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レッドムーン ―ニュー・アース編―  作者: 瀬田 彰
第一部 第一章 出発編

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第3話 皆一緒には行けない

 閲覧ありがとうございます。

 2話目で疲れた心を癒して?ください。


(やなぎ)を連れて行ってはいけない」


 胡桃(くるみ)姉さんが消えてから5年後、赤い月が出る直前に、育ての親であるスコロールに言われたのはこの言葉だった。


「なんで!?」


 異議を唱えたのは一兄(かずにい)だった。

 スコロールは「ふー」と、長い息を吐く。


「柳には『地球』と『ニュー・アース』を繋ぐ『扉』、正式には『創造主の扉』の『門番』を担わなければならない。だから連れて行ってはいけない」

「何で……」


 納得ができない。

 一兄の言葉から、そんな気持ちが伝わってくる。

 勿論俺も納得できていない。


「そんなに柳を置いていくのが嫌なら、行かなければいい」

 

 スコロールが冷たく言い放つと、一兄はハッと顔を上げる。

 しかし、スコロールの瞳は初めて会ったあの日と同じく目尻は下がっているのに、その瞳は暗い。

 まるで俺達を突き放すかのような視線だ。


「お前達の道だ。好きに選べばいい。ただし、この機会を逃したら最後、『呪い』によって死ぬことになるがな」


 ――え?

 俺と一兄は目を見開いた。


「『曽祖父(あの男)』にかけられたその『呪い』は、解かなければお前達の『命』を奪う。そういう『呪い』、なんだよ」


 当たり前かのように言うスコロールの胸ぐらを、一兄は掴んで怒鳴りつけた。


「どういうことだよ!! そんな話、聞いた覚えないぞ!!」

「そりゃ、言ってねえからな。初耳で当然だろ。逆に知ってたら俺はお前達に恐怖するね、『怖いよ〜』ってな」


 顔色一つ変化させずに言うスコロールを見て、一兄は舌打ちをし「バカにしてるのかよ」、と呟きながらスコロールの胸ぐらから、乱暴に手を離した。

 スコロールは乱れた胸元を直しながら口を開く。


「俺だって意地悪で黙ってたわけじゃねえよ。自分達の年齢を考えてみろ。いくら背伸びをして、精神年齢を大人に合わせようとしても、チビすけだったお前達に、『お前達は死ぬぞ』なんて言えるわけねえだろうが」


 それは至極真っ当な答えだった。

 悔しいが否定のしようもない。


「俺としてはそれを伝えるよりも、もっと身体を鍛えたり、腕を磨いたりする方が当時のお前達には最優先事項と判断した。大体、当時のお前達が知ったら絶望するか、自分の『力』とか、何にも考えずに闇雲に突っ走ってただろうが! え?」


 そう言ってスコロールは、一兄のデコを指でキツツキの様に突く。

 痛そうだ。


「他人ごとのような顔してるが飛鳥、お前も! 当時のままだと、ただの人形同然だったろうが!! あ?」


 俺も一兄と同様、スコロールにデコを指で突かれそうになるが、ギリギリで避ける。

 俺は一兄とは違う。

 そう思ったのだが――。


「甘いっ!」


 スコロールは逆の指で突いていた。

 不覚。

 そして地味に痛い。


「僕、一兄や飛兄(あすにい)と一緒に行けないの?」


 突然声がしたのでその方を見れば、そこには弟の柳がいた。


「「柳!!」」


 俺と一兄の声がハモった。

 そして二人して柳の元へと行く。


「聞いてたのか……」


 一兄の顔が曇った。


「スコロールに『呼ばれた』から」


 それを聞いた俺達はキッとスコロールを睨みつけた。

 スコロールは知らん顔をしている。

 恐らく、わざと話を聞かせたんだ。

 柳が聞いたらどう判断するか、『わかった上』で。 


「僕、一兄や飛兄に死んでほしくない! その為なら僕、どんなことでもできるし、我慢するよ!」


 目に涙を溜めながら言う柳。

 まだ小学生なのになんて健気。

 そんな柳の肩に手を添えながら俺はスコロールを睨みつけた。


「スコロール、一応聞く。柳が可愛いから手元に置きたいっていう理由じゃないよな?」

「お前らじゃねえんだぞ! んなわけあるか!! というか、俺をどんな目で見てるんだよ!!」


 こんな『目』ですが?

 三人で疑わしいと言う気持ちを込めて見れば、スコロールは「お前らなあ」と拳を握りながらプルプル怒りに震え、俺達三人はスコロールから拳骨をくらった。

 

「ヤッホー! 柳くん、スコロールさんに呼ばれたから来たよー! ってどうしたのその頭!? またスコロールさんに余計なこと言ったの!?」


 ひょいと顔を覗かせたのは、久原家の側近と言える位置にいる山銀(さんぎん)家の長女、『山銀(さんぎん)(あや)』である。


(あや)ちゃん!」


 柳の顔がパア! と明るくなった。

 柳とは同い年で、柳の『許婚』だったりする。

 柳は三男に当たるし、別に家を継ぐとか関係ないから自由にすればいいのだが、実はこの『許婚』には裏がある。

 この可愛らしい笑顔の柳が、自分の使える全てのものを使って、『彩』を自分の『許婚』にしたのだ。

 何故そこまで柳が彩に執着するのかは知らないが、我が弟ながら恐ろしい惚れっぷりと行動力である。

 一兄(この兄)を見ればわからんこともないが。

 うちの家系は『愛が重い』のかもしれない。


「柳は我が家の天使だけど、彩のことになるとドス黒いからなぁ」


 一兄がこそっと俺に耳打ちをしてくる。

 それを聞いた俺は眉間にシワを寄せた。


「一兄がそれ言う? 全然説得力ないけど?」


 嫌味を言ってやれば、一兄はクククと笑う。


「俺は隠すことなく『黒い』からいいの。それにそのうち飛鳥(お前)もそうなるよ。久原家の人間は『愛が重い』らしいからな。なあ? スコロール」


 一兄がスコロールの顔を見て言えば、スコロールは「ノーコメント」と意味するように胸元より少し上で腕をクロスさせ、バツマークを作った。

 一兄が「うわ、ムカつく」と青筋が浮かび上がる。


「一兄、ダメだよ! 飛兄には『そういうの』はまだ早いんだから!」


 いや、小学生に言われる俺って何?

 地味に傷つく。

 そして周りも「確かに〜」みたいな雰囲気をかもし出された。

 意味わからん!

 そう思う俺に一兄が俺の肩に手をポンと置いた。


「つまりだ。お前も心底心を動かされる女の子でも現れたら、お前にもこの気持ちがわかるってことさ」


 益々わからない。

 一方的な許婚や、押し付け的な好意は受けたことがあるが、それのことを指すなら、正直興味ないし、どうでもいい。

 寧ろ相手にするだけ不快になるからいらない。


「というか、その言い方をするってことは、一兄に『彼女』がいるってこと?」

「ん? ま、そうだな。うん」


 あ、コイツ視線をそらしやがった。


「はいはい、お喋りは『ニュー・アース』に行ってからゆっくりしろ。そろそろ時間だからな。各自持ち場につけ〜」

 

 スコロールが手をパンパンと叩く。

 柳と彩は「了解!」と元気よく敬礼をし、庭へと駆けていった。

 読んで頂きましてありがとうございます。

 はい。

 まだ異世界に行ってませんね。

 わかってます。

 ですがそういう話なんです。

 ご了承くださいませ。


 ですが、もしよければ次の話でもお会いしましょう。

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