第7話 森を抜けて出会う者
閲覧ありがとうございます!
いよいよ、異世界です。
新章、お楽しみください。
「やった! 森を出たぞ!」
一兄が両手をあげて声を出した。
「あっさりしすぎていて逆に物足りないくらいだったな」
俺が顎に手を添えながら言うと、一兄はジト目でこちらを見てくる。
「えええ? 飛鳥、お前って結構夢見るタイプ? 俺はそういう『見慣れない魔物』や『未知なる生物』とかはゲームだけで十分なんだけど?」
俺も別に冒険したいとか、そんなんじゃない。
遊びに来てるんじゃないんだから。
「俺は、自分の腕がこの世界でどこまで通用するのか、見極めを最初にやっておきたかったと思っただけだよ。別に俺達、『魔王』とかを倒しに来たわけじゃないんだから」
俺は一兄にそう返事をした。
「まーな。そもそもこの世界に『魔王』が存在する世界なのかも知らねえけど。いても興味ないけどな」
一兄の言う通りだ。
もしそんなものがいるならば、それはいわゆる『勇者様』とやらにぜひお願いしたい。
「しかし、せっかく森から出たのに、人っ子一人も歩いてないのかよ。しかも、あるのは街じゃなくてただの広い草原……」
一兄はガックリと肩を落とした。
「森を抜けたら誰かに会うかと思ったが、世の中そう上手くはいかないな」
「ゲームじゃないんだ。そりゃそうだろって話だよな」
現実を突きつけられる俺達二人はとりあえず前へと歩き出した。
建物が見えたから絶対にこの近くに街があるはずだ。
「一兄はさ、街についたらどうするんだ?」
俺の質問に一兄は「え?」と、とんでもないことに気がついたと言わんばかりの顔で俺を見てきた。
「まさか、一兄……」
ノープランとかじゃないよな?
いや、俺も人のことは言えないんだけど。
「まずいな。コレは、詰むよな?」
流石の一兄も少し声が焦り気味になる。
いくら自分達の足で情報を探すにしても、ノープラン、ノーヒントすぎるもんな。
こんな状態で自分達の力で、呪いを解くヒントを掴みつつ、この世界のどこかにいるであろう家族を探せと言われてもできるわけがない。
取っ掛かりが無さすぎる。
「これ、絶対ゲームの方が何倍も楽なやつだな」
一兄の言葉に俺は頷く。
異議なし。
だってゲームならば、必ずどこかにヒントが落ちているんだから。
「とにかく、今は街に着くことだけを考えよう。ここでアレコレ考えても時間の無駄だ」
言えてる。
「それにしても、何で飛鳥は迷子にならないんだよ。何でサクサク進むんだ?」
唐突に突きつけられた一兄の質問に、俺は眉間にシワを寄せる。
「目的を目指してそこに向かってるだけだろ?」
何故そこで『迷子』前提で話すんだ?
方向を確認するために木の上まで登ったんだろ?
ジッと無言で一兄を見つめれば、一兄は気まずそうに目をそらした。
まさか俺も自分と同じになるとでも思ってた、とか?
それって、兄と言えど、弟に対してスッゲー失礼なのでは?
「一兄の場合、無闇矢鱈に曲がろうとするのが原因だと思うんだけど?」
すると、一兄は衝撃を受ける。
いや、そこ驚くところじゃない。
「え? え? だってさ、急がば回れって言うだろ?」
思わず絶句。
それ、意味が違う意味が!!
一兄のその行動は遠回りになるだけだから!!
本当、たまに一兄って頭が冴えてるのか、バカなのかアホなのかわからなくなる。
「でも、それで俺はいい縁があったわけだし、あながち間違いとは言えないわけで」
何の縁があったのかは知らないが、一兄が照れる意味がわからん。
イライラしてしまった俺は思わず一兄に言ってしまう。
「キモい」
「え?」
一兄がキョトンと首を傾げる。
「キモい。キモい。俺の兄貴がキモすぎる」
「いやいやいや、好かれることはあってもそれは酷くない!? お兄ちゃん拗ねるよ!?」
勝手に拗ねとけ。
そんなやり取りをしていると、周りの空気が突然ピシ! と変わった。
嫌な感じがする。
「何だ? この空気」
俺はそう呟いて辺りを見回した。
草がサアアアアアと風に揺れる。
一兄も何か察したのか、目つきを鋭くして、身構える。
『遂にこの地に来たか、小童共』
俺と一兄は、ハッ! とする。
「この声……」
「一兄も聞こえた?」
二人同時に聞こえたということは、空耳ではないらしい。
当時の嫌な記憶が俺達の身を包む。
辺りは何故か暗くなり、生ぬるい風が吹き始める。
「……っ!?」
突然俺と一兄、それぞれの手に痛みが走った。
俺が右手を見ると、黒いモヤモヤした霧の様なものが蜘蛛がいる辺りから出ている。
何だよこれ!!
思わず手を振るがモヤは離れるどころか、どんどん溢れてくる。
「一兄!!」
俺は思わず一兄の名を呼んだ。
「飛鳥っ!」
一兄の苦しそうな返事が聞こえ、一兄の方へ視線を動かせば、一兄の左手からも俺と同じ様に、黒いモヤモヤしたものが出ていた。
「くそっ! こんな現象、初めてだっ」
一兄が痛さからか、黒いモヤモヤが出ているところに指が食い込むくらい強く左手を右手で掴んだ。
しかし、黒いモヤモヤは止まらない。
そして、それは一つの場所へと集まっていき、『何か』の形を形成していく。
「なっ!?」
俺と一兄は何が起こっているのか、理解できなかった。
いや、理解しようとすればするほど、それを拒絶する自分がいる。
見たくない。
逃げたい。
関わりたくない。
ゆっくりと固まり、それは見覚えのある形へと変化していく。
信じてたまるか。
コレは幻だ。
見たくない。
額に脂汗が溢れ、顔をつたう。
俺の右手がジクジクと痛み、視線を離したいのに、身体が金縛りに遭ったように動かない。
ゆっくり、ゆっくりと黒いモヤモヤは形を成していく。
「ちっ!」
一兄が舌打ちをした。
忘れるわけがない。
あの姿は――。
「曽祖父」
読んで頂いてありがとうございます。
不穏な雰囲気で終わりました。
この世界甘くはありません。
ではでは、よければまた次回お会いましょう。




