四十三の炎
四十三の炎
前方の壁際に手術室のプレートが見えている廊下を、リュウは走っていた。
どこからともなく声がした。
「お待ちしておりました」
リュウの動きがピタリと止まった。
声の主を確認せずに、リュウはそのままの態勢で答えた。
「待たせた覚えはねぇ」
声の主は魔餓鬼だった。魔餓鬼は廊下の階段を数段上がったところで腰をかけ、やがて現れる快炎鬼たちを待ち伏せしていたのだった。
魔餓鬼はニヒルな笑いを浮かべながら言った。
「随分な言い草ですねぇ」
「いったいどこの誰だったのでしょうか? 私を『生の六道へ来い』と導いた投稿ビデオを拡散させた人物は……」
リュウは鼻でせせら笑いながら魔餓鬼の方に身体を向けた。
「……それでノコノコと出て来たってワケか?」
リュウの嘲りを無視して、魔餓鬼はゆっくりと腰を上げた。
「三役揃い踏みでのお出ましだと思っていましたが、ま、いいでしょう」
魔餓鬼は右腕をスッと前に突き出すと、人差し指をリュウの右方向にクイと向けた。指先につられてリュウが目を逸らすと同時に、魔餓鬼は階段を力強く蹴った。
階段の中段から一気に飛び降りた魔餓鬼の蹴りが、リュウの横顔を蹴り上げた。
醜く顔面を歪めながら後方に大きく吹っ飛んだリュウは、手術室に通じる2枚の両開きのドアを破壊しながら通路に消えた。
激しく通路の床に叩きつけられたリュウは、その場に留まることができず、カーリングのストーンのように勢いよく床を滑り続け、奥の手術室の自動ドアに向かって突っ込んでいった。
頑丈な手術室の自動ドアに体当たりして、リュウはやっと滑りを止めることができた。
ゆっくりと、魔餓鬼が通路に足を踏み入れてきた。
手術室に向かう通路の横幅は広く、右側には4基のエレベーターが設置されていて、左の壁際には、太いパイプで製作された屈伸装置付きのストレッチャーが縦になって数台が並べられていた。
手術室のドアの前で倒れて、すぐに起き上がれずに呻き苦しんでいるリュウの姿を、魔餓鬼は薄笑いを浮かべながら立ち止まって遠くから見据えていた。
魔餓鬼は、1台のストレッチャーを掴んで通路の中央に戻すと、片膝を床に付けて必死に起き上ろうとしているリュウに向かって力強く蹴りつけた。
前輪のキャスターが床からフワリと浮かび上がると、後輪も浮かび上がって半回転し、下になったラバーが急ブレーキの役目を果たして、ストレッチャーは前に大きくつんのめった状態となり、天井に届くほどに大きくバウンドすると、リュウに向かって凄い勢いで突っ込んでいった。
必死でリュウが立ち上ると、ストレッチャーは目前にまで迫っていた。
リュウは咄嗟に右側に飛び込み、間一髪で難を逃れることができた。
ドアに激突したストレッチャーは、ドアが内側に半開きになるまでに歪んで、原型が無くなり、潰れ果てた残骸となって入り口の前を塞いだ。
魔餓鬼は2台目のストレッチャーを、右隅に逃げたリュウに向けて蹴りつけた。
物凄い勢いでストレッチャーは、突っ込んでいったが、蹴りが強過ぎて途中で横倒しになり、床に火花を立てながらリュウに向かった。
素早く右隅に頭からダイビングしたリュウは、余裕を持って突っ込んでくるストレッチャーを見送ることができた。
横倒しで突っ込んできたストレッチャーは、左隅の壁に矢印のような格好で激突すると、圧し潰されたように変形してその場に落ちた。
リュウと同様に焦ることの無い魔餓鬼は、ゆっくりと3台目のストレッチャーをリュウの方に向けて蹴りつけた。
