第4話 双子、特別なアイテムを貰う
閲覧ありがとうございます。
ぼちぼちやっていこうと思いますので、よろしくお願いします。
庭の方へと駆けていく柳と彩を見て、一兄は二人を引き止めようとした。
「おい、まだ俺達は行くって言ってな――」
「じゃあ、死ぬか?」
一兄の言葉をスコロールがズバッと遮る。
「お前が死ぬのは勝手だが、死ぬならここで待ってろ。死んだ後、『彼女』とやらには俺から連絡してやるよ」
スコロールの嫌な言い方に一兄はギロリとスコロールを睨みつける。
そう、俺達二人の答えはもう決まっている。
決まっているけど、踏み出すのが怖い。
それをスコロールもわかっている。
本当、食えない育て親。
「あ! そうそう。左緒と右緒は俺のお使いで見送りに来れねえから、コイツを渡しておく。お前達への餞別だ」
そう言ってスコロールは俺と一兄にポンポンと黒い指抜きグローブを投げてきた。
「片手だけ?」
「俺が左手で、飛鳥が右手?」
俺と一兄はそう言って互いに顔を見合わせる。
しかも渡されたのは互いに『呪い』として『蜘蛛』が刻まれている方にはめる用だ。
よく見ると、それぞれの手の甲に当たる部分に4センチほどの大きさの赤い勾玉の形をした装飾品がついている。
「それは『俺』が作った特注のグローブだ。それをはめたらお前らの手の甲に描かれてる『呪い』、つまり『蜘蛛』の動きが少しはマシになるっていう凄い代物だ。この十数年、包帯で隠してきたみたいだが、『足』、肘くらいまで伸びてるんだろう?」
スコロールに指摘され、俺と一兄は再び顔を見合わせた。
うまく隠していると思ってはいなかったが、そこまでバレているとは思わなかった。
「ふん、何年お前達を親代わりとして育ててきたと思っている? そのくらい見抜けて当然だろ」
う――。
そんな顔をされては何も言い返せない。
「そのグローブは常にはめとけ。そういう『仕様』だからな。あ、包帯は取っとけよ。蒸れるから」
そう言われて俺達は包帯を取る。
幼い頃には手の甲に収まるほどの大きさだったのに、今では広がって手首あたりに『蜘蛛』がいる。
自分の腕だが見ていていい気分にはなれない。
「サイズはぴったりだな」
一兄はグローブをはめた手をグー、パーと動かしながら呟いた。
俺はというと、右にはめるのは違和感がある。
邪魔ではないけれど。
腕の包帯を全部取ってしまうと蜘蛛の足が目立つので、俺と一兄は再び隠すように腕に包帯を巻いた。
「それにしても随分でかい勾玉だな」
俺がそう呟くとスコロールはニヤリと笑みを浮かべた。
あ、ヤバい。
スコロールのスイッチを押してしまった気がする。
「流石飛鳥だな! 良いところに目をつけた!」
スコロールは目をキラッキラと輝かせた。
「実はその勾玉にはスコロール印のウルトラスペシャルDX! な機能がついているのだ!」
俺と一兄は目を座らせる。
こうなったら最後、スコロールは止まらない。
「聞いて驚け、見て俺を讃えろ! その勾玉には生きてる生物以外のものなら、何でも入れることができる! ……(てか、生命活動してなけりゃ人間でも入れられるんだけどな)。武器でも本でも、服でも何でもござれ!! しかも、食べ物の鮮度キープ保管付き! 熱々な鍋を入れても取り出せばあっちっちでレンジいらず! 冷たいものと一緒に入れても問題なし! さあ、お前らも入れて入れて入れまくれ! な、高性能機能がついているのだあああああ!!」
ああああああ――。
スコロールの声が部屋にこだまする。
俺と一兄は表情を変えずに無言でスコロールを見つめていた。
いや、なんか凄いのはわかる。
多分現代社会において、とてつもない発明なのだろう。
それでもその前に色々と突っ込みたい。
先に口を開いたのは一兄だった。
「つまり某有名な未来の猫型ロボットがお腹に着けてるポケットとか?」
その後に俺も続く。
「某有名作品の青いムニムニモンスターの胃袋とか?」
「「そういうもの?」」
俺達は声をハモらせて聞いた。
「ちっがーう!! 違う違う違う!! そりゃちょっとは参考にしてみたり、かっこいいかな? とか思ったけど! これは俺のオ・リ・ジ・ナ・ル!!」
スコロールは拳を手に熱く語る。
「いいか? 『発明は冒険だ!』そして『ロマンだ!』俺はこの信条の元、日々発明を繰り返しているのだ!!」
うおおおお! と叫ぶスコロール。
「……で? 出し入れするときはどうするんだ?」
一兄が冷静に質問すれば、スコロールはハッとして我に返る。
「ん? 普通に『入れ!』とか『出てこい!』みたいに『思うだけ』でいいぞ? 別に声に出してもいいけど、それは格好悪いんじゃないか?」
スコロールは残念そうな顔でこちらを見た。
そんな俺達は心の中で壮絶な突っ込みを入れる。
(思うだけでいいのかよ!!)
