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レッドムーン ―ニュー・アース編―  作者: 瀬田 彰
第一部 第三章 ファーストタウン編 vsゴンザ編

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第16話 双子の実力試し

 閲覧ありがとうございます。

 さあ、いよいよ異世界!!って感じです。


「ケケケ、やっと気がついたか、メガネの兄ちゃんよぉ」


 メッシュとウッドのやり取りをしている間に、俺達はすっかり血の狼(ブラッディウルフ)と名乗る柄の悪い連中に囲まれてしまった。

 メッシュとウッドは、あわあわと慌てるが、俺と一兄は至って普通だった。

 別に怖がるレベルじゃない。

 もし、コレがこの世界の基準なら大したことないな、と思ってしまうほどだ。


「俺達、血の狼(ブラッディウルフ)から逃げ切ろうなんざ、百億万年早いんだよ」


 うーん、雑魚の言うお決まりのセリフだな。

 それよりも百億と万年ってなんだ?

 この世界の言葉なのか?


「百億万年って、馬鹿なんですかね。こいつら」


 ウッドが少し冷静になったのか、眼鏡をクイッと上げながら呟いた。

 うん、ただ単に目の前の奴らが馬鹿なだけらしい。


「ヒッヒッヒ。そこのおこちゃま坊や達も、巻き込まれたのは運の尽きだと諦めるんだな」

「うっひゃー、よく見ればこの坊っちゃん達、綺麗な顔してるじゃねぇか。捕まえたらいい値で売れそうだなあ?」

「本当だぜ、特に茶髪のやつは上手く化粧すれば女に見えるかも知れねえぜ。その手の趣向の奴なんざ、ゴロゴロいるからなあ」


 キモ。

 と言うか、俺のどこが女だと?

 そりゃ一兄と違って俺は元モデルの母さんに似てはいるけれど、身長だって一兄とほぼ変わらないし、筋肉だってちゃんとついてるし、どう見ても男にしか見えない。

 この世界の男の目はズレてるのか?

 門番の中年兵士もそうだったが、どういう感覚なんだ。

 ふざけるなよ。


「飛鳥、抑えろ」


 俺の静かな怒りに気がついた一兄がなだめる。


「そこの黒髪の兄ちゃんも、需要はありそうだけどな」

「そうだな。黒髪美人的な」


 ギャハハハハハと下品に笑い始める集団。


「あいつら、殺すか?」


 一兄が顔に青筋を立てた。

 おいおい。

 それにしても、コイツら馬鹿っぽいけど、持ってる武器は見たところ一級品だ。

 ふむ、これぞ豚に真珠。

 一兄が俺を見て「貰うか?」と唇を動かしてきたので、俺は同意の意味で頷いた。

 そんな俺達二人の反応を見て、血の狼(ブラッディウルフ)の連中は気に食わなかったのだろう。

 怒り始める。


「何か言えや、こらぁぁぁぁ!」

「くおぉら、ガキども! 俺達は泣く子も黙る血の狼(ブラッディウルフ)一味だぞ! 痛い目見たくなけりゃ、さっさと逃げろや!!」

「一瞬でも背中を見せて逃げりゃあ、その瞬間に切り刻んでやるがなあ! ひゃっひゃっひゃっ!!」

「それとも怖くて動けないか? ああぁん?」


 ふむ、これが動けないように見えるのか。

 そう見える(・・・)なら、全員眼鏡を買ったほうがいい。

 間違いない。


「まあ、そこの『ひ弱』な坊っちゃん達は後でいい。それよりもメッシュ、まずはお前だあ!!」


 メッシュの肩がビクッと揺れた。

 デカい図体だからそれだけでもかなりの迫力だ。

 中身はめちゃくちゃ弱そうだけど。


「まさか、この俺達に歯向かっておきながら、逃げ切れると思ってるのかあ?」

「思うわけねえだろ。何せ、そこにいる坊っちゃん達と同じ年くらいの嬢ちゃん達に助けてもらわないと、逃げられねえくらいだもんなあ?」


 嬢ちゃん達?