3台目のストレッチャーともなると、リュウと魔餓鬼との間隔は、かなり近くにまで迫っていた。魔餓鬼が蹴りつけると同時にリュウは手術室の前の方に逃げた。
右隅の手前の壁に激突して、傾きながら左に大きく弾き飛ばされたストレッチャーのキャスターが、逃げるリュウの左足の踵を直撃した。
一瞬、リュウは眉を顰めた。
ストレッチャーは手術室の前でクルリと一回転して天井に激しく突き当たると、1台目のストレッチャーの真上に落下した。
2台のストレッチャーは内部の方に歪みながら、半開きになっているドアの前で一つの残骸と化した。
魔餓鬼は4台目のストレッチャーに手をかけた。
魔餓鬼の行動を目撃したリュウは魔餓鬼が蹴ってくる前に、大きなバック転で残骸を飛び越え、半開きになっていたドアの隙間から手術室の中へと消えた。
着地したリュウの左足の踵にグギッ!と鈍い音が走った。
「―――!」
「軽い捻挫くらいで済んでくれりゃあいいんだが……」
リュウが飛び込んだ場所は、手術室ではなかった。そこは手術に向かう患者を乗せたベッドが余裕を持って大きくカーブができるためのスペースであり、手術室は右に折れたその奥にあった。
左足を引きずりながら、リュウは足早に奥の手術室のドアに向かった。
自動ドアが開いて、リュウが入った外科の手術室は明るく広く、室内の中央には立派な手術台が据え置かれていて、手術台の近くには、手術中にX線撮影が可能な重厚そうな装置と、天井にはアームの付いた二つの「無影灯」が装置されていた。
―――「無影灯」とは手や医療器具を光の下にかざしても、手術中に影ができない様に、多数の電球が取り付けられた照明器具のことで、太陽光に近い明るさになっている。さらに手術中の色を忠実に再現できるようにと工夫されていて、これを演色性と言っている。
因みに、手術台の近くの重厚そうな装置を活用することによって、カテーテルなどのX線で撮影した画像を、リアルタイムで確認しながら、血管内治療を安全かつ精度の高い手術で実施することができるハイブリッドな手術室と言える。
手術台近くで立ち止まったリュウは、背広の内ポケットからエバが所持していたドリペンと同サイズのペンを取り出した。
キャップを外すとペン先はキラリと光り、手術時のメスのような鋭利な刃を見せた。ペンは刃先と比例しながら瞬時に拡大して、青龍偃月刀へと変化した。
ウオーミングアップのようにブルンブルンと偃月刀を何度も振り回したリュウは、柄の部分をトンと床に立てると仁王立ちで、薙刀を持って牛若丸を待ち構えている弁慶のように、魔餓鬼が来るのを今や遅しと待っていた。
「ふざけやがって……」
「頭と首を泣き別れにしてやるぜ」
魔餓鬼はゆっくりと4台目のストレッチャーを通路の中央に戻すと、半壊で半開きになっている手術室のドアに向けた。
魔餓鬼はさっきよりも強い蹴りを入れた。
上部のラバー部分の形が歪むほどに強烈な蹴りを入れられたストレッチャーは、床に接することもなく弾丸のように風を切って飛んで行き、ドア前のストレッチャーの残骸と共に、半開きになっていた2枚のドアを木端微塵にして手術室に飛び込んでいった。
平然と状況を眺めていた魔餓鬼は、コツ、コツと靴音を立てながら手術室に向かった。
そこに存在していた全ての物は、まるで爆撃にでも遭ったかのように以前の姿を失い、見るも無残に破壊されていた。
すべてが破壊され、風通しのよくなった通路を右に折れた魔餓鬼は、リュウが待ち構えている奥の手術室へと向かった。
