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レッドムーン ―ニュー・アース編―  作者: 瀬田 彰
第一部 第三章 ファーストタウン編 vsゴンザ編

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第14話 初めての異世界の街

 閲覧ありがとうございます。

 さあ、新しい章の始まりです!


「わぁ、これはすごいな」


 俺と一兄は門を通った後、息を飲んだ。

 第一印象は中世のヨーロッパだ。

 それは幼い日に読んだおとぎ話の中にいるようで、自分でも驚くほど圧巻だった。


「当然だけど、車とかはないな」


 一兄の言葉に俺は頷く。

 しかし、電灯みたいなのはあるから文明が全く発展していないというわけでもないようだ。

 うーん、微妙に中途半端な感じだな。


「まぁ、贅沢は言いっこなしだ。言葉は通じるし、後は適応力があれば何とかなりそうだってことがわかったし、それでいいじゃないか」 


 確かに。

 

「それでさ、図書館みたいな場所はないか? 字の読み書きの対策をしたい。いや、その前に通貨の方が必要だな。いくら田舎から出てきたという話にしてても通貨を理解してないのはヤバいからな」


 そう言って俺に地図を渡してくる。

 一兄、地図を見る練習くらいしとけよと睨めば、お前も俺の前ではちゃんと喋れと返される。

 誤魔化すように地図に目を通せば、何やら色々と書いてあるが読めそうにない。


「字は流石に無理か」


 俺はそう呟いたのだが、何かが動いた気がして首を傾げる。

 俺は見間違いか? と、目をこすってからもう一度地図を見てみた。

 すると、地図上の字がウネウネと変形し始めた。


『|*%#ε≧<ω《ようこそ!ファーストタウンへ》』


「う――」


 目眩のような、乗り物酔いのような、とにかくグルグルとした感覚に襲われ、口を押さえた。

 ヤバい。

 吐きそう。


「どうした? 気持ち悪いのか?」


 俺は口を押さえたまま、黙って一兄に地図を見せる。

 今口から手を離したら色々と出てきそうだ。

 一兄はそんな俺の姿を変に思いながら、地図を眺めそして――。


「うえ、気持ち悪い。字が……こう……ウネウネ〜って動いた」

「だろ?」


 俺と一兄は木陰に移動し、腰を下ろす。


「ああ、ダメだ。まだ頭がグラグラする。水(出てくれ)」


 ポン! と勾玉から水筒が出てきた。

 ご丁寧にスコロールの字で『水』と書いてある。

 俺と一兄はとりあえずそれを飲み、「ふーっ」と息を吐く。

 

「字の読みは、とにかく慣れるしかないな。多分、そのうち気にならなくなるだろう」

「――だといいが」


 正直、かなりきついぞ。

 

「でも、これで言葉と字は理解できることがわかった。これは大きな一歩だ。後は通貨の知識だな。飛鳥、図書館はわかるか?」


 だから自分で見ろってば。

 そう思いながら再び地図を見る。

 ウネウネと変換されていく字。

 最初よりは慣れたが、いい気分じゃない。

 これじゃあ、図書館に行くのはいいが、苦労しそうだな。

 そう思っていたら図書館を見つけた。


「一兄、図書館はこ――」

「キャーッ!!!」


 俺の言葉を遮るように、悲鳴が上がった。

 何事だと俺達も含め、周辺の人々の意識はそちらへと引っ張られる。

 すると、街の中心部から逃げてくる人の群れが迫ってきていた。


「おいおい、何だありゃ」


 一兄が驚くが、驚いている場合じゃない。

 まるで牛のように接近してくる人々を避けなければならない。

 とりあえず、俺達は目にとまった店の中へ逃げ込んだ。


「いらっしゃい。何かお求めで?」


 品のいい亭主が出迎えてくれる。

 しまった!

 確認せずに入ってしまった。

 ここは何の店だ?


「すみません。俺達、客じゃなくて。あの……あっちから人が大勢向かってきて、驚いて――」


 一兄の言葉に亭主は怪訝な顔をした。

 新手の強盗とでも思ったのかもしれない。

 亭主が俺達を警戒しつつ、窓側へ近づいたとき、何人もの人々が店の前を駆けていく。

 亭主は慌てて店の扉を開け、少し遅れて走ってきた青年を捕まえた。 

 

「ひっ!? 何すんだよ! 俺は急いでるんだ!」

「おい、この騒ぎ、何があったんだ?」

「何って、血の狼(ブラッディウルフ)が現れたんだよ!」

「何だって!?」


 驚いて亭主の手が緩んだ隙をついて青年は手を振りほどき「あばよ!」と駆けていってしまった。

 一方の亭主は顔を青ざめさせ、そして青年が駆けてきた方へと視線を向ける。


血の狼(ブラッディウルフ)はこちらにはまだ来てないな」


 そう呟いて俺達の存在を思い出したのだろう。

 亭主の眉間にしわが寄る。


「坊や達、客でもないなら、悪いが店は閉めさせてもらうよ。出ていってくれ」


 そう言われたら出ていくしかない。

 俺と一兄は追い払われるように、店から閉め出されてしまった。


血の狼(ブラッディウルフ)ってなんだろうな? 名前からして悪党っぽいけど」


 一兄が言う。

 俺も気にはなるが、情報を集めたくても辺りからは人がいなくなってしまっている。

 周りの店も次々と扉を閉ざしているから、これでは聞くどころではない。


「はあ、何だよ。せっかく街に入ったのに外に出されるのか?」

 

 踏んだり蹴ったりとはこのことかもしれない。

 一兄がガックリと肩を落とす。


「この調子じゃ図書館も閉まってそうだもんなぁ」


 閉まってそうじゃなくて、閉まっていると考えるべきだ。

 出だしから曽祖父(クソジジイ)に邪魔され、街に入ってもトラブルで追い出される。

 こんな調子では何年かかるかわからない。

 俺と一兄は頭を抱えた。


「ジッとしていても仕方がない。とにかく今は誰かを探して事情を聞こう。これだけデカい街なんだ。どこかに一人くらい人がいるだろう」

「そうだな」

 

 それしか方法がない。

 向きを変えたとき、急に目の前が暗くなった。

 見上げると、男が立っている。


「へ?」


 驚いて、ギョッとしてしまう。

 俺と一兄は別にすごい長身ではないけど、低いわけでもない。

 それを悠々超えるなんて、2メートルは超えてないか?

 この人。


「アンタ達、見ない顔だが旅人か?」 

「俺達に、何か?」


 一兄の声から緊張感が伝わってくる。

 見た目は一般人だが、この男からは気配を感じなかった。

 まさかこの男が血の狼(ブラッディウルフ)か?

 俺も万が一に備えていつでも対応できるように身構えた。


「頼む! 名も知らぬ、まだ幼い旅人よ! クリスと彼女達を助けてほしい!!」

「はいい?」


 驚きから一兄の語尾が変に上擦った。

 一方の男は、地べたに額を擦りつけて懇願し始める。

 おいおい、何なんだよ。


「どうか! どうかっ!」 

「あの、えっと、ちょっと!?」


 一兄が困惑の表情をしつつも、とりあえずこの土下座男を起こそうとするが、男は頑なに「助けてくれ!」を繰り返すばかりだ。

 そして、遂には俺達それぞれの足にしがみついてきた。

 こうなると俺達は身動きが取れず、完全に困ってしまった。

 読んで頂き、ありがとうございました。

 はい、ゆっくりする暇がありません!

 そんな彼らの旅はここからです。

 では、よければまた次回、お会いしましょう!

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