第17話 ゴンザの剣
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さて、ちょっと空気が変わってきましたよ。
「どけ!! 俺がやる!!」
オロオロする血の狼達を押しのけて、いかにも悪人面といった人物が現れた。
しかし、正直に言って強そうには見えない。
それなのに何故空気がピリつくんだろう?
俺と一兄は念のため警戒を怠らないように神経を集中させる。
すると、後ろで尻もちをついた音が聞こえた。
「ゴンザだ――」
ウッドが顔を真っ青にし、声を震わせながら言った。
「気をつけてください! ゴンザはここにいる者達の中で一番強いんです! その『剣』で何人もの人が無惨に殺されたと聞いています!」
ご丁寧に忠告してくれるが、俺と一兄からみれば、このゴンザという男、風格は確かにあるが大したことはない。
警戒すべきは別の『何か』だ。
すると、ゴンザが持っている『剣』が視界に入ってきた。
「あの剣――」
俺と一兄はジッと『剣』を見つめる。
それはファンタジーに出てくる勇者が持つようなものではないが、どこか惹かれるものがあった。
それと同時に、ゴンザという男が強いのではなく、そいつが持つ『剣』が凄いのだと感じる。
何故ならば、普通の剣がこれほどまでに美しく輝き、異彩を放つわけがない。
「いい剣だ」
思わず声に出して呟いてしまう。
それを聞いたゴンザはニヤリと笑う。
「ほう。青臭いガキのくせにいい目利きじゃねえか。コイツはとある場所から頂戴した『特別な剣』だ。これだけはトニーや頭にだって、やらねえ。まあ、奪われそうになっても、この剣は俺と相性がいいのか、離れようとしねえがなあ」
そう言ってゴンザは剣を眺めながら高揚する。
気持ち悪っ!
しかしどんなに甘く評価しても、ゴンザに特別な力があるとは思えない。
となると、あの剣がゴンザから離れない理由があるということか。
俺が剣をじっと見つめていると、一兄に肩を叩かれた。
「飛鳥、深追いはやめろ。剣はまずい。普通の『剣』じゃないぞ」
一兄にもわかったんだ。
あの剣が普通じゃないことを。
しかし、次の一兄の言葉で俺は衝撃を受ける。
「あんなに『禍々しい剣』、見たことがない」
「禍々しい? 何を言ってるんだ? あんなに『美しい』のに?」
「は?」
俺と一兄の会話が噛み合わない。
どういうことだ?
「ガタガタうっせーぞ! この剣は俺のだって言ってるだろうがあ!!」
ゴンザが剣を振り下ろせば、砂埃がブワッとゴンザを中心として波を打つ様に広がる。
一兄は前腕で顔を遮るが、俺はその場で立ったままだった。
風は確かに向かってきたが、宙に舞う砂埃は何故か俺を避けたからだ。
それを見た一兄が驚いて目を見開く。
「どうなってるんだ?」
俺も不思議に思ったが、ゴンザが持つ剣をもう一度見つめたとき、ドクンと剣からの鼓動を感じた。
それは『共鳴』と言えばいいのだろうか。
高鳴る鼓動。
熱くなる血管。
そうか、『あの剣』は――。
「一兄、悪い。あの剣、俺が貰い受ける」
「え?」
一兄が驚くのとほぼ同時に俺は駆け出していた。
あの剣を俺は『知っている』。
あの剣は譲れない。
あの剣は俺の剣だ。
「って、おい飛鳥!?」
驚く一兄だが、小さなため息をついて「仕方がないな」と残りの雑魚を相手にすることを決める。
俺は建物の壁を蹴りゴンザを翻弄する。
一度でも、一瞬でも剣に触れれば、きっと剣は俺に応えるだろう。
「クソっ! ちょこまかちょこまかと!!」
苛立つゴンザに俺は隠し武器の『くない』を二本取り出した。
オリジナルの武器の『くない』なら複数手に持ち投げるのが一般的。
しかし、俺専用のこの『くない』は投げるためのものじゃない。
父さんの『くない』が防御と破壊に特化しているとするならば、俺の『くない』は接近戦タイプ。
普通の『くない』より細長く、短剣に近い。
そしてこれは二刀流として使う。
ガチャンとゴンザがくないを剣で受け止めた。
「嘘だろ!? アイツ、飛鳥のスピードを捉えた!?」
一兄が声を上げるが俺からしたらそれは『想定内』だ。
「ぐぬぬぬぬぬっ」
ゴンザの腕に血管が浮かんでくるが、『剣』は俺を弾こうとはしない。
やはり、この剣。
喋りはしないが、意思はある。
俺はゴンザを押し返した。
「なっ!?」
よろめくゴンザの腹部を『くない』の持ち手で一発食らわせる。
ゴンザは一瞬呻くがすぐに剣を振ってきた。
俺はバク転でかわし、『くない』をクルリと回して構え直した。
「今お前の動きを見てはっきりとわかった。お前は剣に認められているんじゃない。使われている。お前はただの駒にすぎない」
俺の言葉にゴンザは腹部を押さえながらも、いくつもの青筋を立てた。
「何を勝手なことを!! そんなわけあるわけがない! 俺はトニーからも、頭からも、この剣を奪われることはなかった!!」
叫ぶゴンザに、まだ残っている雑魚達が「そうだ!そうだ!」と声をあげ始める。
「ゴンザは今やトニーさんと頭も手が出せないんだぞ!!」
「ゴンザ、そんなガキさっさと殺っちま――!?」
一兄が一番近い雑魚に拳を食らわせた。
「わーわー、うるせえんだよ。群れないと強がれない雑魚どものくせに偉そうに」
一兄はそう言って舌打ちをすると、雑魚達は震え上がった。
舌打ちぐらいで情けない奴らだな。
俺は彼らを一瞥してから、ゴンザへと視線を戻す。
ゴンザは身震いをした。
俺は、ゴンザに来いよとクイッと手を動かし、挑発をかける。
「信じられないなら、試してみるといい。相手をしてやる」
すると、ゴンザは顔を真っ赤にして俺へと向かってきた。
単純。
俺は再び地面を蹴って飛び上がり、ゴンザに『くない』を振り下ろした。
ガチャンと再びゴンザは俺のくないを受け止める。
しかし、見切っているわけじゃない。
俺は表情を変えることなく、繰り返し『くない』を打ち込む。
しかし、何度やってもガチャン、ガチャンとゴンザは俺の『くない』を剣で受け止めた。
読んで頂きありがとうございます。
初めて名前ありの敵が出てきました。
さあ、この後どうなるのでしょうか。
よければ次回またお会いしましょう。
もし、続きが待てない!という素敵な方は、カクヨムにて先に公開中です。(10話以上先行投稿中!)
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