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米と塩で天下を獲る ~滅亡寸前の戦国領地を立て直したら、なぜか天下人と呼ばれていました~  作者: 釣鐘銅鑼


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第十六話 戦後の褒美

龍哭平原の戦いから三日後。


黒峰城は勝利の熱気に包まれていた。


朝倉軍三千を撃退。


敵将・朝倉義康を敗走させた大勝利。


領内では祝いの宴が続いている。


城下町も活気に満ちていた。


だが。


「疲れた……」


悠真は客間で倒れていた。


心の底から疲れていた。


戦場。


夜襲。


精鋭部隊。


命のやり取り。


どれも現代日本では経験しないものばかりだった。


精神的疲労が凄まじい。


「若様」


岩倉が笑う。


「大活躍でしたな」


「どこがだ」


「敵の精鋭部隊を止めたではありませんか」


「たまたまだ」


本当にたまたまだった。


旗を立てたのも思いつき。


生き残れたのも運が良かっただけ。


だが周囲はそう思っていない。


『奇策の若君』


『知恵者の領主』


そんな噂が広がっている。


非常に居心地が悪かった。


◇◇◇


その日の昼。


悠真は宗景に呼ばれた。


広間へ入る。


そこには宗景だけでなく義隆や重臣たちもいた。


「来たか」


宗景が笑う。


嫌な予感しかしない。


「何でしょう」


「褒美だ」


宗景は酒を飲みながら言う。


「今回の功績は大きい」


「そんなことは」


「ある」


即答だった。


反論を許さない。


「補給線襲撃」


「伏兵看破」


「本陣防衛」


「どれも戦果だ」


重臣たちも頷く。


悠真としては運が良かっただけなのだが。


「よって」


宗景は笑った。


「褒美を与える」


家臣が箱を持ってくる。


木箱だった。


結構大きい。


嫌な予感が加速する。


「開けろ」


言われるまま蓋を開ける。


中身を見て固まった。


金。


大量の金だった。


「五百両だ」


周囲が頷く。


悠真は目を瞬かせる。


五百両。


大金である。


相良家の財政事情からすれば喉から手が出るほど欲しい。


「いいんですか?」


「よい」


宗景は豪快に笑った。


「むしろ安いくらいだ」


ありがたい。


本当にありがたい。


街道整備。


農地開発。


全部に金がかかる。


百両は非常に大きかった。


「感謝します」


悠真が頭を下げる。


だが。


宗景はまだ笑っていた。


嫌な予感。


終わっていなかった。


「もう一つある」


やっぱり。


「何でしょう」


「人だ」


人?


悠真は首を傾げる。


宗景が手を叩く。


すると広間の障子が開いた。


一人の少女が入ってくる。


年は十七ほど。


黒髪。


凛とした瞳。


腰には短刀。


どこか武士らしい雰囲気を纏っていた。


「紹介しよう」


宗景が言う。


「真壁楓だ」


少女は一礼した。


「真壁楓と申します」


悠真は首を傾げる。


誰だろう。


だが周囲は驚いていた。


義隆ですら目を見開いている。


「父上、本気ですか」


「本気だ」


宗景は笑う。


「相良殿へ付ける」


空気が止まった。


「……はい?」


悠真も止まった。


付ける?


何を?


「楓は優秀だ」


宗景は続ける。


「剣も使える」


「馬も使える」


「読み書きもできる」


「そして」


ニヤリと笑う。


「忍びだ」


沈黙。


悠真は固まった。


楓も無表情。


義隆は吹き出しそうになっている。


「いや」


悠真がようやく口を開く。


「忍びって」


「忍びだ」


宗景が頷く。


「優秀だぞ」


そういう問題ではない。


なぜ急に忍者が増えるのか。


「人手不足だろう」


宗景が言う。


「確かに」


「ならやる」


理屈が雑だった。


だが断れない。


相手は黒峰宗景である。


「楓」


「はい」


「今日から相良殿の家臣だ」


楓は静かに頭を下げた。


「よろしくお願いいたします」


悠真も反射的に頭を下げる。


「よろしく」


何だろう。


流されている気がする。


かなり。


◇◇◇


その夜。


楓は客間の外に立っていた。


護衛として配置されたのである。


「……」


無言。


全く喋らない。


悠真もどう接していいか分からない。


気まずい。


非常に気まずい。


やがて。


楓がぽつりと言った。


「噂通りでした」


「何が?」


「変な殿様です」


悠真は苦笑した。


最近よく言われる。


「そうかもしれない」


楓は少しだけ笑った。


初めて見せた笑顔だった。


「ですが」


夜風が吹く。


「嫌いではありません」


そう言って再び無表情へ戻る。


悠真は思わず笑った。


どうやら。


新しい仲間は思ったより面白そうだった。


そして同じ頃。


敗走した朝倉家では。


「相良悠真……」


朝倉義康が拳を握り締めていた。


敗北の原因ではない。


だが確実に目立った。


黒峰家と同盟した若き領主。


「次は貴様も潰す」


憎悪の火が燃える。


戦は終わった。


だが乱世は続く。


そして相良家には新たな仲間が加わった。


これから始まる更なる激動を前にして。

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