密を手土産に統一国に来たとか言う話を聞いたことがあるんだよ。……どうしてそんな一族の娘さんが暗殺者なんてやってる?何、私が魔族との戦争に行ってる間に没落したわけ?
亡命先でまで没落するとかバカじゃん」
「こん、のぉぉ!!無礼者がぁ!!将軍家に仕えてきた誇り高き名門、アベノ家を虚仮にしよってぇ!!!
末代まで祟り殺したるわぁ!!!!」
怒り狂った『紫呪』は何度も乱暴に金槌で空間を叩き人形の化け物に指示、化け物は巨大な棍棒をむやみやたらに振り回しながらミストへと迫る。スレンダーマンが破壊された以上ミストには打つ手なしかと思われたが、ミストはまっすぐ右手を伸ばし宣言する。
「コール、スレンダーマンズ各魔導具を持ち、一斉出撃!」




