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4 薬師寺の初陣

「僕も魔装で敵を攻撃をするのは初めてだ。初陣を見守っていてくれたまえよ!」


 薬師寺(やくしじ)の好戦的な声が生徒会室に響く。

 彼の目は、まっすぐにアンデッドを見据えている。


「ほ、本当に上手くいくかな? 遊佐(ゆさ)君はどう思う?」


 那谷(なたに)は今にも泣きそうな顔で遊佐の腕にしがみついている。


「上手くいくかどうかなんて俺には分からないですよ。本物の魔装だって初めて見たし……。でも、今は会長に任せるしかない」


 遊佐と那谷が固唾を飲んで見守る中、薬師寺は手に持った銃型魔装をアンデッドに向けて構える。

 すると、銃口から白い光がわずかに膨れ上がるのが見えた。


 薬師寺が引き金を引くと、銃口から白い光が勢いよく飛び出し、アンデッドの肩をパンっという破裂音とともに打ち抜いた。


 アンデッドの肩は丸く穴が開き、その穴から向こう側の廊下が見える。傷口からはボタボタと垂れる体液には、赤黒い色の中に緑色のものも混じっている。

 

 撃たれた衝撃でアンデッドは一瞬よろめいたものの、前足を出すとすぐに体勢を立て直した。

 低い唸り声を漏らしながら、アンデッドは一歩、また一歩とこちらに近づいてくる。


「全然効いてない! 薬師寺君、アンデッドが普通に動いているわよ!?」


 那谷が悲鳴に近い声で言うと、遊佐が冷静に声をあげた。


「会長、頭です。頭を狙って! ゾンビは頭が弱点というのが定説です!」


「ほう、頭か! 学年イチの秀才の言葉を信じようじゃないか!!」


 薬師寺は目を見開き、ニヤッと笑うと、もう一度銃型魔装を構えた。

 今度は先ほどよりも高く、頭の方を狙っている。


「これでもくらえ!」


 薬師寺の声と共に、再び白い光が銃口から飛び出した。

 光はアンデッドの頭を打ち抜くとともに消え、かわりにアンデッドの頭から濁った黄色い液体のようなものが飛び散った。


「オエ! 脳みそ飛び散ったんじゃないの」


「脳みそっていうより、脳漿(のうしょう)じゃないですか。脳脊髄液というやつですよ」


 遊佐が平然として答えると、那谷は思い切り顔をしかめた。


「そんなもん、どっちだっていいわよ! それで、アンデッドは倒せたの?」


 薬師寺はアンデッドの方につかつかと歩み寄ると、足でアンデッドを転がした。奴が完全に動かなくなったのを確認し、「魔装リリース」と呟いて魔装を解除した。薬師寺が構えていた銃型魔装が元のサイズへと戻る。


「うん、大丈夫。息絶えてるみたいだ。どれだけ体が欠損しても動くので有名なアンデッドだけど、遊佐君の言う通り頭を潰されたらさすがに動けないみたいだね。いや参った、参った」


「会長、全然参ったように見えませんでしたよ」


 遊佐が呆れたように言う。


「ふふふ、そりゃあ僕は父の会社の研究室で飼育されているアンデッドをよく見ているからね。恐怖感よりも、親近感の方が近いかも」


「そんな気色悪いもんに親近感を抱かないでよ! 全く、前から思ってたけど薬師寺君ってやっぱり顔がいいだけの変人ね。さてと——」


 アンデッドが動かなくなったことで、生徒会室に再び落ち着きが戻る。那谷は、再びスマホを手に取った。自衛隊に連絡するのだ。


「……おかしいわね、やっぱり何回電話しようとしても繋がらないの。本当に混線しているだけかしら?」


「スマホがダメでも、職員室に行けば有線の電話機があります。職員室に行って、先生から自衛隊に連絡してもらいましょう」


「ついでにアンデッドの死体の処理についても相談しなくちゃ。あと、校内にある脱法魔装についても先生に報告しないとね」


 那谷が薬師寺の手元を睨みつけながら言うと、薬師寺はサッと顔色を変えた。


「はぁ!? どうして先生に報告する必要があるんだい!? これは代々生徒会長だけが秘密裏に受け継いできたものだ。これがあったから、今回僕たちは生き延びることができたんだろ? それを先生方に報告するなんてとんでもない。没収されるに決まってる!」


「でも会長、車が買えるような価値の高いものを、秘密裏に生徒会室に置いておくのは限界がありますよ。先生全員に周知しないでも、せめて生徒会顧問の友澤先生には言った方がいいと思います」


「ええっ!? 友澤先生に報告するのかい?」


 薬師寺は心底嫌そうな顔をした。

 友澤は生徒会顧問をしている若い男性の音楽教師だが、頭は固くない。

 もしかすると、この脱法魔装についても見逃してくれるかもしれない。


「薬師寺君が嫌がっても、私は先生に報告するからね」


 那谷が眼鏡の奥から鋭い視線を向ける。


「とりあえず職員室に行くわよ。友澤先生を探して、自衛隊にも連絡してもらわなくちゃ。校内も混乱してるでしょうし、午後の授業は中止になるかもねぇ」


 そう言って生徒会室から出ようとする那谷を遊佐が制止する。


「会長、風紀委員長、ちょっと待ってください。外がおかしい


「外がおかしい?」


「ええ。さっき転落事故があったでしょう? 転落して倒れていたはずの女子生徒がいないんです」


「私達がアンデッドとやりあってる間に救急隊が来て搬送してくれたんじゃないの?」


「多分違います……。倒れていた女子生徒はいないのに、その周りに先生や生徒が何人も倒れているんです!」


本日は第5話まで更新予定です!


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