2広がる魔法
# 第三話 広がる魔法
近所の子供たちと魔法の練習をするようになってから、少年は以前にも増して魔法に興味を持つようになった。
遊びの中で使うのは、もっぱら小石を浮かせる魔法だった。
何度も練習するうちに、以前よりも長く石を浮かせられるようになり、少し大きな石にも挑戦するようになった。
もちろん、いつも上手くいくわけではない。重い石を浮かせようとすると、途中で落としてしまうこともあった。
それでも、少しずつできることが増えていくのは楽しかった。
ある日の練習を終えたあと、少年は父親に尋ねた。
「お父さん、石を浮かせる魔法って、風の魔法なの?」
父親は一瞬だけ目を丸くし、それから穏やかに頷いた。
「ああ、そうだよ。よく覚えていたね」
「前に教えてもらったとき、風の魔法もあるって言ってたから」
「なるほど。石を浮かせることばかり練習していたから、気になったのかな?」
「うん!」
少年は元気よく頷いた。
父親は小さく笑うと、机の上に置いてあった小さな石を手に取った。
「魔法には、いくつかの属性がある。土や石に働きかける魔法もあれば、風を起こしたり、水を動かしたりする魔法もある。火を生み出すことだってできるんだ」
「火も?」
「ああ。ただし、属性によって扱い方は違う。今まで教えていた石を浮かせる魔法と、火を生み出す魔法では、同じようにはいかないんだよ」
父親はそう説明してから、少年の顔を見た。
「少しずつ、ほかの魔法も教えてみようか」
「ほんとう?」
「もちろん。まずは、どんな魔法があるのか知るところから始めよう」
少年は目を輝かせた。
次の日から、父親の教える内容は少しずつ変わっていった。
これまで練習してきた風の魔法では、小石だけでなく、以前よりも大きな石を浮かせることに挑戦した。
最初は持ち上げることすら難しかったが、何度も練習するうちに、拳ほどの大きさの石なら安定して浮かせられるようになった。
さらに大きな石になると、まだ長い時間は保てない。それでも、少し前までできなかったことができるようになったのは、少年にとって大きな喜びだった。
続いて教わったのは、火の魔法だった。
父親は安全に練習できる場所を用意し、小さな火を生み出すところから教えた。
少年は教えられた手順を一つずつ覚え、何度も試した。
初めは何も起こらなかった。けれど、繰り返すうちに指先に小さな火が灯った。
「できた!」
「ああ、上手くできたね。ただし、火は扱いを間違えると危ない。使うときは、いつも周りに気を配るんだよ」
「うん!」
少年は頷きながら、指先に灯った火をじっと見つめた。
小さな火は、風の魔法で石を浮かせたときとは違う、不思議な感覚があった。
その後は、水の魔法も教わった。
最初は少量の水を動かす練習から始まり、慣れてくると、水を集めて小さな球のような形に保つことにも挑戦した。
こちらも、すぐにできたわけではない。
それでも少年は、父親が教えてくれたことをよく覚えていた。手順を思い出しながら繰り返し練習すると、少しずつ形になっていった。
風で石を浮かせること。
火を生み出すこと。
水を動かし、形を保つこと。
それぞれの魔法には違いがあり、どれも同じように扱えるわけではなかった。
父親はそのたびに基本を教え、少年は一つずつ覚えていった。
しばらくすると、少年は教わったばかりの魔法でも、何度か練習すれば形にできるようになっていた。
父親はその様子を見ながら、息子の覚えの早さを改めて感じていた。
もちろん、まだ幼い子供にできることは限られている。魔法を長く使い続けることも、複雑なことをすることも難しい。
それでも、教えたことを覚え、実際に使えるようになるまでが早い。
それは、少年の持つ確かな長所だった。
ある日の夕方、練習を終えた少年は、父親のそばで今日教わった魔法を思い返していた。
「お父さん、魔法って、いろんなことができるんだね」
「そうだね。まだまだ、君が知らない魔法もたくさんあるよ」
「ほかには、どんな魔法があるの?」
「それは、これから少しずつ教えていこう。すべてを一度に覚える必要はないからね」
「うん!」
少年は元気よく返事をした。
風も、火も、水も。
少し前まで知らなかった魔法が、今では自分の手で使えるようになっている。
もちろん、まだできないことのほうが多い。それでも、知らないことを知り、できなかったことができるようになるのは楽しかった。
少年は、次はどんな魔法を教えてもらえるのだろうと考えながら、お父さんと一緒に屋敷へ戻っていった。




