第10話 双子の会話
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今回は気軽に読んでもらえます!
「あー!! 胸糞悪い!!」
一兄が頭を押さえながら、叫んだ。
「何なんだよ! 『さあ、これから旅の始まりだ!』ってときに水を差すようなことをしやがって、あの曽祖父!! ほんっと、嫌がらせの能力だけは無駄に高い奴め!!」
一兄の怒りが爆発し、曽祖父(偽物だったけど)への、不満は中々収まりそうにない。
ある程度不満を言ったところで、一兄は動きを止めて、ハタと何かに気がついたように悟った素振りを見せた。
「まさか、曽祖父は嫌がらせの能力がカンストしているんじゃないか? ありえる! アイツならありえる!!」
キーッ!! と再び怒りだす一兄。
最後の比喩は、ちょっと意味わからないけど。
しばらくは続きそうだ。
一方の俺はというと、『呪い』を受けた右手を見つめていた。
スコロールから常にはめておけと、言われたグローブの手の甲で、勾玉が赤く宝石の様に輝いている。
今はもう『黒いモヤモヤ』は出ていない。
スコロールはこのグローブをつけていれば『呪い』の動きがマシになると言っていたが、信じていいのだろうか。
もしかしたら、スコロールが嘘ついて――。
「飛鳥、バカな真似はよせ」
ガシッと一兄にいきなり手を掴まれて、俺は驚いて動きを止めた。
「一兄? 俺――」
あれ? 何でグローブを外そうとしていたんだ?
「疑心暗鬼になるのはわかるが、それはやめておけ。スコロールは胡散臭いおっさんだが、俺達を罠に嵌めたり、嫌がらせをするような奴じゃない。わかってるだろ?」
一兄に言われて俺は「ああ……」と頷き、グローブをはめ直した。
そんな俺の動きを見ながら、一兄は顎に手を添えながら考え始めた。
「あの曽祖父の狙いはコレだったのかもしれないな。不安にさせて、グローブを外させるつもりだったのかもしれない」
一兄はそう言って舌打ちをする。
「やっぱり気に食わないジジイだ。こんなことなら、アレは偽物だったわけだし、もう少し痛めつけてからトドメを刺してもよかったな」
一兄はそう言いながらパンッ! と掌に拳を叩きつけた。
そんな一兄を見て、俺も同じように思ってもいいのかもしれない。
スコロールを疑うようなことを考えるくらいなら、もう一発ぐらい、あの憎たらしい曽祖父の顔を殴っておけばよかった。
「ああ、でも俺、あのときは『嬉しさ』が勝ってしまったんだよな。もう、危なく顔がニヤけるところだった」
ん?
嬉しさ?
何故、ニヤける必要が?
「だって、飛鳥言ってたじゃないか。『俺の、『大事な兄貴』』って」
あ。
そう言えば夢中になってて、『うっかり』、言ってしまったかもしれない。
「いやあ、まさか飛鳥にあんなに想われていたとは。お兄ちゃんは、嬉しいぞ!」
そう言って一兄は両手を広げ、ハグを求めてくる。
「やめろ! キモい!」
俺は全力で拒否をするが一兄は諦めない。
クソ!
目を輝かせて嬉しそうにするな!
喜ぶな!!
「ほらほら、照れるな、照れるな。俺達双子なんだし、いいじゃないか!」
何をしても諦めない一兄に俺は怒鳴った。
「照れてない! バカ兄貴め!!」
そうやって言い合っていると、ふと、一兄の左手首付近が血で汚れているのを見つけた。
「一兄、それ……」
「ああ、コレか? 黒いモヤモヤが出てきたときに思いっきり掴んだからな。そのせいだな」
痛くないのか? と聞こうとしたが、愚問だ。
このくらいなら少ししたらすぐ治ってしまうのだ。
どういう理屈でそうなっているのかは知らないけど。
「ほんと、俺達の身体は人間離れしているな」
俺がそう呟くと、一兄が「違うぞ」と訂正してきた。
「『俺達』の身体が人間離れしてるんじゃない。『俺達一族全員』が人間離れした身体なんだよ。勿論、柳や彩だってその対象だ」
ビシッと言われ、俺はパチパチとまばたきをした。
一瞬言われた意味がわからなかったのだ。
そんな俺を見て一兄は頭を抱える。
「これだから、我が弟は視野が狭いんだから、困る」
視野が狭くて、悪かったな。
てか、上から目線がムカつく。
「責めてるわけじゃねえよ。心配しなくても『俺達』は、『一族』と大差ない。お前は他者からの言葉に影響されすぎなんだよ。ま、そればかりは仕方がないことなんだけどさ」
一兄は少し寂しそうな表情をしながらそう言って、俺の額に軽いデコピンを食らわせる。
その一打が地味に痛い。
「……っ! もう少し手加減しろ! バカ兄貴!」
そう言い返せば、一兄はニッと笑う。
「そうそう。そうやってもっと顔に出していけ。何にも怖くなんてないんだからさ。いきなり泣けや笑えやとは言わねえけど、ここは『地球』じゃないんだ。それに前にも言ったろ? 俺も『蜘蛛』を受けてるんだ。俺にお前の『蜘蛛』は効かねえってな」
「そんな話、俺は聞いた覚えがないけど?」
「うん、今俺が思いついた」
おい。
「でも実際、俺とお前の間で『何か』あったことがあったか?」
「いや、……でもそれは俺も『努力』してるからだし」
俺がそう言うと、一兄は「いやいやいやいや」と、否定するように手を左右に振る。
「それ、努力の方向が違うから。な?」
な? と言われてもどう返せばいいのかわからない。
困っていると、一兄は少しだけ口角を上げて、鼻を鳴らす。
「さぁ気を取り直して、とっとと街へ向かうぞ。よく見たらもう少し先にそれっぽいのがあるじゃないか」
こうして、俺と一兄は街へと足を向け歩き出した。
閲覧ありがとうございます。
実に平凡。
平凡だけど、それがいい。
そんな回です。
そして、後書きも多くは語らない。
では、もし、よければまた次回お会いしましょう!




