三歳
姉さまが倒れたあの日から月日は流れ、私は三歳になった。
一時はどうなることかと思われた姉さまだけど、今ではすっかり元気になり、母さまの指導で機織りなどを習っている。
兄さまはというと去年から学園に通うため、寮に入っている。
夏の長期休暇の時しか帰ってこないので、すごく寂しい……。
まあ、仕方ないとわかっているけど。
母さまと父さまは相変わらずかな。
いつも仲良しで優しく、時々厳しい。
この二人の子供に生まれてよかったと思う。
そして、大きな変化が二つあった。
「お嬢様、お食事の時間です」
「あーい」
「よいご返事です」
一つめは、かいがいしく私の世話を焼いてくれる二十歳そこそこの女性。
彼女はなんと、女中さんなのだ。
【ビーナ 鹿人 女】
【HP38 MP25】
【状態:健康】
【スキル:礼儀作法 短剣術B+ 気配察知A- 投擲B- 隠密】
【加護:無し】
いろいろと突っ込みどころのあるステータスだ。
まず、種族のこと。
ビーナは鹿人という種族の獣人らしい。
ビーナの外見は濃いブラウンの髪を後ろで一纏めにしていて、切れ長の瞳は明るい琥珀色。
かなりの美人さんで、いつも微笑んでいる。
そして頭に鹿の耳が生えている。
ピコピコ、と動く耳に私は出会った時から興味津々だけど、未だに触れていない。
残念。
鹿人のことはあまり詳しく教えてもらっていない。
数の少ない種族らしいとは聞いたけど、それだけだ。
もっと仲良くなったら、教えてもらえるかな?
そして、スキルのこと。
正直、最初は暗殺者かなにかかと思って、怯えまくった。
ただの女中が持つスキルじゃ無いよね?
でも父さまが信頼しているようだし、真面目に仕事してくれているので、今は一応信用している。
どうも彼女は父さまのお兄さんのところから来たらしい。
父さまのお兄さん……私のおじさまは何者なのだろう?
まだ私にはわからないことだらけだ。
「美味しいでしょうか? お嬢様」
「あい!」
「それはよかったです」
用意された食事をもりもり食べる私を、微笑んで見つめるビーナ。
新しい私の家族。
謎の多い女中さんだけど、これからも仲良くやっていけるといいな。
そう思っている。
そして、二つめの変化。
それは私のステータスだ。
【ベル・ロシュフォード 人族 女】
【HP9 MP1560】
【状態:健康】
【スキル:鑑定 言語理解 アイテムボックス】
【加護:小獣神の加護 精霊神の加護】
なんと、姉さまを助けようとして光にお願いした後、MPが四桁になったのだ。
これはやばいような気がする。
おまけに、加護というものが二つもくっついている。
いつからくっついているのかはわからないし、どういうものなのかもわからないけど、これも人目に触れたら危険なものなんじゃないかな……。
ううう、隠蔽スキル!
隠蔽スキルが欲しい!!
私は美味しいごはんを食べながら、頭を悩ませるのだった。