(もっとかっこいい言い回しとかないのかよ!!)
いや、そんなものあっても邪魔だし、鬱陶しいからいらないな。
俺達双子はスッと現実に引き戻された。
「便利かどうかは使ってみないと分からないな」
お? 一兄、早速使ってみるのか?
ちょっとワクワクするな。
「あー、期待させといてなんだが、今『地球』では使えないぞ?」
スコロールが無理無理と手を振る。
は?
使えない?
「いいか? こういうのはファンタジーだ。『異世界』に行ってこそ本領を発揮する! お前達の使い方次第では物を入れる機能以外も『目覚める』かもしれん」
目覚める?
どういうことだ?
スコロールは軽く笑みを浮かべる。
「それは『秘密』だ。こっちにも『色々』と事情があるんでな」
どんな事情があるのか気になるが、昔からこの顔をしているときのスコロールはさっきと違い、途端に口が固くなるんだよな。
結局、何がどう秘密なのか分からないまま庭へ向かうと、外は一面真っ赤に染まっていた。
10年前と5年前と同じだ。
俺達は当時を思い出して、俺は右腕を一兄は左腕を無意識に押さえる。
「あ! 一兄! 飛兄!」
柳と彩は仲良く手を繋ぎ、俺達に向かって元気に手を振っている。
何も知らない。
何も覚えてないから二人は笑っていられる。
それが少しだけ憎たらしく、羨ましい。
スコロールは俺達を一瞥し、庭の中心部へと向かう。
俺達二人は戸惑いながらその後に続いた。
「じゃ、行くぞ」
庭の中心に来たスコロールは、腕をあげて指をパチンと鳴らす。
すると突然突風が吹き荒れた。
「うわああ!」
「きゃああ!」
柳と彩が悲鳴を上げる。
「二人ともこっちへ!」
俺と一兄で二人が飛ばされないように押さえる。
そんな状態なのに、スコロールだけが平然とした顔で立っていた。
「スコロール、これは一体何なんだ!?」
俺が声を上げるがスコロールは俺を一瞥しただけだった。
風はどんどん強くなる。
周囲からバチバチと何かが弾ける音がしたかと思うと、目の前の光景がぐにゃりと歪んだ。
「なっ……!?」
思わず声が漏れる。
今度はバキバキと音が聞こえたかと思うと、空間が裂け、大きな亀裂が現れた。
俺達はそれを見た瞬間に飲み込まれてしまう。
元いた場所からは、人影はなくなり静けさが戻った。
そして、赤い月は消えて白い月だけが辺り一面を照らしていた。
読んで頂きありがとうございます。
時間はどうするかまだ決めかねていますが、毎日はアップしようと思っていますので、これからもよろしくお願いします。
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一気に読めます。
では、よければまた次回でお会いしましょう!




