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レッドムーン ―ニュー・アース編―  作者: 瀬田 彰
依頼編

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第22話 お金の話

 閲覧ありがとうございます。

 今回は視点戻ってきています。


「あー! やっと解放された」


 一兄が大きく伸びをした。

 あんな狭い場所にいたらそうなるのは当然だろう。


「でも『報奨金』が貰えるなんて、ラッキーだったな。悪い人はお巡りさんへ突き出せっていうのは世界共通。どこでも一緒なんだな」


 うんうん、と一兄は首を縦に振る。


「そうだな。通貨問題も解決したし」


 そう言って俺は振り返り、さっきまでいた『南門』を眺めた。

 ゴンザを倒した後、一兄が残っていた血の狼(ブラッディウルフ)達から武器と財布(カツアゲ)をしたところまではいいとして、その後どうするかという話になった。


『そんなもの、放置でいいだろ』


 一兄がそう言い出すと、ウッドとメッシュに全力で止められた。


血の狼(ブラッディウルフ)達を捕らえたら、門番に突き出すことになってるんですよ』


 正直面倒臭いと思ったが、ゴンザはともかく、ほかの雑魚(ザコ)達がうるさい。

 (しき)りに一兄のことを盗人扱いしてくるので、誤解されないように突き出すのが一番だと俺達は判断した。

 だから俺達は彼らを引きずり、元来た道を戻って門番に届けたというのに、あの中年兵士が怒り狂って俺達に文句を言ってきたのだ。


『こ、これは一体どういうことなんだ!!』


 このセリフを聞いて、一兄の営業スマイルが一瞬だけ壊れそうになった。

 しかし、ウッドとメッシュがすぐさまあの若い兵士を引っ張り出してくれたおかげで、何とか地獄絵図にならずに済んだ。

 若い兵士は二人の知り合いだそうで、喋り方はアレだが、仕事は確実にやってくれるらしい。

 それでも何度か「本当ッスか?」と聞いてくるので、途中うんざりしたが、それにはちゃんと理由があった。

 なんと、あのゴンザという男には、高額の報奨金がかけられていたらしい。

 しかし俺と一兄はこの世界の通貨をこの時初めて見るわけで、高額と言われてもピンとこない。

 それが逆に功を奏したのか、『誰か』の手柄を横取りしたとは思われなかったようだ。


『さあ、これが報奨金ッスよ』


 そう言って目の前にキラキラとしたこの世界のお金を差し出されたのだが、コレにどのくらいの価値があるのか、俺達二人に理解などできるわけがない。

 二人して固まっていると、若い兵士は首を傾げた。


『もしかして、見たことがないものも混ざってるッスか?』


 慣れてないと思われたのだろう。


『それなら、教えてあげるッスよ』


 至れり尽くせりとはこういうことなんだろう。


『まず、お金は高い順から、最高額の紙幣(ノート)、その次が白金貨(プラチナ)、後は金貨(ゴールド)銀貨(シルバー)銅貨(ブロンズ)ってなってるッス。普段よく見るのは銀貨と銅貨ッスね。金貨は一気に価値が上がるからお釣りの着服に気をつけるッスよ』


 なるほど、覚えておこう。


『そしてこの白金貨と紙幣は通常では流通してないんで、必ず換金可能な同業者組織(ギルド)や換金専門の銀行(バンク)に行く必要があるッス』


 若い兵士の説明によると、紙幣と白金貨を直接使うのは大きな事業などを起こす時だけらしい。


『とりあえず金貨一枚あれば一ヶ月は食うことに困ることはまずないッスよ。そうそう! 貨幣は各国共通なんで、心配無用ッス!』


 こうして若い兵士は胸を張って説明を終えた。

 こちらが質問をしなくてポンポン話をする彼は日頃からよく喋るのだろう。

 こうして俺と一兄は思わぬ情報収集ができたのであった。

 

「しかし、報奨金って、ゴンザは指名手配犯みたいなものだったんだな」


 一兄が意外そうに言う。


「あの若い兵士の説明だと、人殺し、窃盗、恐喝に詐欺、やれる犯罪は全部やってたみたいだし、そうなるのは必然でしょ」


 あの男の経歴など、興味はない。

 でも――。


「少なくとも、今まで捕まらなかったのは、『剣』のおかげだったんだろうね」

「剣? お前がいただいたやつか?」

「違う。貰ったんだ。俺は一兄みたいに勝手に取ってない」


 そう言うと、一兄に「いや、似たようなものだろう」と呆れ顔で言われる。 


「とにかく、あの剣からは、何か『意思』みたいなのを感じた。俺に使ってほしいというか、本来の持ち主は少なくともゴンザではないっていう『勘』だな」

第六感(シックス・センス)か」


 一兄は顎に手を当てて考え込む。


「別にお前の第六感を疑うわけじゃないが、呪い(右手)が痛むとかはないんだな?」


 一兄が気にするのはやはりそこだった。

 俺も逆の立場ならそう思うだろう。


「ああ、今のところ特に何もない。寧ろスッキリしてるくらいだ。そうだ! 一兄も持ってみる?」


 俺は勾玉から剣を取り出し、一兄の前へと突き出した。

 しかし、一兄はジッと剣を見つめ、指一本も触れずに首を横に振った。


「一兄?」

「俺はゴンザの二の舞になるのは嫌なんだよ」

「一兄がそうなるわけないだろう?」

「当たり前だ。けれど俺にはこの剣を見ても俺の(・・)っていう感じがしないんだよ」


 そういうものなのか。


「俺としては、お前に害がないならそれでいい」


 もし害をなすようだったらどうするつもりだった?

 何か怖くて聞けないけど。


「そうだな。当然叩き折って、木っ端微塵にして、ゴミクズにしてやる」


 剣相手に怖いよそれは。


「俺、何も言ってないよな?」


 思わず口に出して聞くと、一兄がニヤリと笑う。


「わかるよ。俺とお前は『双子』だからな」

「俺は一兄のことそこまで分からないけど?」

「そりゃあ、俺の『愛』がそれだけ強いってことだからな」


 ドヤる一兄を見て俺は一言、「キモい」と呟いた。

 読んで頂きありがとうございます。

 お金のお話でした。

 リアルだなあ。

 では、次回もよければお会いしましょう!

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