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レッドムーン ―ニュー・アース編―  作者: 瀬田 彰
第一部 第一章 出発編

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第6話 双子、光と共に異世界へ

 閲覧ありがとうございます。

 お待たせしました!

 さあ、行こう!


 スコロールの嘘魔法(エセマジック)に、歓喜した柳と彩が落ち着いた頃、スコロールは二人に出した『鍵』を渡した。

 二人とも小学生だからか、その『鍵』よりも身長が低い。

 高跳び棒の棒を持っている様だ。


「あ、軽い」


 柳はそう言って、身体に馴染ませるようにブンブンと振り回し始めた。


「うーん、あんなに振り回してたら、『鍵』っていうより、スタッフっていう武器に見えてくるな」


 一兄がちょっと呆れるかのように、こそっと俺に言う。

 確かに。


「一兄も、持ってみる?」


 俺達二人は柳達を見ていただけだったのだが、柳には持ちたそうに見えたのだろう。

 柳が一兄に『鍵』を前に出してきた。

 弟の好意には、応えなければならないと、一兄はニコニコと嬉しそうに受け取る。

 しかし、その瞬間。

 一兄はうめき声と共に、シュッと消え――たのではなく、ガクンと勢いよく膝をついていた。


「……一兄。何やってんだ?」


 俺も柳も、一兄の奇行を見て汗を垂らす。


「いや、これ。めちゃくちゃ重い」


 は?

 重い?

 そんなバカなと思いつつも、一兄が演技をしているようには見えない。

 俺も試しに持とうと試みる。


「重っ!?」


 想像以上に重い。

 これを小学生の柳が振り回していたのか?

 俺達の動きを見て、スコロールがケラケラ笑う。


「そりゃ『門番』の『鍵』だぞ? 他人が扱えるわけないだろ」


 だったら最初からそう言えよ!!


「あ! 俺は『人間』じゃないから、その『対象外』な!」


 ムカっ!

 何かそれ、ズルくないか?

 俺と一兄が恨めしそうにスコロールを睨みつければ、スコロールは見て見ぬふりをし、話題を変えた。


「さあ、戯れ(たわむれ)はここまでだ。柳、彩。今から俺の言う通りにするんだ。こっちに来い」


 そう言ってスコロールは柳と彩を呼び寄せ、二人に説明を始めた。

 一兄と俺は逆に扉の近くへと近づく。

 特に何かというわけではないが、することもないし。

 この『創造主の扉』以外何もないから見るものもないし。

 辺り一面、真っ白だし。

 近くで見ると両開きなのだとわかる。


「そういえば、父さん達はここを通ったってスコロールは言っていたよな? 俺達もここを通るってことは、父さん達も『ニュー・アース』にいたりするんだろうか?」


 一兄がそう呟いたときだった。

 扉がギッと音を立てて少し開き、追い風がそよそよと俺達の背中を押す。


 え?


 二人で驚いて振り向けば、少し離れたところで柳と彩が『鍵』をこちらに向けている。

 そしてその後ろではニヤリと笑ったスコロールがいた。


「流石、一馬だ。察しがいいな。この先、『ニュー・アース』にはお前らの両親と姉の胡桃(くるみ)、『赤い月』で消えた奴らがいる」


 スコロールの言葉に驚いていると、ギギギとさらに扉は開いていく。

 俺達は踏ん張るが、少しずつ扉の中へと引っ張られていく。

 柳と彩は『鍵』を持つので精一杯なのか、何も言えない。

 代わりに二人を支えているスコロールの唇が動いた。


「お前ら、よく覚えておけ。『ニュー・アース』に行けば、『呪い』を解くための『(ヒント)』が必ずある。だが、それと同時に『呪い』がお前達二人を更に苦しめることもあるだろう。でも、負けるんじゃねえぞ。俺はお前達に『ニュー・アース』で抗う為の『力』を、生き残る為の『知識』を与えてきた」


 そう言ってスコロールは、唇をキュッと閉じ、少しだけ言葉を止めた後、大きな声で叫んだ。


「いいか! 決して、恐れるな! 振り返るな! そして、立ち止まるな! ひたすら前に進んで、道を切り拓くんだ!!」


 そう言ってスコロールは目を細め、俺達に見せたことのないような表情を見せた。

 ギギギと扉はどんどん開いて、俺達は耐えられなくなる。

 遂に足がフワリと宙に浮き、耐えられなくなったときだった。

 スコロールの声は聞こえなかったが、唇がゆっくりと動いた気がした。


『悪いな。お前らと俺は、サヨナラだ』


 それが見えた俺はスコロールの名前を呼ぼうとした。

 しかしそれよりも早く、俺と一兄は扉の中に吸い込まれ、あっという間にスコロールと柳、彩は小さくなって見えなくなってしまう。

 それでも抵抗しようとしたのだが、無数の『光』の玉が飛んできて、俺達二人はそのまま目を回してしまった。

 そして、次に目が覚めたとき。

 俺と一兄は二人でこの深い森の中で横たわっていた。

 無傷なのは良かったが、どこだかさっぱり分からない。

 こうして、闇雲に歩いた結果、今現在進行形で『迷子』なのである。


「うう、柳にせめて『いってきます』と言いたかった」


 一兄がまだメソメソしている。

 ウザい。


「俺だって一兄と同じだよ。スコロールの奴、まさかあんなやり方をしてくるなんて。相変わらず趣味の悪い。しかも最後のアレは何だ。まるで今生の別れみたいな言い方しやがって」


