第6話 双子、光と共に異世界へ
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スコロールの嘘魔法に、歓喜した柳と彩が落ち着いた頃、スコロールは二人に出した『鍵』を渡した。
二人とも小学生だからか、その『鍵』よりも身長が低い。
高跳び棒の棒を持っている様だ。
「あ、軽い」
柳はそう言って、身体に馴染ませるようにブンブンと振り回し始めた。
「うーん、あんなに振り回してたら、『鍵』っていうより、スタッフっていう武器に見えてくるな」
一兄がちょっと呆れるかのように、こそっと俺に言う。
確かに。
「一兄も、持ってみる?」
俺達二人は柳達を見ていただけだったのだが、柳には持ちたそうに見えたのだろう。
柳が一兄に『鍵』を前に出してきた。
弟の好意には、応えなければならないと、一兄はニコニコと嬉しそうに受け取る。
しかし、その瞬間。
一兄はうめき声と共に、シュッと消え――たのではなく、ガクンと勢いよく膝をついていた。
「……一兄。何やってんだ?」
俺も柳も、一兄の奇行を見て汗を垂らす。
「いや、これ。めちゃくちゃ重い」
は?
重い?
そんなバカなと思いつつも、一兄が演技をしているようには見えない。
俺も試しに持とうと試みる。
「重っ!?」
想像以上に重い。
これを小学生の柳が振り回していたのか?
俺達の動きを見て、スコロールがケラケラ笑う。
「そりゃ『門番』の『鍵』だぞ? 他人が扱えるわけないだろ」
だったら最初からそう言えよ!!
「あ! 俺は『人間』じゃないから、その『対象外』な!」
ムカっ!
何かそれ、ズルくないか?
俺と一兄が恨めしそうにスコロールを睨みつければ、スコロールは見て見ぬふりをし、話題を変えた。
「さあ、戯れはここまでだ。柳、彩。今から俺の言う通りにするんだ。こっちに来い」
そう言ってスコロールは柳と彩を呼び寄せ、二人に説明を始めた。
一兄と俺は逆に扉の近くへと近づく。
特に何かというわけではないが、することもないし。
この『創造主の扉』以外何もないから見るものもないし。
辺り一面、真っ白だし。
近くで見ると両開きなのだとわかる。
「そういえば、父さん達はここを通ったってスコロールは言っていたよな? 俺達もここを通るってことは、父さん達も『ニュー・アース』にいたりするんだろうか?」
一兄がそう呟いたときだった。
扉がギッと音を立てて少し開き、追い風がそよそよと俺達の背中を押す。
え?
二人で驚いて振り向けば、少し離れたところで柳と彩が『鍵』をこちらに向けている。
そしてその後ろではニヤリと笑ったスコロールがいた。
「流石、一馬だ。察しがいいな。この先、『ニュー・アース』にはお前らの両親と姉の胡桃、『赤い月』で消えた奴らがいる」
スコロールの言葉に驚いていると、ギギギとさらに扉は開いていく。
俺達は踏ん張るが、少しずつ扉の中へと引っ張られていく。
柳と彩は『鍵』を持つので精一杯なのか、何も言えない。
代わりに二人を支えているスコロールの唇が動いた。
「お前ら、よく覚えておけ。『ニュー・アース』に行けば、『呪い』を解くための『鍵』が必ずある。だが、それと同時に『呪い』がお前達二人を更に苦しめることもあるだろう。でも、負けるんじゃねえぞ。俺はお前達に『ニュー・アース』で抗う為の『力』を、生き残る為の『知識』を与えてきた」
そう言ってスコロールは、唇をキュッと閉じ、少しだけ言葉を止めた後、大きな声で叫んだ。
「いいか! 決して、恐れるな! 振り返るな! そして、立ち止まるな! ひたすら前に進んで、道を切り拓くんだ!!」
そう言ってスコロールは目を細め、俺達に見せたことのないような表情を見せた。
ギギギと扉はどんどん開いて、俺達は耐えられなくなる。
遂に足がフワリと宙に浮き、耐えられなくなったときだった。
スコロールの声は聞こえなかったが、唇がゆっくりと動いた気がした。
『悪いな。お前らと俺は、サヨナラだ』
それが見えた俺はスコロールの名前を呼ぼうとした。
しかしそれよりも早く、俺と一兄は扉の中に吸い込まれ、あっという間にスコロールと柳、彩は小さくなって見えなくなってしまう。
それでも抵抗しようとしたのだが、無数の『光』の玉が飛んできて、俺達二人はそのまま目を回してしまった。
そして、次に目が覚めたとき。
俺と一兄は二人でこの深い森の中で横たわっていた。
無傷なのは良かったが、どこだかさっぱり分からない。
こうして、闇雲に歩いた結果、今現在進行形で『迷子』なのである。
「うう、柳にせめて『いってきます』と言いたかった」
一兄がまだメソメソしている。
ウザい。
「俺だって一兄と同じだよ。スコロールの奴、まさかあんなやり方をしてくるなんて。相変わらず趣味の悪い。しかも最後のアレは何だ。まるで今生の別れみたいな言い方しやがって」
俺がブツブツと愚痴をこぼせば、一兄はウンウンと頷く。
しかし今は不気味な森から抜け出すことが重要かもしれない。
別に『怖い』というわけではないのだが、『いい気分』はしない。
寧ろ早く離れろと第六感が言っている。
気がする。
「とりあえず、走るか?」
一兄に言われて、俺は同意する。
そして、トントンと、つま先を地面に打ち付けてから、俺と一兄は一気に走り出した。
ここはもう『地球』ではない。
多少スピードを上げたからと言って、こんな森の中で注目を集めたりすることはないだろう。
俺と一兄は目にも留まらぬ速さで森を駆けた。
ただし、不安はある。
「一兄、当然、方向わかって走ってるよね?」
「いや。立ち止まってるよりはいいかなって思ってるけど?」
やっぱり!!