左右に自動ドアが開いて、魔餓鬼が手術室に一歩足を踏み入れると、正面の壁と中央の手術台から少し離れた空間で、偃月刀を持ったリュウが仁王立ちで待ち構えていた。
「待ってたぜ」
魔餓鬼はニヒルな笑いを浮かべながら応えた。
「……待たせた覚えは無いのですがねぇ」
リュウは偃月刀を下段に構えた。
「覚悟しやがれッ!」
「アララの仇だ!」
魔餓鬼は鼻でせせら笑いながら、偃月刀の切っ先が届かぬであろう所まで近づいた。「およしなさい」
「それは無駄な足掻きと言うものです」
「無駄かどうか、しっかとその目で確かめやがれッ!」
リュウが叫ぶと同時に全体の長さが一瞬にして一間(1・8㍍)ほどに縮小した。
変形した偃月刀を目の当たりにしても、魔餓鬼は全く驚くことはなかった。
「見ての通り、私は丸腰です」
「卑怯だとは思わないのですか? 孫悟空が持っている伸縮自在の如意棒と同じように、伸縮自在の偃月刀を武器にするのは……」
「根性の腐った汚ねー野郎が、利いた風な口を叩くんじゃねーッ!」
魔餓鬼は近くにあった点滴セットを素早く掴み取った。
「では、私の武器はこれで……」
点滴セットのスタンドを素早く上にした魔餓鬼は、鋭い気合いとともに、リュウの頭部を叩き割るようにして襲い掛かっていった。
リュウは頭上に迫った点滴セットを偃月刀で下から上に勢いよく振り払うと、パイプでできていた点滴セットは、竹が切断されたようにスパッと斜めに斬れた。
すっぽ抜けたようにして切り離されたスタンドは、僅かに角度を変えてリュウの頭を掠めながら斜め後ろに飛んでいき、壁に取り付けられてあった大型のモニター画面に直撃して共に落下した。
竹やりのように斜めに切断されたパイプの切り口を見て、魔餓鬼は感心した。
「流石は偃月刀ですね。こうも見事に切断されるとは思っていませんでした」
リュウはドヤ顔で言った。
「鉄兜を真っ二つに割る日本刀があるくらいだ。偃月刀がパイプを切ったところで驚くほどのものでもねぇ」
リュウは偃月刀の切っ先を魔餓鬼の鼻先に向かって、グイと突き付けた。
「偃月刀の錆にしてやるぜ!」
リュウは一気に斬り込まずに、ジリジリと魔餓鬼を追い詰めた。
手術台近くまで後退した魔餓鬼の足がピタリと止まると、リュウはここぞとばかりに袈裟懸けで斬りつけていった。
パッと床を蹴った魔餓鬼は、背面飛びで手術台の上に飛び乗った。
手術台の中ほどですっくと立ち上がった魔餓鬼は、天井から吊り下げられていた二つの無影灯の一つをグイと取り下げると、襲い掛かってくるリュウに向かって、無影灯を投げつけるようにして横に振り払った。
上下左右に自在に可動する無影灯は、手術台から大きく横に食み出すと、半円を描きながらリュウの顔面近くまで迫った。
リュウは咄嗟に頭を下げ、間一髪で難を逃れることができた。
どっしりと重量感の有るX線撮影装置に無影灯が激突すると、無影灯は簡単に潰れて原型を失くし、割れたガラス片はバラ蒔かれたように四方に飛び散った。
すでに二つ目の無影灯を頭上高く持ち上げていた魔餓鬼は、リュウが頭を上げる頃合いを見図って投げつけた。
ヒョイとリュウが頭を上げると、無影灯は顔面近くまで接近していたが、弓なりに身を反らせて攻撃から免れた。
素早く身を元に戻したリュウは、魔餓鬼の足元を狙って偃月刀を横一文字で振り払うようにして斬り付けた。
ブンと唸りを上げた偃月刀は、手術台の上を虚しく空を切った。魔餓鬼は迫り来る偃月刀と同じ速さで後方に逃げていたのだった。
偃月刀の柄を床に立てたリュウは、ゆっくりと周囲を見渡した。
魔餓鬼は室内の片隅に置いてあった高濃度の酸素ボンベの近くで立っていた。