 俺がブツブツと愚痴をこぼせば、一兄はウンウンと頷く。

 しかし今は不気味な森から抜け出すことが重要かもしれない。

 別に『怖い』というわけではないのだが、『いい気分』はしない。

 寧ろ早く離れろと第六感(シックスセンス)が言っている。

 気がする。


「とりあえず、走るか?」


 一兄に言われて、俺は同意する。

 そして、トントンと、つま先を地面に打ち付けてから、俺と一兄は一気に走り出した。

 ここはもう『地球』ではない。

 多少スピードを上げたからと言って、こんな森の中で注目を集めたりすることはないだろう。

 俺と一兄は目にも留まらぬ速さで森を駆けた。

 ただし、不安はある。


「一兄、当然、方向わかって走ってるよね?」

「いや。立ち止まってるよりはいいかなって思ってるけど?」


 やっぱり!!

 方向音痴のくせに先に走るなよ!

 後ろにいていつの間にか消えてるよりはマシだけど!!


「よし、飛鳥、飛ぶぞ」


 突拍子もなく一兄に言われて、俺は面倒だと舌打ちをする。

 しかし、一兄が足に力を入れ、高く飛び上がれば後を追うしかない。

 俺達二人は途中の枝をうまく使いながら一気に木の上まで登り、木の頂点に達してから俺と一兄は辺りを見渡した。

 森が繋がっていて正直、今ではどちらか来たのか分からない。

 それでも目を凝らして見れば、ある一定の場所だけ緑がないところを見つける。


「多分、あれは街だよな?」


 遠目なのでどんな形状かはわからないが、人工的な建物が見えるから、間違いないだろう。

 地球のようにビルが立ち並んではいないので、どこまで発展しているのかここからは分からない。

 それでも森の中でウロウロとするよりはずっといい。

 結局スコロールはこの『ニュー・アース』がどんな世界なのか、はっきりとは教えてくれなかったし。

 そうして思い浮かべるスコロールの顔。

 もしここにスコロールがいたらこう言うだろう。


『そんなもの、自分で調べろ』


 思い浮かべるんじゃなかった。

 無責任すぎるだろ。


「一兄、言葉って通じると思う?」

「さあ? 話してみないとわからないな」


 うわ、ド正論で返された。


「でも俺とお前なら何とかなる。違うか?」


 一兄の言葉に少し胸がこそばゆくなる。


「何だよその根拠のない自信。どっから出てくるんだよ。キモっ」


 つい、素っ気なく答えてしまう俺なのだが、一兄は気にする素振りは見せない。


「そんなもの。今までの経験と飛鳥への信頼だ」

「あっそ」


 恥っず!

 はっきり言って、一兄は俺を過剰評価し過ぎだと思う。

 というか、弟補正が強すぎる。

 キモい、ウザい。

 

「ま、大事な弟っていう以前に、俺はお前のこと、頼りにしてるよ。よろしくな、相棒」


 そう言って拳を出してくる。

 本当、恥ずいことを平気でするんだから。


「俺達の場合、相棒って言うより半身だろ」


 そう言って俺は軽く一兄の拳に自分の拳をコツンとぶつけた。

 俺も大概恥ずい奴だな。 

 

「俺達双子だもんな! ははっ、違いない」

「ウっザ」

「そう言いながら、拳を返してくれるお前は、やっぱり可愛い弟なんだよな」


 ニヤニヤする一兄。

  

「俺の兄貴がキモい。無駄にキモい。キモいキモいキモい」

「ははっ、違うな。兄弟愛に溢れていると言え!」

「そんな愛はいらん!」

「照れるな、照れるな」


 照れてない!

 全く、俺達は小学生かっ! 


「何言ってんだ。高校二年生だろ?」


 人の心を読むなよ。


「読んでない。わかるんだよ。直感ってやつ? 双子故の意思疎通! これぞ以心伝心だ!」


 ウザいウザい。

 俺の兄貴が超ウザい。

 俺は木の上から飛び降り、走り始めた。

 一兄もその後に続く。


「この速度なら日が暮れる前に着きそうだな」


 余裕そうに言う一兄に俺はスピードをあげる。

  

「はぐれたら置いていくからな。方向音痴め」

「へいへい。しっかり弟についていきますよ」


 そんな会話をしながら俺達は地面の上ではなく、木の枝から枝へ飛び移りながら街へと向かった。

 読んで頂きありがとうございます。

 ここまでが第一章、出発編となります。

 楽しんでもらえてると嬉しいです。

 毎日時間は不定期ですが、投稿していく予定ですので、これからもよろしくお願いします!


 カクヨムにて先行投稿中です。

 もし、もっと読みたい!

 明日まで待てない! という素敵な方がいらっしゃいましたら、作者の活動報告のリンクや、目次にリンク先のアドレスを貼っていますので、そこからカクヨムに起こしくださいませ。

 では、また次回お会いしましょう!

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