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レッドムーン ―ニュー・アース編―  作者: 瀬田 彰
第一部 第一章 出発編

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第2話 歪な一族、双子の過去

 閲覧ありがとうございます。

 この回は少し重めの話となりますので、苦手な方はご注意ください。


 『俺達の『家』は変わっている』


 物心がついたときには、既にそう感じていた。

 何故なら、家にテレビのヒーローが持っているような、複雑な武器が飾ってあったり、通信機器の様な物や、よくわからない機械、更には薬局に置いてない、見たこともない変な薬も多々あった。

 そしてそれら全てを使いこなせるよう、修行に明け暮れる日々。

 これが俺達の『当たり前』であり、日常だった。


 だから初めてホームドラマを観たときは、これが『普通』なのかと衝撃さえ走ったくらいだ。

 一般的に『普通じゃない』こと、それが俺達にとっては『普通』だった。


 そして『あの日』から色んなことがおかしくなっていった。

 それは父さんが俺を久原家の『次期当主』に決めたときだった。

 幼い日のことだがよく覚えている。


 大人達の刺すような視線に俺と一兄は幼さ故に恐怖を感じていた。

 そして、俺達は『曽祖父』に呼び出された。

 同じ敷地にいるのに会ったことはなく、父さんも曽祖父からの呼び出しに怪訝な顔をしていた。


『お前達が例の(・・)双子か』


 ドスの効いた恐ろしい声が部屋に響く。

 父さんが違和感を察知し、引き上げようとしたときだった。


やっと(・・・)、見つけたぞ』


 曽祖父が笑ったと思った次の瞬間、俺達二人に曽祖父の手が伸びてきた。

 俺は右手を、一兄は左手を掴まれ、真っ暗な部屋に引きずり込まれた。


「「父さん!!」」


 俺と一兄は父さんへと手を伸ばす。

 父さんも俺達に手を伸ばした。

 しかし、手があと少しで触れる寸前のところで襖がパンッ! と締められて俺達は父さんと完全に隔離されてしまう。

 逃げようとしても掴まれた手が熱くて離れない。

 遠くで父さんが俺達の名前を呼ぶ。

 そんな状況で曽祖父だけが不気味に笑っていた。


『一、感情は表に出すな。お前が笑えば人が死に、お前が怒り狂えば人が死に、お前が苦しめば人が死ぬ。笑顔を見せるな、怒りを見せるな、苦しみも見せるな。お前の無こそ世界の平和』


『一、涙を流すな。涙が流れればそれが災いの始まり。お前の涙を見た者には必ず悲惨な死が訪れる。涙を枯らせ、流すなら己の血を流せ。そして化け物と怖がられるがいい。それこそがこの世の幸福となろう』


『一、お前の中に蜘蛛がいる。蜘蛛はやがてお前の心臓に毒を打ち込み、お前は死ぬ。だがそれこそ人の喜び。呪うなら己を呪え。己が生まれた己を呪え』


『一、お前は死ぬことも許されぬ。お前の死は災いの死。お前が生きれば厄災が起きる。お前は死ぬことも、生きることも許されぬ罪な存在。お前は生を恨み、死を望め。されど死ぬのは許さぬ。死の瀬戸際、苦しんでこそ我らに幸福が訪れる』

 

 不気味な言葉と共に、曽祖父に掴まれた『手』が火傷を負ったかのように熱くなり、俺達は悲鳴を上げた。

 そのあまりの恐怖と痛さに俺達二人は意識を失ってしまう。


 そして目が覚めたときには父さんと母さん、そして姉の胡桃(くるみ)姉さんとまだ赤ん坊の(やなぎ)が、俺達二人のベッドの横にいた。


 安堵する半面、俺達は互いの手の甲におぞましい『蜘蛛』がいることに気がついた。

 あまりの恐怖に二人で再び悲鳴を上げ、泣き叫びそうになったとき、『スコロール』が止めに入る。

 このとき初めて『スコロール』と対峙したのだが、子どもながらに白衣を着た少し胡散臭いおじさんと思った印象が強い。

 スコロールが何を考えているか、よくわからない。

 目尻は下がって優しそうなのに、どこか曇りがかった瞳がそれを助長させていたのかもしれない。


『お前達が受けたのは『呪い』だ。どんなものかわかるまで、人とは接してはいけないし、そのときは感情を一切表に出してはいけない』


 それが初めての『スコロール』の言葉であり、俺の絶望の始まりだった。

 俺と一兄はバラバラの場所に閉じ込められた。

 父さんと母さんですら会話も、面会もできない。

 そしてそんなとき『また』曽祖父が俺の元へやってきて、外へ無理矢理連れ出した。

 何事かと思えば、曽祖父が笑いながら俺をいたぶり、罵り、そして最後には『逃げればお前の両親や兄弟が(こうむ)ることになるぞ』と聞かされ、俺は逃げ場を失いただただ怯える日々を過ごした。

 

 そして気がついてしまった。

 曽祖父の嫌がらせに便乗する一族達がいることを。


『呪いがくるぞ』

『呪われる』

『一族の恥さらしめ』


 どのくらいそんな日々が続いただろう。

 俺の心はあるときを境に遂に壊れ、笑うことも、泣くこともできず、当然怒ることもできない状態になってしまった。


『飛鳥!!』


 やっと母さん達と面会できたとき、俺の心はもうなく、身体という存在がそこにあるだけだった。


『飛鳥、すまない』


 再びスコロールと対面したとき、言われた言葉が『それ』だった。

 その日から家族は俺の心を取り戻そうと必死になってくれた。

 けれどその生活は長く続かなかった。

 今から10年前、末っ子で妹の伽羅(きゃら)が生まれた頃だった。

 その日は真っ赤な『赤い月』が出ていて、辺り一面は真っ赤に染まっていた。

 時間はわからない。

 わからないけど、俺と一兄、胡桃姉さんと弟の柳を残して敷地内にいた父さんや、母さん、妹の伽羅、そして一族の大半が消えてしまった。

 何故俺達だけが無事だったかは分からない。

 スコロールの側近的存在の左緒(さお)右緒(うお)に守られていたからかもしれない。

 それから俺達兄弟は、スコロール達によって育てられた。

 胡桃姉さんもまだ幼かったのに、気丈に振る舞うことにより、残りの一族をまとめてくれたこと、まだ状況がよくわかっていない柳の無垢な笑顔に俺達は救われた。

 しかし、今から5年前、再び『赤い月』が姿を見せた日に胡桃姉さんと残っていた一部の好意的にしてくれた一族が消えてしまった。

 そしてそのときにスコロールから告げられる。


「『赤い月』は異世界、『ニュー・アース』に行くための『扉』が現れるトリガーだ。次に『赤い月』が現れるのは5年後。そのとき、お前達は『地球』から離れ、『ニュー・アース』に行かなければならない」


 その手にかけられた、『呪い』を解くために――。

 読んで頂き、ありがとうございます。

 そして、ここまで読めた!という方、ありがとうございます。

 めちゃくちゃ嬉しいです。

 そして、そんなあなた。

 是非次回の話でもお会いしましょう!

 では!

 

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