容器全体を黒く塗られた鉄製の酸素ボンベの長さは1・3㍍、直径は20㌢ほどで、空で53キロ、満タンに充填されていたなら63キロもあるのだが、魔餓鬼はバブル部分を握ると軽々と頭上に持ち上げ、スローインで投げるようにしてリュウに向かって投げつけた。
真横になって飛んで迫るボンベは、リュウの目には爆弾が飛んでくるように見えた。
目前までに迫ったボンベを、リュウは思わず偃月刀で撥ねつけた。
パキーンと乾いた音を立てた偃月刀の刃は、真っ二つに折れて壁に向かって飛んでいくと、リュウは体制を崩し仰向けになった。
ボンベはリュウの顔面を掠めて後方に飛んで行き、壁に激突すると床に落ちた。ボンベのバブル部分は破損せず壁と床に小さな傷跡を残しただけだった。
仰向けになって倒れ、大きく尻餅を付いたリュウに素早く近づいた魔餓鬼は、リュウの左足の踵と指先を両手でガシッと掴み取った。
「こちらでしたよね。痛めていた方の足は?……」
「そっちじゃね―ッ!」と右足で魔餓鬼の顔を蹴りつけようとしたリュウの左足首をグイと横に魔餓鬼は捻った。
一瞬、苦痛の表情がリュウの顔面に走った。
その時、リュウは自分のアキレス腱がプチンと切れる音を聞いた。
魔餓鬼は、痛めつけたリュウの左足首を床に叩きつけるようにして投げ出すと、透かさず右の足も左と同様に掴み取った。
「物には釣り合いとか、バランスが必要です」と言いながら、魔餓鬼は左足と同様に力強く捻った。
床に両手を付いて身を反り返し、痛みに耐えているリュウの右足首を投げ出した魔餓鬼はすっくと立ち上がると、リュウの右膝の半月板を靴底でガツンと力強く踏み砕いた。
リュウは顔を歪めながら、大の字になって床に倒れた。
倒れているリュウの左膝を、魔餓鬼は右足と同様にガツンと踏みつけた。
さらに魔餓鬼はリュウの右肩をガシッと掴んで半身を起こしからしゃがみ込むと、リュウの右肘の関節部分を小脇に挟み、逆関節で腕を折るようにグイと一気に持ち上げた。
「グギッ!」と鈍い音がした。
魔餓鬼は左腕も同様にして、関節部分の骨を折った。
左肘も同じ音がしたが、リュウは悲鳴を上げることも音を上げることもしなかった。
リュウを手放した魔餓鬼は立ち上がり、冷たい視線で見下した。
リュウの両足首と両肘はあらぬ方向を向いていた。
芋虫なら足を動かして前進することができるが、両足のアキレス腱を切られ、両膝と両肘を骨折させられたリュウは、次々と襲ってくる苦痛に顔を歪めながらモゾモゾと蠢いているだけだった。
蠢くリュウを見下しながら、魔餓鬼は言った。
「奪衣婆には知恵があり、アララには毒というスペックが有ります」
「あなたは何か一つでも役に立ったことをしましたか? 快炎鬼のために……」
リュウには返す言葉がなかった。
折れ曲がった両肘を使いながら、リュウは無言でただひたすらに半身を起し、アキレス腱を切られ膝だけの身で、やっとのことで四つ這いになることができた。
リュウが四つ這いになるまでを傍で冷たい視線で眺め続けていた魔餓鬼は、リュウが四つ這いになると同時にリュウの腰椎をガツンと靴底で一気に踏みつけた。
床に顔を叩きつけるようにして落ちたリュウは、糸の切れた操り人形のようになってグニャリと崩れた。
手足だけでなく、太腿などの下半身も不随になってしまったリュウが自由に動かせるのは、今となっては首を持ち上げる力と物言う口だけであった。
無表情でリュウを見下していた魔餓鬼は、リュウの前でしゃがみ込んだ。
