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リザードマンは妻と娘の待つ世界に帰りたい  作者: 須藤 蓮司


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22/24

22話

 このババア…。

 こっちは急いでるってのに、ダラダラと長話をしやがって。

 …つーか、結構元気な?

 片腕なのに。



 …まっさかザリガニ共の生き残りが、このタイミングで出てくるとはなぁ…。

 いや、まあいつかは出てくるだろうとは思ってたけどよ。


 しかも、連れてきたのがリザードマンだって?

 

 …。

 …リザードマンって聞いてから、薄々感づいてはいたけどよぉ…。

 十中八九、糞ボスとその取り巻き共だよなぁ。


 その上、聞いた感じじゃあ変異してるっぽいし。

 …マジかよ、糞めんどくせぇ…。


 …つーか、完全に俺の不始末だよなぁ…。

 やっぱあの時ちゃんと殺しておくんだったぜ。


 

 …で。


 疑問が残ったワケだが。



 何で青年は、ヤツに従ってんの?

 馬鹿なの死ぬの?


 …マジで何でよ?

 何か弱みでも握られたのか?

 誰か人質にとられてるとか?


 どうやらノーキンの野郎が生き延びたのは、青年のしわざだったみたいだけどよぉ。

 ザリガニの鋏がぶつかる瞬間に、ドサクサ紛れに空間魔法でどっかに飛ばしたんだろう。


 …空間魔法はまだ制御が不完全だって言ってたのによ。

 他の護衛は死んだんだ、ノーキンを逃がすので精一杯だったって事だよな?

 …あの青年がそんなに切羽詰ってるって、そうとうな状況だと思うんだが。


 …やっぱ何か弱みを握られてるのか?

  


 ババアの話は長かったが、おかげである程度現状は飲み込めた。

 …さっさと後を追っかけるか。

 ザリガニの足跡を追ってけば、そのうち追いつくだろ。


『アギト様、お一人で追うつもりですの?危ないですわ!』


 んなこと言ったって仕方ねぇだろう?

 下手にリザードマンの増援を待ってても遅くなるだけだし。

 …そもそも犬人族コボルトじゃあ戦力外だし。


『くっ…悔しいが、返す言葉も無い。…俺達には奴等に抗える術は無い。』


『…不甲斐無いですわ…。せめて私が変異種になれていれば…。』


 まぁ無理を言ったって仕様が無ぇよ。

 あ、そうだ。

 リザードマンの薬草を置いてってやるから、ババアや傷ついた奴等に使っとけよ。

 種族が違うからどの程度効果があるか分かんねぇけど。


『…すまないねぇ。…亡くなったリザードマンの護衛達は、犬人族コボルトがリザードマンの巣まで責任もって運んでおくよ。』


 …ああ、頼んだぜ、バアさん。



▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △



 地面の土は踏み荒らされてボッコボコだし、木々は押し倒されて酷い有様だな。

 …あと案の定、生臭ぇし。

 巨大なザリガニが通った跡がクッキリ残ってんな。


 こりゃあ…。

 アイツ等、隠すつもりが無いな。

 つーか、誘ってる?


 上等じゃねーの。

 俺に喧嘩売ったことを後悔させてやる。

 お代はテメェ等の命だ。



 …。


 ここは…。


 川だ。

 距離といい方向といい、あの「悪食」が居た川で間違いない。

 足跡と匂いは、川の下流に続いてるみてぇだ…。


 …!

 ああ!そうか!

 アイツ等、この川の下流を根城にしてやがったのか!

 だから「悪食」のヤロウは滝の上流なんかに居やがったんだな!


 …クソっ、胸糞悪ぃ!

 もっと早く気付けるチャンスはあったってコトかよ…!


 …チッ、過ぎた事はもう仕方ねぇ。

 今はさっさと乗り込んで、この糞みてぇな茶番を終わらせるだけだ。






 !!


 あれか…!


 川岸にバカでけぇ岩を積み重ねて作られた、出来の悪い砦。

 …ボロっちいなぁ…、砦って言うより、朽ち果てた遺跡みてぇだな。

 …い、いや、まぁリザードマンが作ったと考えれば、上出来なのか?

 俺達ぁ未だに横穴住まいだし。



『ギィギィ…。』



 …っと!

