第13話 双子と凸凹門番
閲覧ありがとうございます。
さあ、いよいよ入ります。
何が待ち受けているのか、お楽しみに!
足を進めた俺達は、途中でグローブについている勾玉から旅用の荷袋を取り出した。
今度は言葉に言うことはない為、自然に取り出せた。
「気がついてよかったな。手ぶらで旅をしていますなんて、この世界の人と言葉が通じるか云々の前に怪しすぎるし」
一兄の言うことはもっともだ。
身なりってのは大事だ。
俺は黙って頷いた。
更に街へと近づいていくと、どこから現れてきたのか、人が増えている気がする。
見れば、商人、冒険者、旅芸人、色んな人がいる。
耳を澄ます限り、相手の言葉は聞き取ることができそうだと俺と一兄は目配せをする。
こうなると後は、こちらの言葉が通じるかどうかだ。
「では次の者」
いよいよ俺と一兄の番がきた。
近くから見ると、彼らは門番と言うより、鎧もガッチリしてるし、完全に兵士だな。
「どうも! 俺達、兄弟で旅してるんですけど、入れますか?」
一兄が様子を伺いつつ相手に警戒されないようにニッコリと笑顔で話しかけた。
身分証明とかいるんだろうかと構えるものの、特に何もなさそうだ。
チェックする意味あるのか? これ。
「へ!? その年で旅っすか!? もしかして家出ッスか?」
若い兵士が話しかけてきたので、一兄は「そんなところです」とこれまた気さくに答える。
この人、随分喋り方が軽いな。
「で? そっちは、その『兄弟』かね?」
中年のいかにも偉ぶっているという印象を与える兵士が俺を指して聞いてきた。
指を差すなよ。
若い兵士が中年の兵士の手を下げさせる。
普通は逆じゃないか?
「こっちは俺の弟です。あ、訳あって口が利けないんです。すみません」
一兄が俺を隠すように前に出た。
「うわぁ、マジっすか!? 綺麗そうな顔してるのに、それは気の毒ッスねぇ」
若い兵士が近づいてきて、俺をマジマジと見てくるので、俺は身を隠すようにフードを深く被り、一兄の後ろへと逃げる。
「すみません。弟のやつ、人見知りなもので」
「いやいや、俺も見過ぎたッス。申し訳ない。一応性別の偽りがないかだけ見させてもらっただけッスけど、身長や体の作り的にどう見ても男ッスね。失礼しました!」
素直に謝られたので俺は軽く会釈だけしておく。
というか、俺のどこを見て女と思うのか!!
一兄と顔は似てなくても、背格好はそこまで違いはないはずだ。
それとも美意識が違うのか?
俺が疑問に思っていると、他の門番の兵士がグラマーな女性にデレデレしているのを見て俺は目を座らせた。
うん、大差なさそうだ。
別にあの女性に興味はないけど。
呆れながらそう思っていると、視線を感じてそちらを見れば、中年の兵士が俺を値踏みするような、舐め回すような視線を向けていた。
キモ!!
「ほお、ほんとに綺麗な顔立ちだな。上手く化粧すれば、女としても見れなくもないぞ」
中年の兵士が俺の顎を掴む。
げっ、気持ち悪っ!
「やめてください!」
一兄がすかさず中年の兵士の手を叩く。
しかし、中年の兵士はニヤリと笑みを浮かべた。
キモ!!
「そう言わずに、もう一人も中々整った顔つきじゃないか。どうだ? 一つ、『その身』で稼いでみないか? 旅には路銀が必要だろう?」
舐めるように舌を出すこの中年の兵士に俺も一兄も鳥肌が立った。
キモい! キモすぎる!!