 俺と一兄は顔を合わせ首を傾げた。

 そういえばメッシュはクリスと『彼女達』と言っていたな。

 その『彼女達』は仲間ではなくて俺達と同様巻き込まれた被害者ってことか。

 可哀想に。


「けっ。そんなこと(・・・・・)は、もういいじゃねぇか。オラァコイツが前々から気に食わなかった。デカい図体のくせして妙に女性にモテるしよお。でも、いい機会だ。この際、骨の髄まで痛めつけてやるぜえぇぇぇ!」

 

 ふむ。

 事情はよくわからないが、何かムカつく。

 

「一兄」


 俺がポツリと言葉を出すと、一兄は「ふっ」と鼻で笑う。


「はいはい。このまま立ち去るのは簡単だけど、この人達を無下には出来ないってか?」

「……そこまでは言ってない」


 ただムカつくだけだし。

  

「ま、いいんじゃないか? 俺達は売られた喧嘩を買うだけだし?」


 一兄がそう言いながら、手をコキコキ鳴らし始めた。

  

「それに、この世界の実力を測るにはちょうどいいさ」


 なるほど、一兄のそういう考え方もありかもしれない。

 

「もし、予想以上に強かったらどうする?」


 こんな奴ら相手にあり得ないけど。


「そんときゃ全速力で逃げればいいさ。俺とお前ならそのくらい余裕だろ? ま、そんな必要はないだろうけど。見た感じ、俺達が本気を出す必要もないね」

  

 俺と一兄はメッシュとウッドを守る様に二人の前に立った。


「き、君達!?」


 戸惑うウッド達を俺達は一瞥(いちべつ)し、逃げたければ逃げればいいし、加勢も不要という意味を込めて顎をクイッと動かした。


「わかりました。隙があればそうします」


 ウッドが返事をした。

 とりあえずこれで、彼らが悲鳴をあげて背中を見せることはなくなった。

 余計な手間は省きたいからな。


「飛鳥、飛び具は使うなよ? この世界で調達できるか分からないからな」

「相手の力量を量る前から言うこと? てか、素手でやるのかよ」


 面倒臭え。


「文句言うなよ。無駄にデカい声出して大勢で押し寄せてくる輩は弱いって、昔から決まってるし、素手の方が力量を測りやすいだろ」

「はいはい、さよですか」 


 そもそも、その言い方だって見かけで決めてるし、だったら見定める必要はない気もする。

 でも俺は疑問を感じながらも深くは追及しないことにした。

 興味ないし。


「いくぞ」


 一兄の合図で俺達は地面を蹴った。


「なにぃ!?」


 血の狼(ブラッディウルフ)達が、「わあ!!」と声を上げる。

 そんな顔してる余裕はないと思うぞ。

 そうしている間に一兄は一番近い奴の前に姿を現した。


「ひっ!? いつの間――!?」


 言い終わる前に一兄はそいつの顔面に蹴りを入れて、ぶっ飛ばす。

 そうすると吹っ飛ばされた奴の巻き添えを食らって数人が巻き込まれた。


「ぐわあああ!!」


 そうやって周りの視線を集めている間に俺は一兄と距離を取る。

 そして、血の狼(ブラッディウルフ)の中でそこそこ図体がデカいスキンヘッドに目をつけた。


「ん?」


 スキンヘッドの男が気がつくのとほぼ同時、言葉を発する前に腹に軽く拳を一発食らわせる。

 げっ!?

 このスキンヘッド、見た目より腹の脂肪が多かった。


「ぐえええええ――!」


 スキンヘッドは胃の中の物を吐き出した。

 汚い!!

 こうなったら、後ろから行くしかないな。

 俺は再び地面を蹴って宙を舞う。

 そして、彼の後ろへ周り込み、背中を蹴った。


「げっ!?」


 まさかの背中も脂肪だった。

 驚いて声が出てしまったじゃないか。

 しかし、腹のときとは違いまだ弾力があったのか、彼はドン! と前に飛び、想定よりは少なかったが、ちゃんと複数人巻き込んでくれた。

 あの脂肪は無駄じゃなかったな。

 その間、一兄は他の奴らを次々と倒していく。


「ああ! もう! 髪邪魔!!」


 そう言いながらも身体の一部の様に髪を揺らしている一兄に違和感はない。

 邪魔であるのは間違いないが。


「くそ! 何なんだよこのガキどもは!!」

「動きが読めねえ! ぐえ!!」


 無駄口叩いてる暇があるなら少しでも警戒したらいいのにガラ空きなんだよな。


「ぐおっ!?」


 俺達は一人、また一人と血の狼(ブラッディウルフ)達を倒していく。

 動きは遅いし、連携も取れてない。

 おまけに、パニックに陥る奴らは武器をめちゃくちゃに振り回すだけだから、俺達にかすることもない。

 喧嘩を売る前に相手は選べとよく言ったものだ。

 勝ち目のない喧嘩を売るほど馬鹿なものはない。

 俺と一兄がそう思っていたときだった。

 ピリッと空気が変わった。

 読んで頂きありがとうございます。

 お楽しみいただけましたでしょうか?

 異世界で一番最初にザコに会う。

 お約束です。

 そして、よければまた次回お会いしましょう!

 

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