 まだあんなにいやがったのか、ザリガニ共…!


 …?

 ありゃ子供ガキか?

 こりゃまたずいぶんと小せぇな…。

 …って言っても、リザードマンどっこいどっこいなんだけどよ。


「おらっ!さっさと運べガキ共っ!」


 …リザードマンが、手にした槍でザリガニをぶっ叩いた。


 …ああ、この砦はあのザリガニのガキ共に作らせてるのか。

 流石に力自慢のリザードマンでも、あのサイズの岩を運ぶのはキッツいだろうしな。


 …しっかし、なぁ…。


「モタモタしてんじゃねぇ!殺されたくなけりゃ必死で城を完成させんだよぉ!」


『ギュチ…。』


 …なんか…。


 …なんかよぉ…。


 …いや、散々駆り尽くして、食料にしてた俺にゃあ、何も口出しする権利は無ぇな。

 …なんか、胸糞悪ぃけどよ…。



 さてと。


 あんな奴等を一々相手してる時間は無ぇな。

 クソ野郎と青年は何処かな…っと。


 

 …。


 お、いたいた。


 …アレがバアさんの言ってたザリガニの変異種か…。

 …うげ。

 …なんか、気持ち悪ぃな…。

 白いしバカでけぇし…。

 あれってただの変異種なのか?

 存在感っつーか…プレッシャーみてぇなモンをビンビン感じるんだが…。


 どれ、青年の方は…。


 …。

 なんだアレ…絵に描いたようなレ○プ目じゃねーの…。


 何されたらあんな目になるんだよ…。

 …まさか…本当にクソ野郎にレイ…。

 …。


 …んでもって、あっちのピカピカ成金野郎がクソの成れの果てか。

 …マジで金色の鱗なのな…趣味悪ぃ。


 …しっかし、ちぃとばっかし分が悪いな。

 あの金ピカ野郎からも、白いザリガニと同じ感じがプンプンしてやがるんだよなぁ…。


 何とか青年とコンタクトをとって、この状況を打開する方法を話し合いたいトコロだけど…。


『…なんだ、どこのドブネズミが迷い込んだのかと思えば、テメェだったのか。』


 !!


『…兄貴を追いかけてきたのか?…あまちゃん過ぎて反吐が出るぜ。』


 …バレテーラ。

 …あっそ、じゃあもう隠れてる意味無ぇな。

 馬鹿らし。


『…アギト。』


 よぉ青年!

 お前どうしちゃったのよ?

 護衛のリザードマンは死んじまったし、ノーキンも大怪我だぞ?


 …マジでどうしちまったんだよ?

 自分の群れの兵隊が殺られてるのを、黙って見てたんだってなぁ?


 …返答次第じゃぶっ飛ばすぞ、コラ。


『…ここから…離れるんだ…。…早く…!』


 あ゛っ!?

 答えになって無ぇぞテメェ!


『…何勝手なコト言ってんだ、テメェ?ノコノコやってきた相手を逃がすと思ってんのか?』


『ぐっ…!』


 げぇっ…!?

 何だこりゃ…気持ち悪っ!!

 おえっ…。


 …まるで、脳味噌を素手で掴まれてるみてぇな…。

 気色悪ぃ…!


『…なんだ?俺の力に抵抗しやがるのか?…ちっ、面倒くせぇ奴だ。』


 これは…まさかテメェの魔法か…?

 …何コレ脳味噌魔法?

 …意味わかんないし、悪趣味っ!


『…アギトっ…!コイツは…ザリガニの王を殺したんだ…!』


 ザリガニの王って…最後まで姿を現さなかった奴か?

 …つーかやっぱ居たのな、ザリガニ共の親玉。


『…前に、君が話していた…仮説…。変異の為の…特定条件…!』


 …。


 …それって。



『…王者殺害レジサイド…!!』



『…ふん。礼の一つも言ってやろうか?テメェ等がずいぶんと兵隊共を減らしてくれたからなぁ。』


 …奴が握っているのは…魔石か…?

 …魔石まで金ピカなのかよ…。


『生臭共の巣の奥で、病に弱りきった王をぶっ殺した後に、俺は自分が何になったのかハッキリ分かったぜぇ?…俺はな、王になったんだよ。リザードマンの王者、「リザードキング」になぁ!!』

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