「君達さえよければ、ぴったりの仕事があるんだ。よければ紹介を――」
中年の兵士が俺達に手を伸ばしたときだった。
「アルマさん、まだ少年の子どもを勧誘するのはやめるッスよ!」
そう言って、若い兵士は中年の兵士の頭に本を振り落とした。
ガツン! と言う音が響き渡り、一瞬だけ周辺に沈黙が訪れる。
「アルマさん。はっきり言って気持ち悪いッス。職権濫用罪ッス」
冷めた目で見る若い兵士に、アルマと呼ばれた中年の兵士はアワアワと慌て始める。
若い兵士は「見世物じゃないんで、各自仕事するッスよ」と、しっしと手を振って硬直していた人々を追いやった。
しかしアルマという中年の兵士はまだモゴモゴして、俺と一兄をチラチラと見てくる。
「いや、しかし彼らは中々の上玉だし――」
俺と一兄は青ざめて、何も言えない。
今までそれなりに色んな人がいたけれど、このタイプの人は初めてで、対応がわからない。
普通に怖い。
すると、若い兵士から殺意に近い殺気が漏れ始めた。
「ア・ル・マさん? それ以上言うと隊長の前に、まずは最愛の奥さんと愛娘のアイラに報告するッスよ? これ以上問題を起こせば次は辺境の地へ左遷になっても、文句は言えないッスよ?」
その言葉を聞いた途端にアルマと呼ばれた中年の兵士の顔色が変わる。
奥さんと娘がいるのか、このアルマとかいう中年兵士。
そしてこの若い兵士のおかげでこの後、この中年兵士はびっくりするほどおとなしくなった。
「はい、荷物も問題ないし、通っていいッスよ」
そう言いながら若い兵士は一兄へと歩み寄ってくる。
思わず距離を取る一兄。
うん、気持ちはわかる。
しかし若い兵士は気にすることなく普通に話しかけてきた。
「大丈夫と思うッスけど、もしアルマさんに何かされそうになったら15地区の3番地の85に逃げ込むといいッスよ」
ん?
もしかして、この人は親切? なのか?
「あの人、男色家だから他所でも色々と問題を起こして、今ここが本当の意味で最後の砦なんスよ。だから、万が一、声をかけられたりしたら、迷うことなく先ほど言った場所に行ってほしいッス」
あまりにも念を押されるので逆に何かあるのかと疑いたくなるが、よく見ればこの人も随分と顔が整っている。
「失礼ですが、貴方は平気なんですか?」
一兄の返しに若い兵士は目をパチパチさせ、そしてニッコリと笑いながら白い歯を見せた。
爽やか系イケメンだな。
喋り方が少し残念だけど。
「俺のことは一切心配いらないッスよ。実は俺、アルマさんところの愛娘さん、アイラって言うんスけど、その子ともうすぐ結婚するんスよ!」
「あ、それはおめでとうございます」
反射的にお祝いの言葉と、軽く頭を俺達が下げれば、彼は「ええ!? ありがとうッス。何か、照れるッスね」と頭をかいた。
そして「左遷、辺境へ左遷……」と呪文のような言葉を発しながら仕事をする中年兵士、アルマの方をチラリと見た。
「あのアルマさんも流石に義理の息子になる予定の男に手を出すほど節操なしじゃないだろうってことで、俺がアルマさんとペア組まされてるんスよ。ま、それでも万が一、欲に負けて俺に手を出そうものなら、アイラからどんな目で見られるのかを考えたら、多分手出しできないッスよ。アルマさん、アイラを無茶苦茶溺愛してるんで、アイラと欲を天秤にかけたら、確実にアイラの方が分があるッスからね。アイラに嫌われてまで、欲求を満たそうとはしないはずッス」
成るほど、そうなるとこの若い兵士は最大のストッパーとして適任だったわけだ。
「あ! そうだ。奥さんのところに逃げ込んでくれって言っても旅人、しかもこの街に来たばかりじゃ場所なんてすぐにわかんないッスよね? これ、この街の地図ッス。よかったら使ってください。ついでに一応さっき言った場所も丸つけとくッスね」
「いいんですか?」
「はい。不審者を入れないというのが最大優先事項ッスけど、街の案内をし、街の治安を守るのも我々の仕事の一環ッスから」
そう言って彼は再びいい笑顔を見せてくれる。
うん、良い人だ。
最初に疑って申し訳なかったなと俺は反省した。
こうして俺達は無事に街へと続く門を通り抜けた。
読んで頂き、ありがとうございます。
いかがでしたでしょうか。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
いよいよ街の中へ入っていきます。
では、また次回、よければお会いしましょう!




