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レッドムーン ―ニュー・アース編―  作者: 瀬田 彰
第一部 第三章 ファーストタウン編 vsゴンザ編

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第20話 学習しましょう

 閲覧ありがとうございます。

 お約束回です。


「おい! 黒髪のガキが消えたぞ!?」

「どこへ行ったんだ!?」


 慌てる血の狼(ブラッディウルフ)達。

 俺はそれを目を座らせて眺めていた。

 バカな奴等。


「あの……あの子は大丈夫なんですか?」


 ウッドに聞かれて俺は眉を寄せる。


「俺の兄貴が弱いとでも?」

「い……いえ! 決してそんな事は、ただ姿が消えてしまったので……」


 ウッドがしどろもどろになった。

 俺はそれを見て「ああ……『そんなこと』ね」と呟けば、ウッドは「そんなことって……」と複雑そうな表情を浮かべた。

 けれども、実際に『そんなこと』だ。

 他に言いようはない。

 すると、血の狼(ブラッディウルフ)達が声をあげ始めた。


「うわっ!?」

「何だ!?」

「ギャッー!?」


 そんな彼らの隙間を黒い物体がスッスッとすり抜けて行くのが見える。

 全く、どっちが遊んでるんだが。

 呆れる俺の目の前に、一兄が姿を現した。


「よおし! 大漁、大漁!」


 ガチャガチャと音を立て、抱えきれないほどの武器を持っている。

 上機嫌だ。


「……取りすぎじゃないか?」


 別にいいんだけど。


「戦利品だからいいの、いいの!」


 ドヤる我が兄。

 それを見て引く弟の俺。

    

「いいか? 俺はお前を見て学んだ。勝者が敗者から物を奪――じゃない、敗者が勝者に物を献上するのは、生命の摂理だと」


 いやそれ、武器だし。

 しかもその思考は危ないし。

 意味わかんないし。

 俺と同じにしないでほしい。

 

「言っとくけど、武器屋からとってきたりしてないからな!」

「当たり前だ」


 それこそ窃盗の容疑でお尋ね者になってしまう。

 後ろでは血の狼(ブラッディウルフ)達があたふたと慌てている。

 中には財布がない! とか言ってる奴もいた。


「一兄、財布って、どういうこと?」


 俺がジト目で一兄を見れば、一兄はあからさまに目をそらした。

  

「いや、これは戦利品なわけだよ。俺がそんな犯罪めいたことをするわけがないじゃーないかー」 


 後半棒読み。

 つまりは確信犯。

 

「そもそもさ、コイツら弱いのに武器だけ上物ってちょっと見合ってないと思うんだよね。しかも相手は悪党。悪党相手に甘いことは言いっこなしでしょ」

 

 あ、本音が出た。

 そう思っていると、一兄の手から武器が全て消えた。

 一兄の左手のグローブについている勾玉に収納したのだろう。


「戦利品は、キチンと保管しておかないとね。大事な売り物なんだから」


 売る為に取ってきたのか。

 確かにお金は大事だけど、これではどっちが悪役かわかったもんじゃないな。

 ん?

 つまり俺もこのままでは一兄と同じ?

 それは嫌だな。

 俺は目を回しているゴンザの元へ歩き、上から見下ろす。


「おい、お前の剣。俺が譲り受けたからな。奪ったんじゃないぞ。『譲って貰った』だけだからな」


 これでよし。

 あ、一応同意させておこう。

 俺は足でゴンザの頭を動かし、頷いたような素振りをさせた。

 これで窃盗ではなくあくまで譲渡という扱いになる。

 何も問題はない。

 ふと視線を感じてそちらを見れば、メッシュとウッドが呆気にとられた顔でこちらを見ていた。


「何か?」


 見世物じゃないんだけど。


「いえ、その、何というか――」


 戸惑う二人。

  

「俺の方が悪党に見えたとか?」


 俺の言葉にウッドとメッシュは首を横に大きく振って否定する。


「いえ、律儀だなあと、思いまして……」


 ウッドが頬をポリポリかきながら言った。


「ああ。今のやつ?別に。兄貴と同じようにはなりたくなかっただけだから」


 そう言って一兄を親指で差せば、一兄はガーンとショックを受けている。

 一方、一兄に武器を取られた血の狼(ブラッディウルフ)達は俺達に対して怒り爆発寸前だった。


「くそっ! ガキと思って舐めてればいい気になりやがって!」

「しかもガキのくせにあんな変わった『形』の収納ポケットを持ちやがって!!」

「ゴンザはやられちまったが、まとめてかかれば問題ないはずだ!」

「相手はガキ二人! 一気に行くぞ!!」


 そう言って一兄に武器を取られた奴らが一斉に攻めてきた。

 (素手)で俺達に勝てるとどこを見て思ったのだろうか。


「だから、相手の力を見極めるのもまた強さだって言ってたのに」


 一兄が鼻で笑う。

 そうして、一兄は攻めて来る血の狼(ブラッディウルフ)達をまるで踊るかの如く、打ちのめしていく。

 俺は面倒臭いので、『おこぼれ』を適当に叩く程度だ。

 それでも欠伸をする余裕は十分にある。

 結果は当然こちらの圧勝。


「すごい!!」


 ウッドとメッシュは尊敬の眼差しで俺達二人を見てくる。


「いえいえ、乗りかかった船ですし、こっちもお金の(生きる)ためですから」


 社交辞令のような返事をする一兄に、メッシュは前に飛び出し、一兄の手を取った。

 デカい男に手を握られ、一兄の顔が引きつる。


「やっぱり俺の目に狂いはなかった! お願いします『冒険者』様! クリスと巻き込まれた彼女達をどうか助けてください!!」


 それは最初にメッシュが俺達に言っていた言葉だ。

 しかも冒険者、様?

 何で冒険者に『様』が付くんだよ。

 一瞬混乱しそうになるのだが、俺達はすぐに落ち着いた。

 何故なら、今はそれを止める心強い味方がいる。

 そう。

 メッシュの友人のウッドというこの眼鏡をかけた人だ。


「俺からも頼みます! 最初はメッシュがヤケになっていると思っていました。ですがあなた方ほどの実力ならそれも不可能ではありません!!」    


 待て待て。

 何故そうなる。

 ここは制するところじゃないのか?


「ああ、神よ! 俺達は感謝申し上げます」


 遂にメッシュが拝み始めた。


「あの……俺達は神様じゃないんですけど?」


 一兄が口をヒクヒクさせながら言う。


「ええ、わかってますよ。私達はあなた達に巡り合わせてくれた『神』に感謝しているんです」


 うん。

 ちょっと何を言ってるかわからない。


「この世界には色んな『神様』がいるってことです。何を信仰するかは個人に委ねられているんですけどね。恐らく今のメッシュは『出会いの神』に感謝しているんでしょう」


 ふふふ、と笑うウッドだが、俺と一兄は益々理解できない。

 

「そういうわけで、冒険者様! これも『神』からのお導き。どうか俺達に力を貸してください!!」


 まだ俺達はこの世界の『基礎』も分かっていない。

 それなのにそんな厄介事を頼まれてもどうすればいいかわからない。

 逃げるのは簡単な気もするが、この手のタイプはしつこく追いかけ回してくるはずだ。

 それは敵意を持って攻めてくる奴とは別の意味でやりにくい。

 俺と一兄は、どうやったらこの二人から違和感なく離れることができるのかを思案することになりそうだ。

 俺達二人はそう思って、頭を抱えるのだった。

 読んで頂き、ありがとうございます。

 愚か者は学ばないという回でした。

 うん、ただそれだけです。

 よければまた、次回お会いしましょう!

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