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レッドムーン ―ニュー・アース編―  作者: 瀬田 彰
第一部 第一章 旅の始まり編

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第8話 双子とクソジジイ 前編

 閲覧ありがとうございます。

 少し嫌な回かもしれません。

 心理描写的に、苦手な方はご注意ください。


『はっ! 血の繋がったワシに対して、曽祖父(クソジジイ)か。ワシは随分と曽孫(小童)共に嫌われたようだな』


 鋭い目つきを俺達に向けながら曽祖父(クソジジイ)の形をした人間にそっくりな『ソレ』は声を発した。

 とても『蜘蛛(呪い)』から出た『黒いモヤモヤ』からできているとは思えない。

 けれども、その声は間違いなく曽祖父(クソジジイ)だ。


「人を呪っておいて、好かれると思っていたのか?」


 一兄の言葉に対して、曽祖父(クソジジイ)は『クククク』と笑って返す。


 あれ、少し、違う?

 声の質が少し鈍い?

 微かな違和感から、戸惑いを見せる俺に対して、一兄は俺の盾になるように前に出た。


「一兄っ!?」


 無茶だ。

 何で一兄が俺の前に出るんだよ!

 そう思うのに、足が(すく)んで、動かない。


『クククク、何故ワタシがお前達の『呪い』から出てきたのか、疑問に思っているな?』


 ニヤリと曽祖父(クソジジイ)は笑みを浮かべる。

 やっぱり、おかしい。

 曽祖父(クソジジイ)は俺達に話してる様に聞こえるが、微妙にズレている。


「まるで、録音された音声、決められた行動というやつだな」


 一兄が声低く、言った。

 俺はハッとして曽祖父(クソジジイ)を見ると、相手はただ笑っている。

 まさか、『呪い』が見せている幻覚か?

 それならば、心を落ち着ければ消えるはずだ。


『ワシを幻覚とでも思っているのか? 笑止千万!』

 

 ゾワっと悪寒が走った。

 違和感はあるのに、そこに『いる』としか思えない。

 手が震える。


「飛鳥、落ち着け。コレは曽祖父(クソジジイ)じゃない!」


 一兄が俺に声をかけるが、俺の膝は力を失い、崩れてしまう。


『無駄だ。わかっておろう? これは事実だと。あれだけ『身体』と『心』に刻んでやったのだからな。ククククク』


 ねっとりとした油を塗りたくったような気持ち悪い声が『当時』と重なり、汗が滝のように流れてくる。

 違う。

 これは幻覚だ。

 惑わされるな。

 強く拳を握るが効果はない。

 

「この、クソジジイ(ゲス)が!! 俺の弟をこれ以上苦しめるな!!」


 一兄が地面を蹴り、曽祖父(クソジジイ)へ殴りかかった。

 しかし、曽祖父(クソジジイ)はスッとその実体を溶かし、一兄の後ろへと瞬時に移動する。

 それはもう、人間技じゃない。

 やっぱりクソジジイ(相手)は『本物』じゃない!

 俺は地面に吸い付いている膝に力を入れる。

 立て!

 立て!

 動け!

 相手は『偽物』だ。

 恐怖するな!

 臆するな!

 恐れることはない!


「うぐっ!」


 一兄が曽祖父(クソジジイ)に首を絞められる。


「一兄!?」


 くそっ!

 俺の足、動け!


『ククククク。弱い。弱い弱い弱い!! 弱すぎるぞ!』


 曽祖父は楽しそうに笑い、一兄が苦しそうに藻掻(もが)き始めた。

 曽祖父が更に力を入れているのがわかる。

 やめろ。

 やめろ。

 一兄を離せ。

 クソ!

 動け俺の足!!

 そんな俺を、曽祖父(クソジジイ)は一瞥し、一兄へと顔を近づけニヤリと笑う。


『ククク。ほれ、見てみろ。お前の大事な弟は、ワシへの『恐怖』で一歩も動けていないぞ? お前を助けるよりも、ワシが怖いんだ』


 曽祖父(クソジジイ)に言われてか、一兄の閉じていた瞼がゆっくりと上がり、俺を見る。

 早く一兄を助けないと!

 くそ!!

 何で、力が入らないんだ!!

 必死に動こうとする俺を、曽祖父(クソジジイ)は嘲笑い、そして追い討ちをかけるように口を開く。


『ククククク。見ろ! 否定できないだろう? お前は弟に見捨てられるんだ。当然だ。お前は弟から『恨まれ』ているもんな? 『呪い』で苦しむ弟とは違い、ほぼ『不発』で『呪い』の影響をお前はほとんど受けていないのだから!!』


 大声で笑う曽祖父(クソジジイ)

 そして笑い終えた後、曽祖父(クソジジイ)は再び一兄に顔を近づけた。

 

『お前の弟はお前の死を望んでいる』


 違う!!

 やめろ、やめろ、やめろ!!

 何を勝手なことを言っている!!

 俺が一兄の『死』を望んでいるだと?

 ふざけるな!!

 しかし、その思いとは反対に一兄の藻掻(もが)いていた手がゆっくりと力を失くしていく。

 まずい!!


『絶望しろ。そして弟を恨め。お前が今することは一つだけ。ワシがかけてやったお前の『呪い』を発動させ、弟をその手でいたぶり殺――』


 このとき、俺の足にやっと力が戻った。

 俺は強く地面を蹴り、曽祖父(クソジジイ)に向かって拳を向ける。


「俺の、『大事な兄貴』に、それ以上戯言を言うんじゃねえ!!」

 

 俺の拳は、曽祖父(クソジジイ)の横面に食い込むようにめり込んだ。

 完全に油断していた曽祖父(クソジジイ)は、その衝撃で勢いよく吹っ飛ぶ。

 曽祖父(クソジジイ)の手が首から離れた一兄は、そのまま地面に手足をつき、四つん這いになってゲホゲホと激しく咳き込んだ。

 そして、一兄は汗を流し、息を乱しながら顔を上げる。

 目の周りが黒がかり、かなりギリギリの状態だったのだと俺は改めて思い知らされる。

 そんな状態になるまで、全く動けなかった俺は、一兄にかける言葉も、手を差し出すことも出来ない。

 そんな資格、俺にはない。

 一方、曽祖父(クソジジイ)は俺に殴られた頬を押さえながら『ククククク』と笑い始める。


『見たか? お前の弟は苦しんでいるお前に対し、『ギリギリ』まで動かず、お前に最上の苦しみを与えようとしたぞ? 恐ろしいなあ、恐ろしいなあ? ククククク。ハハハハハハハハハハハ!!』


 そう言って、曽祖父(クソジジイ)の笑い声だけが、辺り一面に響き渡った。

 読んで頂きありがとうございます。

 今回は、前編、後編仕様となります。

 というわけで、今回は多くは語りません。

 次回、よろしければ、またお会いしましょう!

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