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リザードマンは妻と娘の待つ世界に帰りたい  作者: 須藤 蓮司


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20/24

急転の20話

 なんか雲行きが怪しくなってきたなぁ。

 …今日はもう終わりにするか?


『そっスね。それに食糧庫の備蓄には、まだまだザリガニが余ってますし。』


『…流石に、飽きたんよ…。』



 転生35日目。



 今日も同期共と猟に出ていたんだが、なんだか降りだしそうな天気なんで早めに巣へ戻ることになった。


『…そういえば。アギト兄ィはあの犬人族コボルトのメスとはどうなったんスか?』


 …はぁ?

 …そんなの、どうもこうも無ぇだろ。


 …相手、犬だぞ?

 俺はケモナーじゃねぇ。

 まぁ愛犬家ではあるがな。


『…ちょっと必死な所が怪しいっス…。』


『そういえば、あのメスまた巣まで来てましたよ?…なんか「私はリザードマンと犬人族コボルトの親善の架け橋になりますわ!」…とか言ってました。』


『兄貴ぃ…本当の所を教えて下さいよぉ。…やっぱ、コマしたんスか?』


 カリブ…。

 お前ってヤツは、本当にしょうがない奴だなぁ。

 そんなに盛ってるのか?

 まだ生後一ヶ月ってとこなのに。

 

 …ケツにミサイルランスぶち込んでやろうか?


『ちょっ!?冗談ッスよ冗談!!その物騒なモン仕舞って下さいっ!』


『カリブの串焼き…。』


『ドクロはなんでちょっと楽しそうなんスか!?…お前ザリガニ肉以外ならなんでも良いんスか!?』


 …あ、冷てっ!


 ほらぁ!テメエ等がバカなこと言ってるから、本当に降り始めちまったじゃねーか!

 さっさと巣まで帰るぞ!!




▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △




『…アギトか。…なんだ、機嫌が悪いのか?それに全身ずぶ濡れじゃないか。』


 …キザか。


 クソっ…ひでぇ目に会ったぜ…。

 …つーか、外ひでぇ土砂降りだぞ。

 …コレ、この巣水没しないか?


『…恐らくは大丈夫だろうが…そこまでひどい雨なのか?』


 ありゃもう台風だな。

 前に青年が金魚に使った風魔法といい勝負だぞ?

 

 …あれ?

 っていうかお前今日外出てないの?


『…お前、朝の話聞いてただろうが。今日はボスが犬人族コボルトの巣へ出かけているから、俺は留守番だ。いくら皆の錬度があがってきているとはいえ、守備が薄くなるのは確かだからな。』


 …あ、そうだったっけ?

 そういえば、ノーキンの野郎も朝から見なかったな。


『…今回は四人ほど付き添いを連れて行った。ノーキンもその一人だ。…本当に聞いて無かったんだな…。』


 …。


 まぁ、正直寝ぼけてたよ。


 だって仕方ねぇだろ!?

 昨日夜中だってのにバカ共が押しかけてきやがって、魔石付きの武器の作り方をレクチャーしてくれとか言い出しやがったんだからよぅ!

 なんか、もうちょっとで魔法が使えそうだからとか言ってやがったけど…。

 んなモン使えるようになってから作れやカス共がっ!

 …って言っても聞かねえからよぉ…。


 …結局ほとんど寝てないわー。

 あーつれーわー。


 …つー事で、とりあえず飯食ったら寝るわ、俺。


『…そうか。…寝ろ。』




▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △




 …。


 …?


 あ、久々に夢キタコレ。



 ブロック塀に囲まれた、小さな門。

 白い壁の、小さな家。


 この家は…。


 …そうそう、俺の家だ。




 3LDK。

 35年ローン。




 子供ができた時に、思い切って買ったんだ。

 交通の便は悪いけど、その分お手頃だったし、庭も結構広かったんで即決で。

 …やっぱ子供が遊べる庭は欲しいじゃんな?




 …あ。


 …パパイヤちゃんやんけ。


 やっぱクソ可愛いなぁ、ウチのパパイヤちゃん。

 ぬいぐるみが歩いてるようにしか見えん。

 マジ天使。

 …でも、俺より娘に懐いてるんだよなぁ。


 …。


 …ああ、そうだ。


 …そうだった。




「…パパ、う○ち出た?」



 …コラ、やめなさい。

 今凄くプライベートな時間なんだから。


 家族といえどもノックも無しに入ってくるんじゃあ無い。

 …そりゃあ、カギして無かった俺も悪いんだが。



「…う○ちくさ~い!」



 そりゃ臭いよ~。

 だってウ○コしてんだもん。


 …お前だって、ついこの間までオムツだったろう?

