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6 閉ざされた出口

「ということは、魔装の展開を解除しないと、私達はここに閉じ込められたままってこと?」


 那谷は「げっ」と顔を歪めたまま、遊佐と薬師寺を交互に見た。


「魔装を解除するには、どこから展開されているのか、誰が展開しているのかを突き止めなくちゃいけないわよね? でも、どうやら音楽室の方にもアンデッドがいるみたいだし、おまけに転落事故もあったし……もうメチャクチャよ! 何から解決すればいいのよ。遊佐君、君ならどうする?」


 那谷が問うと、他の皆も一斉に遊佐を見た。


 遊佐が学年イチの秀才であることは、この星道高校の生徒なら誰でも知っている。

 三年生、それも特に優秀な生徒で固められた生徒会役員の中に、唯一の一年生として参加している遊佐の能力の高さは校内でも有名だ。


 校内にアンデッドが現れ、おまけに大型の防御型魔装で全員校内に閉じ込められてしまったという異常な状態であっても、学年イチの秀才であれば打開策があるかもしれない。皆そう期待して遊佐を見る。


 実は遊佐も皆と同様に内心はパニック状態だったが、冷静を装いながら、一人一人の顔を見渡して言った。


「みんな、一旦落ち着きましょう。校内に他にもアンデッドがいるかもしれない状況で、あまり個人行動はしない方がいい。ここにいる皆さんは、一旦安全な教室に入って待機してください。防御型魔装については一旦後回しにしましょう。俺達生徒会役員はまず職員室に行って、有線の固定電話から自衛隊に連絡を取りましょう。どういう訳か携帯は繋がらないみたいですし」


 遊佐は携帯が繋がらない理由は混線ではないのではと考えていたが、この場で余計な混乱を招くのは避けたいと思い、それは口にしなかった。

 職員室に行ったところで、固定電話が使える保証もない。けれど、生徒である自分たちの独断で他の生徒たちを動かす訳にはいかない。どのみち教師の指示を仰ぐためにも職員室に行かなければならないのだ。


「でも遊佐くん、職員室に行くと言ったって、職員室のある西校舎に繋がる通路には全てシャッターが下りているんだよ? おまけに防御型魔装のせいで外にも出られないから、外から西校舎に回ることもできない。この状況でどうやって職員室に行くんだい?」


「屋上から行きます」


「はぁ!? 屋上!?」


 今度は那谷が声を上げる。


「この東校舎と、向こうの西校舎の屋上は繋がってないわよ!? どうやって移動するのよ?」


「少し危険ですが、屋上から渡り廊下の屋根を伝って西校舎へと移動します。俺の予想が合っていれば、防御型魔装は屋上に出るドアまでは塞いでいないんじゃないかと思って」


「どうしてそう思うのよ」


 那谷の顔には理解できないと書いてある。


「俺がこの騒動を巻き起こした犯人であれば、そうするからです」


「犯人だって……?」


 今度は薬師寺も怪訝な顔になる。


「ええ。校内に入れるはずのないアンデッドが、生徒会室と音楽室を含めて二体以上いること、不自然な転落事故現場、大型の防御型魔装の展開、それから不可解な校内放送もありましたよね? これは全部誰かが仕組んだものだと思っています。さすがに、犯人が一人なのか複数人なのかまでは分かりませんが」


「どうしてそう思うのよ?」


「そもそも、校門やフェンスに防御型魔装が取り付けてあるのに、アンデッドが校内に入れる訳がないんですよ。最初は奴らが外から魔装をかいくぐって侵入したのかと思いましたが……そうじゃない。生徒会室に現れたアンデッドの服装に見覚えはありませんか?」


 遊佐に問われて、那谷は自分の記憶を探るように首を傾げた。


「ええっと……突然アンデッドが現れたことで、その体の大きさとか気持ち悪さばかりに気が向いてたけど、言われてみれば白いシャツを着ていたような……! おかしいわ、本来ダンジョンから発生するアンデッドは服なんて着ていないじゃない! しかも、下半身は私達と同じ、チェック柄の布で覆われていたわ! かなり破れていたから何かのぼろ布だと思っていたけれど、よくよく考えると、あれうちの制服じゃない!?」


 那谷の発言に、その場にいた全員が息を飲んだ。


「そうです。おそらく生徒会室に現れたあのアンデッドは、うちの生徒です」


「うちの生徒だって!? 嘘だろう? ぼ、僕は自分の学校の生徒を撃ち殺したというのかい……?」


 先ほどまで意気揚々としていた薬師寺はその場に膝をついた。

 彼の顔はみるみる青くなる。


「会長、あの状況では仕方ありません。狭い出入り口ひとつしかない部屋で、防御型魔装もなかったんです。攻撃するしかなかった」


「そうだとしても……!」


 薬師寺の目が潤む。


「それに、ぱっと見で人間と分からなくなるまで体内浸食が進んだアンデッドを、元の人間に戻す薬はありません。それは製薬会社の息子である会長もよく知っているでしょう?」


「くっ……」


 薬師寺はうずくまったまま床を叩いた。


「俺の予想では、誰かが何らかの方法で生徒をアンデッド化させて、校内に放ったんだと思います。校内放送をしていた人間は無関係ではないでしょうね。『素敵なイベントを用意しました。楽しんでください』とかなんとか言っていたのは、このことでしょう。悪趣味極まりない」


「遊佐君……! 僕は、僕はどうすれば……?」


 薬師寺が遊佐にすがるような目を向ける。


「ここにいる一般性生徒の皆さんは、一旦安全な教室に移動してください。生徒会室の近くの視聴覚室などがいいでしょう。全員固まって行動するように。それから会長、風紀委員長は俺と一緒に生徒会室に戻ってください」


「戻ってどうするの?」


 那谷が不安そうに胸の前で手を握った。

 遊佐はニッと片方の口角をあげる。


「魔装を持って、屋上に行くんです」


本日は8話まで更新予定です。

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