方向音痴のくせに先に走るなよ!
後ろにいていつの間にか消えてるよりはマシだけど!!
「よし、飛鳥、飛ぶぞ」
突拍子もなく一兄に言われて、俺は面倒だと舌打ちをする。
しかし、一兄が足に力を入れ、高く飛び上がれば後を追うしかない。
俺達二人は途中の枝をうまく使いながら一気に木の上まで登り、木の頂点に達してから俺と一兄は辺りを見渡した。
森が繋がっていて正直、今ではどちらか来たのか分からない。
それでも目を凝らして見れば、ある一定の場所だけ緑がないところを見つける。
「多分、あれは街だよな?」
遠目なのでどんな形状かはわからないが、人工的な建物が見えるから、間違いないだろう。
地球のようにビルが立ち並んではいないので、どこまで発展しているのかここからは分からない。
それでも森の中でウロウロとするよりはずっといい。
結局スコロールはこの『ニュー・アース』がどんな世界なのか、はっきりとは教えてくれなかったし。
そうして思い浮かべるスコロールの顔。
もしここにスコロールがいたらこう言うだろう。
『そんなもの、自分で調べろ』
思い浮かべるんじゃなかった。
無責任すぎるだろ。
「一兄、言葉って通じると思う?」
「さあ? 話してみないとわからないな」
うわ、ド正論で返された。
「でも俺とお前なら何とかなる。違うか?」
一兄の言葉に少し胸がこそばゆくなる。
「何だよその根拠のない自信。どっから出てくるんだよ。キモっ」
つい、素っ気なく答えてしまう俺なのだが、一兄は気にする素振りは見せない。
「そんなもの。今までの経験と飛鳥への信頼だ」
「あっそ」
恥っず!
はっきり言って、一兄は俺を過剰評価し過ぎだと思う。
というか、弟補正が強すぎる。
キモい、ウザい。
「ま、大事な弟っていう以前に、俺はお前のこと、頼りにしてるよ。よろしくな、相棒」
そう言って拳を出してくる。
本当、恥ずいことを平気でするんだから。
「俺達の場合、相棒って言うより半身だろ」
そう言って俺は軽く一兄の拳に自分の拳をコツンとぶつけた。
俺も大概恥ずい奴だな。
「俺達双子だもんな! ははっ、違いない」
「ウっザ」
「そう言いながら、拳を返してくれるお前は、やっぱり可愛い弟なんだよな」
ニヤニヤする一兄。
「俺の兄貴がキモい。無駄にキモい。キモいキモいキモい」
「ははっ、違うな。兄弟愛に溢れていると言え!」
「そんな愛はいらん!」
「照れるな、照れるな」
照れてない!
全く、俺達は小学生かっ!
「何言ってんだ。高校二年生だろ?」
人の心を読むなよ。
「読んでない。わかるんだよ。直感ってやつ? 双子故の意思疎通! これぞ以心伝心だ!」
ウザいウザい。
俺の兄貴が超ウザい。
俺は木の上から飛び降り、走り始めた。
一兄もその後に続く。
「この速度なら日が暮れる前に着きそうだな」
余裕そうに言う一兄に俺はスピードをあげる。
「はぐれたら置いていくからな。方向音痴め」
「へいへい。しっかり弟についていきますよ」
そんな会話をしながら俺達は地面の上ではなく、木の枝から枝へ飛び移りながら街へと向かった。
読んで頂きありがとうございます。
ここまでが第一章、出発編となります。
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