「溢れ出ていた脳内アドレナリンもすでに限界のハズです。いつまでも痛みを我慢せずに悲鳴を上げたが方がいいと私は思いますがねぇ?」
グイと首を上げ、リュウは絶叫した。
「殺せーッ!」
「ひと思いに殺しやがれーッ!」
魔餓鬼は冷笑した。
「それは無理というものです」
「私には出来ませんねぇ。そんな勿体無いことは……」
魔餓鬼は内ポケットの中から接着剤を取り出した。
「目には目を、歯には歯を……と言う言葉が有ります」
「ですから当然、魔火丸のリベンジに対して、文房具には文房具をってことになってしまいますねぇ」
「な、何だ。それは?……」
魔餓鬼は持っていた接着剤をリュウの目前に突き付けた。
「見ての通り、これは接着剤です」
「な、何をしようってんだ?」
魔餓鬼が接着剤のキャップを取り外して斜めに傾けると、先端から溢れ出てきた液体は、部屋の明かりに反射してキラリと光った。
「大きなアクションで決着をつけるのも、スカッとした醍醐味が味わえていいものですが、一気に殺さずにじわりじわりと弄びながら死を迎えるのを見ているのも楽しいものです。人はこれを『嬲り殺し』と呼んでいます」
「ど、どうするつもりだ!」
「説明は要りません。直ぐに結果の出ることですから……」
リュウのアゴを左手で支えると、魔餓鬼は右手に持っていた接着剤をリュウの下唇に横になぞっていく様にして垂らしていった。
抵抗出来ないリュウは、成すがままに魔餓鬼に身を任せるしかなかった。
リュウの顔を覗き込むようにして、魔餓鬼は言った。
「言いたいことがあれば言いなさい」
「聞いてあげますから……」
リュウは話すことがことができなかった。
話せば上下の唇がピタリとくっつくのが火を見るよりも明らかであったからだ。
大きく口を開けたままのリュウの顎を、魔餓鬼は下から軽くカクンと持ち上げるとリュウの上下の唇はピタリを引っ付いた。
カッと目を大きく見開き、リュウは必死になって口を開けようとしたが、横一文字に閉ざされた口は二度と開けることはできなかった。
「……言いたいことが、無いようですねぇ」
魔餓鬼はリュウの顎から手を離した。
「それでは、お別れしましょう」
床に顔面を叩きつけるようにして落ちたリュウは、不随の手足を必死で動かし続けたが、リュウが僅かに動かせているのは、首と両肩と両の太腿だけだった。
蠢くリュウの身体を、魔餓鬼は無造作に足でゴロリと仰向けにした。
リュウの横でしゃがみ込んだ魔餓鬼は、リュウの二つの鼻の穴の中に次々と接着剤を流し込んだ。
魔餓鬼はリュウの鼻翼を摘まみ、ピタリと鼻の穴を閉じた。
「旅立ちなさい」
「三途の川どころか、地獄さえも存在しない『無の世界』に……」
魔餓鬼が冷笑しながら見下している中を、リュウは顔を歪め悶え苦しみ続けていた。ゆっくりと立ち上がった魔餓鬼は無表情で、苦しみ続ける魔餓鬼を暫く眺めている
だけであった。
何かを訴えようとリュウは必死で目をしばたたせて合図を送っていたが、魔餓鬼は鼻でせせら笑いながらリュウを見下していた。
窒息で薄れ行く意識の中、リュウは心の中で謝っていた。
『すまねー。快炎鬼……』
『許してくれ。何の役にも立たなかった、この俺を……』
カクッとコト切れて、リュウは絶命した。
リュウの死を確かめた魔餓鬼は、静かに手術室から立ち去った。
残されたリュウの死体は色彩が無くなり、砂のようなグレーになっていった。やがて全身が砂色になったリュウの死体は、砂が崩れ落ちるように体型を崩し、床に落としたアイスが溶けるようにして床の中に消えて行った。




