第21話 若い兵士の苦難(ダックス視点)
閲覧ありがとうございます。
今回は主人公の視点ではございません。
気をつけてください。
『ファーストタウン』と呼ばれているこの街の門番をしている若い兵士のダックスは、今非常に困惑していた。
数時間前に雰囲気が少し変わった少年達を通したことがそもそもの始まりである。
しかし、それは別に珍しいことではない。
(たまにいるんッスよね。ああいうちょっと訳ありな不思議な感じの人達)
その程度の認識である。
そしていつも通り仕事をしていたのだが、街に血の狼が現れたと、大勢の人が押し寄せてきた。
定期的に現れるこの血の狼という連中は、このファーストタウンの西の森をアジトにしている野盗共だ。
その為、西の門にはそれなりの腕っぷしを持つ兵士が配属されている。
しかし、どういうわけか血の狼達はそれをものともせず、毎度街へ侵入してくる。
その為、街の住人達による西門の兵士の評判は悪かった。
別に彼らが悪いわけじゃない。
彼らはきっちり仕事をこなしている。
ただ何の障害もなく血の狼が街に現れることから、実は内通しているのでは? と疑われるのは仕方がないことだ。
けれども、それは兵士達にとっては大きな痛手で、血の狼が現れたらダックスのいるここ南の門か、東の門へと人々が押し寄せてくるのが恒例となるのだから、たまったものではない。
そして今回、ヒッチャカメッチャカになるこの場所を更に滅茶苦茶にする事態が起こった。
なんと、数時間前に通した少年達が、血の狼達の一味の『ゴンザの集団』を引きずって連れてきたのだ。
「こ、これは一体どういうことなんだ!!」
叫んだのは俺の先輩兵士のアルマさん。
この人、俺とアイラが結婚したら義理の父親になる予定なんッスけど、まあ、こういうときだけちゃんとやってます感出すから面倒なんッスよね。
はあ……。
「アルマさん。そんなこと俺に向かって言われても困るッスよ。とりあえず、さっき隊長に連絡したんで、もう少ししたらこっちに来ると思うッスよ」
「はあ!? それまで俺達でコイツらを見張るのか!? できるわけないだろ、そんなこと! 何でこんなブサイクな野郎共を眺めていなきゃならないんだ!」
言うところはそこッスか?
アルマさんって好みにうるさいッスからね。
はぁ、早く帰って可愛い俺の婚約者のアイラに癒されたいッス。
けれども、仕事はきっちりしないといけない。
何故なら、お金を貯めないとアイラにウエディングドレスを贈ることができないからッス!!
はあ、切実……。
「……えっと。それでこいつらを本当に君達『二人が』捕まえたんスよね? 道端に落ちてたとかじゃないッスよね?」
もう一度確認を込めて二人の少年に聞くと、兄の方が「そうですよ」と爽やかに、弟の方は黙って頷いた。
それでも、俺の旧知の仲であるメッシュとウッドが興奮気味に話してくるし、嘘ではないと思うッスけど。
「それじゃ、俺達はこの辺で」
兄の方が後はよろしく、と言わんばかりに去ろうとするのをウッドとメッシュが必死に引き留める。
一方、血の狼達からは、ブーブーとブーイングの嵐ッス。
「くそっ! 逃げるな卑怯者!」
「俺の財布返せ!」
「詐欺だ!! 俺達は騙されたんだ!!」
いやいや、大の大人が少年達に向ける言葉ではないッス。
しかも財布返せって、何を言ってるんッスかね。
まさか罪を少年達に擦り付けるつもりッスか!?
それは断固阻止せねばならないッス!
「よく聞け。お前達は法により、これから中央都市の騎士団に引き渡しとなる。無論、処分はそこで下される。今まで散々悪事をしてきたんだ。しっかり罪を償うんだ」
よし、かっこよく決まったッス。
何か今の俺、すごくないッスか!?
かっこよかったッスよね!?
皆!
俺を尊敬の眼差しで見ても良いッスよ!
「お願いです! クリスを助けるためにはお二人の力が必要なんです!!」
メッシュが少年達にすがっていて、誰も俺のことを見ていなかったッス。
「メッシュ、少年をナンパするなんて、アルマさんじゃあるまいし、見苦しいからやめるッスよ」
とりあえずメッシュを少年達から引き離す。
「そうじゃない! ダックスは二人の戦いを見てないからそんなことが言えるんだ! この二人は強い。きっと血の狼を完膚なきまでに叩き潰してクリスを助けてくれる!」
何で俺に対してよりも、少年達に目を輝かせてるんッスか?
少年達は俺達より年下なんッスよ?
それなのに、そんなキラッキラな目で見るッスか?
そりゃ顔も二人ともキラッキラッスけど。
「何言ってるんスか。彼らはまだ少年ッスよ?」
いくらなんでも子どもに血の狼と戦わせるなんてあまりにも酷ッス。
きっと偶然が重なったんス。
うん、きっとそうッス。
それなのに、メッシュはしかめっ面でこちらを見てくるッス。
だから、何でそうなるッスか?
ふと、少年達と視線が合えば、戸惑ってる雰囲気が感じ取れる。
うん、早く解放してあげよう。
ここにいては周りにろくな大人がいないッス。
「少年達、街にはまだ残党がいるかもしれないッスから、くれぐれも気をつけて行くッスよ? 今回は運が良かったものの、報奨金に目が眩んで、自ら関わったりしたら危険だから絶対にダメッスからね!」
アドバイスをしつつも、しっかり注意する。
うん、俺って出来た大人ッス。
でも、自分の言葉に酔ってる間に少年達はそそくさと出て行ってしまったッス。
あ!
宿とかも斡旋してあげた方がよかったッスかね?
いやいや。
しっかりしてそうな少年達だったし、あまり干渉しても嫌がる年齢ッスよね。
きっと大丈夫なはずッス。
さてと、俺は友人二人に『事の顛末』を聞かないとダメッスね。
「メッシュ、ウッド。さあ本当のことを話すッスよ。……あれ? メッシュ? ウッド?」
何故か、メッシュとウッドの姿は既になかったッス。
俺に残されたのは、不満をブツブツ言っている将来義父になる先輩兵士と、うるさく喚いている血の狼の下っ端の連中……。
え?
これ、俺一人で隊長来るまで相手にするんッスか?
何の罰ゲームッスか?
酷くないッスか?
凶悪なゴンザが大怪我を負って大人しいからまだマシかもしれないッスけど、複雑ッス。
「餓鬼が俺の腕をやったんだ!!」
はあ、ゴンザがまた叫び出したッス。
「ガ、ガキに殺される!!」
またわけのわからないことを……。
「ほら! 静かにするッスよ!」
あーあ。
目の焦点が合ってないッスから、あれは裁かれた後に精神病棟送りッスね。
ま、今までやってきたことを考えれば、自業自得ッスけど。
こうして、ダックスは自分の仕事へ戻って行く。
しかし、少年二人を街へ戻したことにより自分の仕事がさらに増えてしまうことを、彼はまだ知らない――。
読んで頂き、ありがとうございます。
スッス言ってて、語尾移ってないッスか?
大丈夫なあなたはすごいッス。
それでは、よければまた次回お会いしましょうッス!
次回の視点は主人公に戻るッスよ!