 そりゃあ臭いウ○コしてたんだぞ?

 …何が楽しいのか、ニッコニコ笑いながら。


 

「パパ嫌~い。」



 …あ、ちょっと待て。

 待てっての!


 せめてドアは閉めていってって!!

 おいちょっと!



 サキ!



 お願いだから、閉めてってってば!! 




 …。


 そうだ。



 サキだ、咲。



 この前、三歳の誕生日を迎えたばっかりだ。


 俺に似てちょっと癖っ毛で、何故か俺がトイレに入ると覗きに来る変な癖がある。



 …俺の娘だ。



 …やっと思い出せた。

 …つーかよ、愛娘の名前なんだから忘れんなっつーの俺!

 バカっ!クズっ!ゴミっ!



「ママ~、パパがウ○チしてるよ~?」



 あっ、ちょっと!

 呼ぶな呼ぶなっ!!

 

 …頼むから!静かにウ○コさせて下さい!




「…あら~、パパちゃんウ○チしてるかぁ~。」



 来ちゃったよ!!!



 何で来るんだよぉ、もう!!



 …トイレくらい、一人にさせてよぉ!!



「…あらあら…大丈夫だよ。ウ○チしてても、彰人アキヒトはソコソコ格好良いよ?」



 何だよソレっ!?

 フォローになって無ぇよ!

 …格好良い排便って何だよ…。



 …もう、ほっといてくれよ…。



「…ううん、ほっとかないよ。」



 いや、ほっといてくれよ今は!!

 時と場合を選ぶんだよ!そのセリフはよっ!!




 …。



 ヒトミ。


 

 瞳だ。



 オレの嫁さんだ。



 おっとりとした性格と世間では評されているが、夫の俺は知っている。


 コイツこそはガチの天然だ。



 …飽き性の俺が結婚しようとか思えたのも、いつも予測不能な珍事をおこす彼女のおかげだ。



 …まぁ飽きないね。


 一緒にいると何かしら事件が起こって楽しい。 


 

 …。



 …一緒…に?




 じゃあ、なんで俺はこんな所にいるんだ?



 

 コイツと結婚した時、死ぬまで一緒だと誓ったんじゃなかったのか?


 咲が生まれた時、どんなことがあっても俺が二人を守ると決めたんじゃなかったのか?




「そうだ。お前は妻と娘の待つ、元の世界へと帰るんだろう?」




 …誰だ、テメエは。


 …いや、見覚えがあるな。


 なんだっけ…確か…。




「その為には、お前は強くならなければいけない。」




『…ッ!!…ッ!!』




 …ああ、そうだ。


 お前は、俺をこの世界に送った…。




「強く…何者よりも強く…。」




『…ギトッ!!起きろアギトッ!!』




▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △




 …うっせ~よキザッ!!

 

 …何人の寝室に入り込んでんの!?

 …やっぱお前、そっちのケがあんの!?

 …怖っ!!



『…悪い知らせだ、アギト。ノーキンが帰ってきた。』



 …は?


 …何、お前ノーキン嫌いだったっけ?

 まぁ、確かにお前とアイツじゃあ性格は合わなそうだよな…。



『…全身酷い怪我だ。今、治療を行っている。』



 …。


 …は?


 なんだソレ?


 ちょっと待て、理解が追い付かん。



犬人族コボルトの巣が襲撃を受けたらしい。…ノーキンが意識を失う前に言っていた。』



 …え、何言ってんの?


 そりゃ確かに犬人族コボルトはそんなに強くは無いだろうけど、あそこには青年を含むリザードマン達が行ってただろう?



 …そうだ、青年。


 ヒカゲ青年はどうしたんだ?



『…分からん。』



 …あ゛あ゛っ!?

 テメエの所の大将の安否も確認しねぇで逃げ帰ってきやがったのか、あのクソ野郎はっ!?

 

 …どけキザッ!!

 一発ぶん殴ってやらねぇと、俺の気が済まねぇ!!



『…やめろ、アギト。』



 やめねぇよ!!

 さっさとそこをどけっ!!



『…ノーキンは…片目と腕を失いながらも、巣に戻ってきたんだ…。』 



 …。



 …。



 …クソが…!!



 犬人族コボルトの巣へ行くぞ、キザ!!

 何処のクソ共だか知らねぇが、一人残らずぶっ殺してやる!!



『ああ、そのつもりだ。…だが、ノーキンから伝えられた情報が、もう一つある。いいか?』



 何だよ!?

 早くしろよ!!



『…犬人族コボルトの巣に攻めてきた敵は、リザードマンだったらしい。』

転生できなくてもいいから、せめて転職したいわぁ…。

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